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彼はスター  作者: 夢遥
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彼はスター

今回で、4作目の作品になります。

ぜひ、読んでみて下さい!

 ヒラヒラ……。


 桜の花びらが踊るように、舞い降りてくる。

「おめでとうございま~す」

 上級生のお祝いの言葉を浴びながら、桜のトンネルの正門を潜り抜けた。


 私、山城鈴音やましろりんね。元気だけがとりえで、恋にちょっと内気な女の子。今日から、ピカピカの高校1年生になりました。


「おはよ~。鈴音」

 桜の花びらを浴びながら、若菜が後から歩いて来た。


 清水若菜しみずわかな。中学から一緒で私の親友でもある。


「若菜~!おはよ~」

 私は周りも気にせず、思いっきり手をブンブン振った。

「ちょ、ちょっと。鈴音~、恥ずかしいよ。みんな見てる」 若菜は、顔を真っ赤にした。

「ごめんごめん」

 私が、ぺろっと舌を出した時、

「いいね~。元気があって」

 と、言いながら上級生らしき男の子が、私に向かって手に持っていたカメラで写真を撮った。

「な、何ですか!?勝手に人の写真、撮ったりして」

 私はムスッとした。

「ワリイ。君がいい顔してたものだから、つい写真撮りたくなちゃって」

 男の子は、頭をかきながら苦笑いした。


 よく見ると、キリッとした眉が整った顔立ちのハンサムの男の子だった。

「あ!いたいた。しおん~、また写真撮ってる」

 男の子は、いっきに沢山の女の子に囲まれた。

「ねえ、向こうで私たちのことも撮ってよ~」

「オーケー」

 男の子は、女の子に囲まれながら行ってしまった。


「モテモテ……」

 呆気にとられていると、若菜がメモ帳を取り出した。

「あの人は、真部詩音まなべしおん。高2で写真部、女子に人気みたいよ」

 若菜は、どこで調べてくるのか、いつも情報を握っている。

 確かにあの顔立ちじゃ、女子に人気があるのも、わかるような気がする。


「若菜~。クラス見て来よう」

 気を取り直して、私たちはクラス分けが貼ってある昇降口に歩いて行った。

「鈴音、私達。同じクラスだよ!」

 クラス分けの票を見ながら、若菜は嬉しそうに言った。


 見ると、1ーA組に名前が書いてある。


「でも、成瀬君は隣のクラスみたいね」

「……」


 成瀬智樹なるせともき。私の幼なじみで、好きな人でもある。それに、人気モデルで毎月のように雑誌に載っている。

 でも、残念。クラスが違うのか~。


「ところで、その成瀬君は?」

 若菜が、キョロキョロ見渡した。

「智樹は、仕事が入ってて遅刻して来るみたい」

「本当だ。仕事が終わって今、登校して来たらしくて隣のクラスは騒がしかったらしい」

 先生がそう言うと、クラス中が一斉に騒ぎ始めた。


「鈴音、大変だね。ライバルが増えて」

 後ろの席の若菜がニヤニヤしながら言った。

 せっかく同じ学校なのに、話す機会も減りそうだけど、うちが隣だし智樹と話だってできる。それに、みんなの知らないプライベートのことだって知ってるんだから~。


 学校が終わって、廊下に出るとみんな一斉に智樹を取り囲んだ。

 サインをお願いする子や、握手する子。いろいろ聞いてくる子など、みんなそれぞれ。


 とてもじゃないけど、近づけなさそう。


「鈴音~。お待たせ」

 若菜が教室から出てきた。

「成瀬君。凄いね……」

 若菜が圧倒されている。

「中学の時も、凄かったけどね……」

 なんだか、ヤキモチを妬いてしまう。


 私が、ムスッとしていると、智樹はこっちに気づいたのか、人並みをかき分けながら私達の方に歩いて来た。

「清水。久し振り。鈴音、今日はメール、サンキューな」

 智樹は若菜に挨拶してから、私の頭をクシャクシャと撫でた。


 私の胸がキュンと高鳴る。


 ー誰?あの子。

 ーまさか、彼女?

 みんな、一斉に振り向いて私の方を見ている。


「事務所の都合で、午後は仕事休みなんだ。鈴音、一緒に帰ろうぜ」

「う、うん。一緒に帰りたいんだけど……」 

 みんなの視線が気になって、なかなか一緒に帰りたいなんて言えない。


「わ、私。若菜と帰る約束してるから。行こう、若菜」

 若菜を促すとさっさと歩き始めた。

「ちょっと、鈴音。一緒に帰れるチャンスだったのに本当にいいの?」

「だって、女子に目の敵にされそうで……」

 私は身震いをする。

「あはは!確かに」

「も~。笑い事じゃないってば」

 私は頬を膨らませた。


 私達がいなくなった後、智樹がみんなにどう言っているかが気になるけど。



 夜、夕ご飯の後、自分の部屋でくつろいでいると、

「鈴音~」

 いきなり、智樹が部屋に入って来た。

「ちょ、ちょっと。智樹!ノックもしないで入って来ないでって、いつも言ってるでしょ」


 着替えをしているところだったら、どうするのよ~!


