彼はスター
鈴音の目の前で杏を、部屋に招き入れた智樹。鈴音はショックを隠せないままで……!?
その後の、鈴音の恋はどうなるのか!?
先輩の胸の中で泣きじゃくって何分、経っただろう。
私は、ハッと顔を上げた。
また、先輩に甘えてしまった~!私のファーストキッスを奪った相手なのに、胸にすがりついてしまうなんて、もしかして、私って悪女!?
「少しは、落ち着いたか?」
マンションの外に出ると、先輩は私を近くのベンチに座らせた。
辺りはすっかり夕焼けに染まっていた。
「ありがとう」
私は、お礼を言うともう一度、気持ちを落ち着かせた。
「山城、あいつに泣かされてばかりだな……。」
先輩は、私の手を優しく握り締めた。
「……本当は、もしかしたら、両想いなんじゃないかって、想うことが何度かあって……。告白しなくても、智樹からしてくるんじゃないかって、待ってるだけだったのが駄目だったのかな……?」
また、涙が溢れてきてしまう。
「山城……」
「でも、まんがいち付き合うようになったとしても、私も杏ちゃんみたいに、ファ~ンの子にあんなこと、されたかも知れませんよね」
苦笑いして見せたけど、ズキンと胸に奥に突き刺さる。
「もういいよ!何も喋るな」
先輩の指先が、私の髪に優しく触れると、先輩の顔が近づいてきた。
キスされるー。
この間は、突然されて、どうしようかと思ったけど。こんなに想ってくれてる人いない。智樹のことは忘れて、気持ちに答えるべきかな?
一瞬、キスを受け入れようと目を閉じた。
「やっぱり、駄目!」
私は、パッと顔を背けた。
「ごめん……。いつも、突然過ぎるよな」
先輩は、私のおでこに優しくキスをした。
「ごめんなさい……。やっぱり、私。智樹のこと忘れられない。断られてもいいから、告白してみる」
決心すると、微笑んで見せた。
「失恋するようなことがあっても、僕はいつでも待ってるから。だから、泣きたくなったらいつでもおいで」
先輩は、囁くように言った。
先輩の言葉に、キュンとしてしまう。
私は、気持ちがいっぱいになった。
それから、2、3日経ってのことだった。
朝、学校に行く準備をして、トーストをかじりながらテレビを観ていると、杏ちゃんのことで、スクープになっていた。
「今月、中澤杏ちゃんが、成瀬智樹君のファ~ンの子に生卵を投げつけられるいう事件がありました。その後、杏ちゃんは現在、成瀬智樹君が住んでいると思われるマンションに入った目撃情報がありー」
この前のことだ……。
でも、私と先輩が行った時は、報道陣はいなかったのに、すぐにスクープになってしまうなんて怖い……。
「翌朝になって杏ちゃんがマンションから出てくるのが目撃されています」
「……!!」
アナウンサーの朝帰りと言う葉に朝から、心臓がギュッと締め付けられる。
あの後、智樹と杏ちゃんが……!?
私が妄想してたことが、現実になって、血の気が引いた感じになった。
居たたまれなくなって、パチッとテレビを消した。
「行ってきます」
朝食を済ませると、外に出た。
朝から、落ち込むばかりで、何もやる気力がない。
「鈴音、おはよう」
門の外に出ると、智樹が自分の家に入るところだった。
「と、智樹ー。め、珍しいね、家に帰って来るなんて」
私は、しどろもどろに言った。
「しばらく、学校を休んでるし、日数が足りなくなるとやばいから、事務所の社長に相談したら、許可がおりてさ。制服、取りに来たんだ」
「そ、そうなんだ……」
「鈴音も今から、学校だろ?制服、取ってくるから。一緒に行こうぜ。今日は、報道陣いないみたいだから」
「……」
私が返事するのも待たずに、家の中に入って行った。
一緒に行けるのは嬉しいけど、さっきのテレビを観てからじゃ、凄く辛い。どうしようー。
「お待たせ!」
あまり、待たないうちに智樹が家から出て来た。
2人で学校に行くのは、久し振りだ。
「鈴音、どうした?顔色、悪いけど大丈夫か?」
歩きながら、智樹が心配そうに私を見た。
「う、うん……」
今朝のテレビ、見なかったのかな……?