「ごめん」

 智樹は両手を合わせた。

「それで、どうしなの?」

「今日の帰り、鈴音の様子が変だったから」

「……」


 気にしてくれてたんだ……。

 みんなの視線が怖かったなんて、ファ~ンを大切にしている智樹には、とても言えない。


「あ、ほら。智樹が私と帰ると、みんな寂しがるじゃない」

 私は、とっさに嘘をついた。

「ま、ファ~ンは大切にしないとな」

「そうだよ~!」 

 私は、智樹の背中をバンバン叩いた。

「イタタ……。鈴音、叩きすぎ」

 智樹が私の腕を掴むと、顔を覗き込んだ。


 ドキン!! 


 私の心臓が高鳴る。


 もともとキリッと整った顔立ちだったのに、芸能界に入ってからは、ますます、磨きがかかったみたいでかっこ良くなったみたい。


「ご、ごめん。痛かったよね……」

 慌てて智樹から手を離した。

「おっと。俺、そろそろ帰るわ」

「もう?」

 私は寂しそうに智樹を見た。

「仕事は午後からなんだけど、朝、打ち合わせがあるから、明日の朝、早いんだ」

「大変だね……」

「好きでやってる仕事だから仕方ないさ。鈴音も、早く寝ろよ~。おやすみ」

 智樹は軽く手を上げると、部屋から出て行った。


 もっと、話していたかったのに……。


 私は、切なさそうに溜め息をついた。 


 翌朝、珍しく寝坊して慌てて学校に行くと、クラスの子達が一斉に私を取り囲んだ。


「ねえねえ、山城さん。成瀬君と幼なじみって本当?」

 谷口さんが、私に聞いてきた。

「本当だけど……。どうして、知ってるの?」

「昨日、成瀬君が、山城さんが幼なじみだって言ってたのを聞いてた子がいたみたい。いいなあ~。」

 谷口さんを始め、他の子達も羨ましそうな顔をしている。

「……」

 智樹、私のことまで話しちゃったんだ……。ま、あっちから声かけてくれば、周りの子は気になって聞きたくなるだろうけど。


「鈴音~」

 と、智樹が教室に顔を出した。


 智樹のことで大騒ぎしている最中に、本人が現れたものだから、余計に大パニック。


「智樹、どうしたの?」

 みんなの目を気にしながら、智樹を見た。

「英語の教科書貸してくれないかな?忘れちゃってさ~」

「ちょっと待って。今、持って来る」

 私がそう言うと、周りの子が、

「成瀬君!教科書忘れたなら、私が貸してあげる!」

 次々と女の子達が、智樹に英語の教科書を差し出した。

「いや~。気持ちだけで」

 智樹は、さっさと私から教科書を受け取ると自分のクラスに戻って行った。

「鈴音。成瀬君が教室来るたび、ヒヤヒヤものだね~」

 若菜が、ニヤニヤしながら私の所にやって来た。

「あはは……」

 私は、思わず苦笑い。


 智樹に触る子もいたりして、そのたびに心臓がドキン。


「鈴音。早く告白しないと、誰かに取られちゃうよ」

「……」


 わかってるけど、智樹は人気モデルだし。なかなか告白する勇気が出ない。



 朝のホームルームが終わると、1時間目から移動教室だったことをすっかり忘れていた。

「鈴音、早く!」

 若菜にせかされながら、急いで次の教室に向かった。


 ドン!!


 慌てていたものだから、途中で誰かにぶつかって尻餅をついてしまった。


「イタタ……」

 私は、お尻をさすりながら立ち上がろうとした。

「大丈夫か?」

 ぶつかった男の子が、私に手を差し伸べた。

「ごめんなさい!急いでたものだから」

 私は、男の子の手をとって立ち上がると、男の子の顔を見上げた。

「あ!」

 入学式の日に出逢った、真部詩音先輩だった。

「なんだ君か~。ごめん、怪我ない?」

「は、はい……」

 返事をしたけど、足元を見ると先輩のノートやファイルとかが、散らばっていた。


「大変!拾わないと」

 私が、慌てて拾っていると、沢山の写真が落ちているのに気がついた。

「わあ~。これ、先輩が撮ったんですか?」

 桜の花だったり、風景、動物や人物など色々な写真が写っていて、表情が豊かだったり、心が温まる写真ばかりだ。その中に、私の写真もあった。

「あ!これ、入学式の時の……」

 桜の木の下で、私が元気よく手を振っていてにる。


 中でも、雲の写真が凄く綺麗に写っていて心表れる感じだ。

「その2枚、あげるよ」

 先輩が優しく言った。

「え!でも……」

 私が迷っていると、横にいた若菜が、

「貰らっちゃったら?」

 写真を覗きながら言った。

「うん……。でも、こんなに心がこもった写真、私が貰っていいのかな?」

 私が持っているより、コンクールとかに応募したほうが、いいんじゃないかな~。絶対に金賞だよ。


「気にしないで、いいから。どうぞ」

 先輩は、2枚の写真を私の手に持たせた。

「あ、じゃあ。写真代、あとで……」

「あはは!意外と律義なんだね。ただであげる」

「でも、こんなにいい写真。プロみたい……。ただでなんて貰えない」

「ありがとう。実は言うと、カメラマン志望なんだ。でも、そんなに気になるなら、ただで写真をあげる代わりに写真部に入ってくれないかな?」

 突然のことに私はビックリ。

「写真撮るの嫌いかな?」

「嫌いじゃないけど……」

「1人、辞めちゃってさ。今度、グループで出すコンクールがあるんだけど、人数が足りないんだ」

 先輩は、困った顔をした。

「……そう言うことなら」

 私は、少し考えてから返事をした。

「よかった~。じゃあ。放課後、入部届け書かないといけないから、部室に来てくれないかな?」

 先輩はほっとさせながら、言った。

「わかりました」

「部室は、第2会議室だから。じゃあ!よろしく~」

 それだけ言うと、先輩はさっさと行ってしまった。

「ちょっと、鈴音。よかったの?入部に決めちゃって」

「仕方ないよ。若菜も一緒に入らない?」

 若菜にそれとなく聞いてみた。

「入ってもいいけど、確か写真部って言うと……」

「……?」

 若菜が何を言おうとしているのかわからず、首を傾げたけど、放課後、部室に行くと、若菜が何を言おうとしていたかが判明した。


「2人とも入部してくれるんだ~。じゃあ、この紙に名前を書いて」

 約束通り部室に行くと、嬉しそうに入部届けの用紙を私と若菜に差し出した。


「山城鈴音ちゃんと清水若菜ちゃんか~。2人とも可愛い名前だね。山城さんの方は、音がつくんだ?僕の名前と同じだね。部長の真部詩音。よろしく~」 

 先輩は、嬉しそうに自己紹介をすると、写真部の人の自己紹介が始まった。

 ざっと、10人位はいるけど、ほとんどが女子で男子は先輩も混ぜて3人くらいしかいない。


「ねえ、山城さんと清水さん。あなたちも、詩音狙い?」

 2、3人の先輩が私達の近くに寄って来ると、その中の知佳ともか先輩が、声をかけてきた。

「え……?」

 私は、キョトンとさせた。

『鈴音、ここにいるほとんどの人が、真部先輩目当て』

 コソコソと、若菜が言った。


 だから、女子がこんなにいるんだ~。


「私、写真撮るのが好きで入部しただけで……」 先輩に言われたから、入部したなんて、とても言える雰囲気じゃなさそうだ。


 その時、隣にいた先輩が知佳先輩に何か言った。


「成瀬智樹の幼なじみて、あなただったんだ~?」

 知佳先輩に、見つめられて、何を言われるのかドキドキしていたら、


「私、成瀬智樹のファ~ンなの!サイン貰ってきて来てくれないかな?」

 と、言った。

「え?いいですけど……」

「本当?じゃあ、よろしくね~。あと、詩音目当てで入部したんじゃないならいいの。忘れて~」

 知佳先輩達は嬉しそうに、私達から離れて行った。


「……」

「よかったね~、成瀬君のお陰で目をつけられなくて。真部先輩と仲良くしてると、嫌がらせされるって噂だから」

 若菜はホッとさせた。

「そうなんだ。真部先輩、もてそうだもんね」

 納得しながら、チラッと真部先輩を見た。


「鈴音、活動するのは明日からでいいって、真部先輩が言ってたし。もう帰らない?」

 若菜が言うので、真部先輩に挨拶して帰ろうと廊下に出たら、

「山城、ちょっと待って」

 真部先輩が、後から来て私を呼び止めた。

「これ、忘れ物」

 真部先輩が写真を差し出した。

 貰うことになっていた2枚の写真だ。

 それに、額にまで入れてある。


「え……。額までつけて貰っていいんですか?」「僕の写真、感想言ってくれたの山城だけだから、額はプレゼント」

「やだな~。大げさ」

 私は苦笑い。

「みんな、綺麗とか言うけど、真剣に感想は言ってくれないし」

「じゃあ、貰っちゃおうかな。先輩、ありがとう~」

 私は、額ごと受け取ると袋の中に入れた。

「それと、コンクールのことだけど、季節が春って言うこともあって、自然を撮るテーマになってるんだ。何を撮るか考えてきてくれるかな?」


 春の自然ねぇ~。いっぱいありそうだけど、どんなのがいいのかな? 