「本当に大丈夫か?」
智樹は立ち止まると、私のおでこに手をやった。
「イヤッー!」
思わず、智樹の手を払いのけてしまった。
「鈴音?」
智樹は、びっくりした顔をしている。
「ね、熱はないし大丈夫だから……」
と、微笑んで見せたけど、杏ちゃんを触った手で、私を触れるのかと思ったら、勝手に手が動いてしまった。
これじゃ、告白だってできるかどうか……。
「おはよう。山城」
学校まで行くと、真部先輩が門の所に立っていた。
「おはようございます」
私が、挨拶をした後、
「今日、先生の都合で部活ないから、清水にも言っておいてくれないかな?」 先輩はにこやかに言った。
「はいー」
「珍しいな。成瀬も一緒なんて」
先輩はチラッと智樹を見た。
「鈴音と一緒に学校に来たら、おかしいですか?」
智樹は喧嘩ごしに、先輩に聞いた。
「ほら、今朝のテレビを観たら、報道陣に囲まれて学校には来れないと思ってたから」
「テレビで……?」
智樹は、キョトンとしている。
やっぱり、まだ観てないんだ……。
「なんだ、観てないのか……。この間のことがー」
「先輩!もう、その話はやめて。どっちみち、わかることだし」
聞いていられなくて、私は慌てて止めた。
「ごめん、山城」
先輩が謝った時、さっそく智樹のファ~ンの子達が、現れた。
「成瀬君!嘘だよね?中澤杏と一夜をともにしたって……」
ファ~ンの子達が、次々と聞いてきた。
やっぱり、その話題から始まるよね……。
「は?誰がそんなこと……」
智樹がキョトンとしている。
「誰って、今朝のテレビでやってたし」
「……それは、朝まで杏の話を聞いてあげてただけで、変なことしてないから」
と、智樹がきっぱりと言ってのけた。
変なことしてない?
智樹の言うことを、信じるべき?
頭の中が混乱してくる。
「大丈夫か?」
先輩が、私の肩をそっと抱いた。
「先輩……。私、智樹のこと信じたほうがいいのかな?」
どうしたらいいのか、わからずにいた。
「テレビや週刊誌は、あることないことだから、本人が言ってるなら、間違いはないとは思うけど……」
じゃあ、智樹の言ってること、信じてみようかな?
そう思っていたのに、放課後にその思いは、砕け散った。
「成瀬君!中澤杏ちゃんは、一夜をともにしたって言ってるけど、本当のところどうなのかな!?」
放課後のことだった。帰るのに若菜と昇降口を出て門の所まで来てみると、智樹が報道陣に囲まれてインタビューされていた。
「ちょっと、鈴音。杏ちゃんは、認めてるみたいね。成瀬君とのことー」
若菜は、声を控えめにして言った。
「彼女、いろいろと悩みがあって。一晩中、話を聞いてあげていただけです」
智樹は、ファ~ンの子達に言ったみたいに、きっぱりと言った。
「杏ちゃんが成瀬君と交際していることで、君のファ~ンの子に卵を投げつけられたことについてはどう思いますか?」
そう、インタビューされた。
「そのことについては、凄く残念です。また、悪質な悪戯があるようだったら、彼女を守らないといけないなと思いました」
「……」
智樹の言葉に、また胸が痛む。
智樹にとって杏ちゃんは守ってあげたい人……。やっぱり、2人は付き合ってるんだ……。
「鈴音。大丈夫?」
若菜が、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「う、うん……」
頷いて見せたけど、心ここにあらずって言う感じだったー。