「もし、わからないことがあったら、僕に言って。メアド交換できる?」

 先輩が、携帯を取り出した。

「あ、はい」

 私は、慌てて鞄から携帯を取り出したけど、

「先輩~。私とメアド交換して下さい。あとで、鈴音にも送るので」

 若菜が、横から口を出してきた。


「いいけど」

 先輩と若菜がメアド交換をした。

「ありがとうございます!じゃあ、また明日!」

 若菜が私の腕を掴むと、急いで廊下を歩いて行く。

「どうしたの?若菜」

「さっき、見られてたの。知佳先輩達じゃなくて違う先輩が私達のこと見てた」

「見られてたっていいじゃない。真部先輩目当てじゃないってわかったはずたけど?」

 キョトンとしながら、若菜を見た。

「あのね~。それは、知佳先輩達の話でしょ?それに、他の先輩は鈴音のこと疑いの目で見てたの気づかなかった?それに、成瀬君とだって幼なじみで仲がいいのに、真部先輩ともメアド交換してたなんてわかったら、何されるかわからないかも」

「……」


 だから、私の代わりに若菜がメアド交換したのか……。


「とりあえず、先輩のメアド送っておくけど」

 若菜が、赤外通信で私の携帯に送信する。

「ありがとう!でも、若菜の方は大丈夫?」

「私のことは、気にしなくても大丈夫だよ~。鈴音に誘われて一緒に入部しただけだし。それに、先輩のことかっこいいとは思うけど、他校に彼氏いるの鈴音、知ってるでしょ?」

 若菜は、少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 2、3度、会ったことがあるけど。確か、1つ上でサッカーをやっていてスポーツマン的なかっこいい人だった。


「鈴音も、成瀬君の彼女になったら、ダブルデートしようね~。でも、成瀬君は芸能人だから、普通に歩いてたらまずいか~」

 若菜が楽しそうに想像するのはいいけど、智樹が私のことどう思っているかな?


 ピロロ~。


 夜、机に向かって宿題をしていたら、携帯のメールが鳴ったので、携帯を見てみる。


 ー突然、ごめん。清水から山城のメアド教えてもらった。僕のメアド送ってもらったかな?

 メールは真部先輩からだった。

 若菜から、メアドを送ってもらったことをメールしてみると、すぐに返事が来た。


 ー今日も話たけど、部活のことで何かわからないことがあったら、いつでもメールして。


 ーありがとうございます!さっそくですけど、自然がテーマて、どんなのがいいのかな?山とか?


 ー山もいいけど、この辺じゃなかなか撮れないと思うから、身近な物にしてみたら?春だから例えば、つくしとかタンポポとか……。


 つくしとかタンポポか~。それ、いいかも!


 ーありがとうございます!さっそく、明日にでも撮ってみます!お休みなさい。


 最後に、ニコニコ顔の絵文字を入れて送信した。




 次の日、学校に行くと、クラス中が賑やかな雰囲気に包まれていた。

「おはよ~、若菜。みんなどうしたの?」

「おはよ~、鈴音。どうしたのって、原因はこれだよ」

 私の前に雑誌を見せた。


 今、人気絶好調の雑誌、ナチュラルだ。確か、よくここに智樹が載ってるんだよね~。

 あ!いたいた。表紙にでかでかと載っているじゃない~。


 中を捲ると、春のコーデ特集で智樹がすました顔で載っていた。

「学校内に有名人がいるだけで、みんな大騒ぎよ~」

「だから、みんな騒いでるのか~」

 納得すると、頷いた。

「成瀬君のクラスも、大騒ぎじゃないのかな?今頃、成瀬君。みんなに囲まれてるかもよ~」

「智樹なら、今日は仕事で休みみたい……」


 今朝、早く学校休むって、メールが入っていた。

 昨日も夜遅くまで仕事みたいだったし。今日も朝早く出かけて行ったみたいだし、忙しいのもいいけど、身体は大丈夫なのかな~。


「それより、鈴音。部活で今日から、コンクールに出す写真を撮るんだよね?何撮るか決まった?」

「うん……。なんとなく」


 真部先輩にメールをもらってから、考えて花を撮ることに決めた。


「もう決まったの~?私はどうしようかな~。放課後までに決めなくちゃ」

 若菜は、溜め息をついた。




 放課後、デジカメを持って、外に出ると花を探した。

 学校内には、桜はもちろん、チューリップや水仙なんかも咲いている。


 何がいいかな~。


 周りの人に目をやると、空や虫を撮ったりしている。


「鈴音~。何撮る?」

 横にいた若菜が、聞いてきた。

「私、花でも撮ろうかな~?」

「鈴音は花か~。じゃあ、私は向こうにある木を撮ってくるね!」

 若菜は、急いで走って行ってしまった。


「私も撮ろ~」

 まずは水仙から撮りに行く。

 どこからのアングルがいいのかな~?


 いろんな場所から、撮ってみるけどいまいちピンとこない。

 私が悩んでいると、

「山城は、水仙撮ってるの~?」

 真部先輩が、後ろからカメラの画面を覗き込んだ。


「あ!先輩~。どこから撮ったらいいのか今、悩み中で……」

 私が撮った写真を画面で見ると、真部先輩は少し考えた後、一本の水仙の横に立った。

「ここから撮ってみたらどうかな~?」


 なるほど~。私は水仙、全体を撮ってたけど、それなら、少しは様になるかな?


 一本の水仙の前に立つと、ピントを合わせてパチッ。


 撮った写真を画面で見てみる。

 ん~。いまいち、しっくりこないな~。

もしかして、私の撮り方が下手!?


「ここのピントを合わせると、結構いい写真になると思うよ」

 そう言って、真部先輩が私の後ろから、一緒にカメラを持つと後ろから抱きしめられたような状態になった。

「……!」


 ドキドキ……。


 急に心臓の鼓動が速くなる。


 キャッ~!ち、近い!


「ここの角度でズームにすると花の表情も変わるから、やってみて」

 と、真部先輩は、説明した。

「……」

 私は、ドキドキしながら頷いた。

「あ!ごめん」

 先輩は、くっつきすぎていることに気づいたのか私から慌てて離れた。

「あの……。先輩に教えてもらった通り、撮ってみるので、もう大丈夫です」

 私は恥ずかしそうに俯いた。

「わかった……。じゃあ、僕は向こうの方で撮ってるから、何か困ったことがあったら、先生か僕を呼んで」

 そう言うと、真部先輩は昇降口の方に言ってしまった。


「ちょっと、山城さん!詩音に近づかないでくれる?」

 真部先輩がいなくなると、写真部の先輩4、5人私に言い寄ってきた。

「べ、別に……、私から近づいたわけじゃ……。それに、親切に写真の撮り方を教えてくれただけだし」

「私達には、あなたが詩音に近づきたくて、わざと知らないふりをして教えてもらってるようにしか見えなかったけど」

 先輩達は、上から見下ろす視線で私を見た。


 はあ!?どうしたらそんなふうに見えるの?あなた達とは違うんだから!

 そりゃあ、写真を貰う代わりに入部したけど、先輩の写真が好きになったから、私もそんな写真を撮りたいと思って入部を決めたのに。


「とにかく今度、詩音に近づいたら退部してもらうから!」

 先輩達が、そう言った時だった。

「誰に退部してもらうって?」

 いつの間にか、真部先輩が横に立っていた。

「詩音~。だって、この子が詩音に近づくから」


 近づいたのは先輩だってば!

「山城じゃない。僕から近づいたんだけど?何かご不満でも?」

 真部先輩は、すました顔で先輩達を見た。

「べ、別に。不満って言うか、詩音に変なん虫がつかないように私達で追い払ってただけだし」

 先輩は、ジロッと私を睨んだ。


 変なんな虫って、私のこと!?


「山城は変なん虫じゃないから。君たちと違って、僕の写真を気に入って、写真部に入ってくれたんだ。いじめたりしたら、君達に退部してもらうから」

 真部先輩は、キッパリ言ってのけた。



 みんなが先輩目当てで入部しているって、気づいてたのか~。


「……!!どうして、この子をかばうの?まさか、好きなんじゃ?」

「……好きだよ」

 真部先輩が一言、言うと先輩達は悔しそうにその場から去っていった。


 私は肩の力が抜けてへなへなと、その場に座り込んでしまった。 

「僕のせいで、ごめん。大丈夫?」

 真部先輩が、私の顔を覗き込んだ。

「……あの~、さっきのこと本当ですか?」

 私のことが好きと言う言葉が気になって、聞いてみた。

「さっきのことって?」

「私のこと好きって……」

「そのことだったら、本当だよ。入学式に君を見た時から、ずっと気になってた。ま、一目惚れかな」

 真部先輩は、少し恥ずかしそうに微笑んだ。

「……ごめんなさい!私、好きな人がいます」

「それって、成瀬智樹?幼なじみなんだよね?」

「え!どうしてわかるんですか?」

 私はびっくりした顔で、真部先輩を見た。

「この前、2人でいる所を見かけて、山城の顔が恋してる顔だったから」

「……!!」


 見られてたのか~。恥ずかしい。


「で?成瀬には、告白したのか?」

「ま、まだ……。なかなか勇気がでなくて」

「相手は芸能人だもんな~。勇気がいるよな。僕も、本当は言おうか迷ってたんだ。でも、状況が状況だったものだから、つい告白しちゃったけど、僕が勝手に好きになっただけだから、山城は気にしなくていいから……」

「……」


 先輩はそう言ったけど、気になってしまう。どうしたら、いいのよ……。

 でも、真部先輩がビシッと言ってくれたせいか、それ以来あの先輩達が文句を言いにくることはなくなったけど、真部先輩に告白されて以来、話すだけでドキドキしてしまう毎日。


「これなんか、いいんじゃないかな?」

 コンクールの写真を撮り始めてから、6日目。応募締め切りが明日に迫っていた。


 真部先輩が、私の撮った写真の中から一枚を抜き出して私に見せた。


 水仙やチューリップ、タンポポを撮ったりしたけど、真部先輩は始めに撮った水仙が良かったみたいだ。


「本当だ~。いいじゃない!」

 横から、若菜も写真を覗き込んだ。

「ん~。でも、先輩が撮ったのとは、比べものにならないよ……」

 真部先輩が撮った写真を見る。



 先輩の撮ったのって、ちょっと変わってるだよね~。自然で働くアリと言うことで、アリとキリギリスじゃないけど、せっせと働くアリの姿が凄くリアルに撮られている。



「仕方ないよ。花と虫じゃ、見方も変わるんじゃないの?」

 若菜が励ましてくれたけど、何かしっくりこない。

「生きてるってことは、花も虫も同じだけど、最初にしては上出来だぜ」

 真部先輩が、私の肩にポンと手を置いた。


 私は思わずドキッ。

 あ~。やっぱ、意識しちゃうよ~。


「時間もないし。じゃあ、これにしようかな?」

 私は、俯きながら写真を先輩に渡した。

「私はこれ!」

 若菜は、桜の写真を先輩に渡す。


 他の人達も、次々と真部先輩に写真を渡した。


「今日は、これで終わりな~。みんなお疲れ様~」

 先輩は写真を袋に入れると、先生の所に持って行った。

「帰ろ~。鈴音」

 若菜は、私を促した。


「そう言えば、成瀬君どうしてる?最近、学校で見かけないんだけど」

「智樹なら、また仕事が忙しくなったみたいで、学校も休んでるみたい」


 メールしても、前より仕事が忙しいから、しばらく学校を休むしか返ってこない。もう、一週間近くは顔も見ていない。


 どうして、前より仕事が忙しくなったのか、翌朝、わかることになるんだけど……。



「おはよー!鈴音。朝、スクバン観た~?」

 私が教室に入るなり、若菜が待っていたかのように私の所にやって来た。


 スクバンって言うのは、主に、芸能のスクーを中心にやっている番組のこと。


「観てないけど、どうかした?」

「成瀬君が、初ドラマ初主演が決まったって」

「え……!」

 全然、聞いてない。

 周りを見ると、智樹のドラマ主演のことで持ちきり。


「キャ~!智樹よ」

 急に、廊下にいた子が叫んだ。

「どこどこ!?」

 クラスの子達も一斉に廊下に出る。


 智樹が周りの子達に笑顔を振りまきながら、廊下を歩いて来るのが見えた。


 久し振りの智樹の姿に、胸がキュ~ンとしてしまう。


「おはよ~。鈴音、清水」

 智樹が私達の前で立ち止まる。

「おはよう、智樹」

「おはよ~。成瀬君。久し振り~。初ドラ、おめでとう~」

 若菜がさりげなく、お祝いの言葉を言うと、

「ドラマ観るね~!」

 と、周りの子も言い出した。


「智樹、どうして教えてくれなかったの?」

 少し、不満そうな顔をさせた。

「ごめん。なかなかメールできなくて。あ、もう時間だ。また後でな」

 智樹が教室に行こうとしたので、私は引き止めた。

「ちょっと、待って!先輩が智樹のサイン欲しいんだって。ここに書いといて」

 知佳先輩に頼まれた色紙を、袋に入れたままさっと智樹に渡す。

「わかった。書いとくけど、俺、3時間目までしかいられないし、夜まで仕事だから、帰る前に持ってくるから」

 智樹は自分の教室に行ってしまった。

「鈴音も、大変だね~」 私の横で、若菜が苦笑いをしている。

「そうだ!知佳先輩に頼まれた、サイン貰わないと、今度は何されるかわからないし」

「言えてる~」

 若菜は、小さく頷いた。 



 3時間目が終わると、約束通り智樹が色紙を届けに来た。

 智樹が来るなり、またクラス中が大騒ぎ。


「智樹、場所変えよう」

 学校の裏庭に移動する。

「はい。頼まれてたやつ」

「ありがとう……」

 私は、智樹から色紙を受けとった。

「智樹……。ドラマの撮影、いつから始まるの?」

「昨日から本格的に始まったんだ。モデルの仕事も掛け持ちだから、また明日から、しばらく学校にこれないんだ」

「そう……」

 私は寂しそうに言ったものだから、

「まだ、日にちはわからないんだけど、学校の近くの公園でも撮影するんだ。鈴音も、見においで」

 と、私の頭をクシャクシャとした。


 学校の近くでも、撮影するんだ~。見に行っちゃおうかな。

「あ!もうマネージャーが迎えに来る時間だ。じゃあな、鈴音」

 智樹はいそいそと行ってしまった。




「知佳先輩。これどうぞ」

 放課後、部室に行くとさっそく渡した。

「あら、ありがとう~。サイン貰って来てくれたのね!」

 知佳先輩は、上機嫌で、私から離れて行った。


 私は、一息ついた。

「お疲れ~」

 真部先輩が、私の状況を知ったのか優しく声をかけてくれた。

「見てたんですか~?」

「うん。サイン貰えてよかったね」

「あはは……。智樹、忙しくて。やっとサイン貰えて……」

 私は、苦笑いをした。

「そりゃあ、大変だ~。ところで、清水は?」

「若菜なら今日、日直だから後から来ます」

「じゃあ、先に始めようか!新聞部で先生方の紹介をやります。それで、写真を頼まれたので、みんなよろしくお願いします」

 と、みんなに次の活動の報告をした。


 私と若菜で、担任の新井先生と智樹のクラスの岡田先生の写真を撮ることになった。

 若菜が来るなり、さっそく新井先生と岡田先生の写真を撮りに行く。

 岡田先生は美人の女の先生で、男子に人気がある。


「新井先生~。先生の写真、1枚撮りたいんですけどいいですか~?」

 職員室に行くと、呑気そうにお茶を飲んでいる新井先生に声をかけた。

「山城と清水か~。さっき新聞部の奴も来て、あとで写真を撮りに来るって言ってたけど、お前らか~」

「私達じゃ、不満ですか?」

 若菜が、ムスッとしながら先生を見た。


「いや~。そう言うわけじゃ~。おっと、時間が!さっさと撮ろう」

 時間でごまかされた感じがするけど、気をとりなおして先生の写真を撮ることにした。


 写真を2、3枚撮った後、次は岡田先生の所に行こうとしたけど見当たらない。

「新井先生。岡田先生は?」

 私は辺りを見回した。

「岡田先生なら、今日の午後から明日まで出張だぞ。」

 新井先生は、またお茶を飲み干した。


 私達は、新井先生にお礼を言うと、職員室を出た。


 仕方ないから岡田先生は、明後日撮ることにした。




 明後日の放課後、部活に行こうとしたら、若菜が急いで私の所に来ると、

「ごめん、鈴音!部活行けなくなった」

 両手を合わせて謝った。 

「え……!だって、今日は岡田先生の写真を撮りに行かないと」

「今日、彼氏が誕生日だったの、すっかり忘れてて。プレゼント買いに行かないといけないの」

 必死に言う、若菜に負けて私は、

「わかった。彼氏と楽しんできて」

 と、言ってしまった。

「ありがとう~。若菜!」


 結局、私独り撮りに行くのか……。


 部室に寄ってから、岡田先生の所に行くことに。

 他の先輩達も、まだ撮っていない先生の写真を撮りに行ったりしていて、部室の中はガランとしていた。


「山城。先生の写真、撮れた?」

 真部先輩が、ひょっこりと現れた。

「まだ、岡田先生の写真が……。先輩は、もう撮り終わったんですか?」

「あと、もう少し……。あれ?今日も清水、日直?」 

 若菜がいないことに気づいたのか聞いてきた。

「今日、若菜は用があって……」

「それじゃぁ、一緒に撮りに行こうか?僕もまだ、撮っていない先生がいるから」

 と、言うことで先輩と一緒に行くことになった。



「岡田先生、写真撮らせてくださ~い」

 職員室に行くと、さっそく写真を撮らせてもらう。

「先生、いきますよ~」

 先輩も声をかけてくれて、意外と早く終わった。


 カメラの画面を覗くと、岡田先生の顔が、いい表情に撮れていて、昨日、撮った写真なんか比べ物にもならない。


「うわ~。やっぱり先輩に、アドレスしてもらと違う!」

 思わず、声を上げた。

「サンキュー。山城に褒められると、何だか自信がつくな~」

 先輩は、少しはにかんだように微笑みながら、私の顔を覗き込む。


 ドキン……!

 私の心臓が波打つ。


 や、やだ……。智樹のことが好きなのに、どうして先輩のこと意識しちゃうんだろう……。


 部活が終わると、久し振りに独りで帰ることに。


 いつも、若菜が一緒だったから、少し寂しいな~。


「山城~」

 正門を出てすぐに、後から真部先輩も出て来た。

「あ!先輩。お疲れ様でした~」

「お疲れ様~。山城も帰り道こっち?」

「はい。先輩も?」

「うん。じゃあ、途中まで送ってくよ」

 先輩が、優しく微笑んだ。


 そして、先輩と一緒に帰ることに。


 2人っきりで帰ったなんて、先輩の親衛隊に知られたら後が怖そう~。

 でも、同じ方向なんだから仕方ないよね……?


 そんなことを考えていると、

「山城、おとなしいけど。どうしたの、具合でも悪い?」

 先輩は心配そうに私を見た。

「え?そんなことないですよ~!」

 私は歩きながら、元気よく

ガッツポーズして見せた。

「それならいいんだけど~」

 先輩がホッとさせた。


 公園の前を通りかけた時、沢山の人の群れができているのに気がついた。


「何かあったのかな?」

 先輩は興味津々で、人と人との隙間から覗き込んだ。


 どうやら、ドラマの撮影をやっているみたいだ。


 そう言えば学校の近くの公園で、ドラマの撮影をやるって智樹が言っていたけど、今日だったのか~。

 少し智樹の顔見ていきたいな……。


「成瀬が出演するドラマの撮影みたいだね。少し見てこうか?」

 と、先輩が、気を使ってくれた。


 私も隙間から覗いて見た。


 いたいた~!

 真剣な顔で智樹が立っていた。前には、女の子の中で人気モデルの中澤杏ちゃんが立っている。


 雑誌で読んだけど、杏ちゃんも抜擢されて初出演で確か、智樹の恋人役なんだよね。

 ドラマのタイトルはハッピーラブ。


「でも……、この間、拓巳が千紗とデートしているところ見たの……」

 杏ちゃんが真剣な顔で、智樹を見つめた。

「あれは、千紗ちゃんが美奈も一緒だって言うから……」

 どうやら、美奈は千紗の友達らしい。

「言い訳なんてたくさん!」

「千紗!」

 いきなり、智樹が杏ちゃんを抱き締めた。


 ……!!


 撮影だってわかってるのに、胸の奥がチクンと痛む。


「カーット!はい、O・K~」

 合図がかかると、スタッフの緊張感が一気にほぐれた。


「いったん、休憩に入りま~す!」

 スタッフさんが声をかけた。


 休憩時間なら、少し智樹と話せるかな~?


 見ると運がいいことに、智樹が独りで次のセリフを台本で確認していた。

「智……」

 私は、急いで智樹の近くまで行くと声をかけようとした時、

「智樹君~!」

 杏ちゃんが走って来た。

「一緒に次のセリフの練習しましょう!次のセリフ、あまり自信がなくて~」 甘えるように杏ちゃんが、智樹の腕に自分の腕を絡ませた。「あはは~!よく言うよ~。自信がないわりには、俺より杏の方が堂々としてると思うけど」

 智樹は笑いながら、杏ちゃんのおで小突いた。


「……!!」

 さっきより、私の胸の奥が締めつけられた。

2人を見ていると恋人同士みたい。それに、もう名前で読んでるし……。


 近寄りがたくて、すぐにその場から立ち去った。


「山城!」

 真部先輩が、私の様子に気がついたのか、後を追って来た。

「先輩……、ごめんなさい。せっかく、見て行こうって言ってくれたのに……」

 私はしょんぼりとしながら謝った。

「そんなことはいいんだけどさ……。山城は、大丈夫か?」

 真部先輩は、心配そうに言ってくれた。

「……先輩。私、どうしよう……。智樹が、だんだん遠くなって行くような気がして怖い……」

 私の知っている智樹じゃないみたいだった。

 次第に、涙が溢れてきた。


 さっきの智樹と杏ちゃんみたいに、急に先輩が私を引き寄せた。


「……!!」

「……僕がそばにいるから。山城にそんな顔させない!ダメかな?」

 私を抱き締めながら、先輩は真剣に言った。

「ありがとう、先輩……。気持ちは嬉しいけど……」

 なかなか言葉が出てこない。

「ごめん。困らせるつもりはないんだ……。でも、泣きたくなったら、いつでも僕の胸、貸すから」

 キザっぽく言うと、また先輩は、ギュッと私を抱き締めた。


 智樹が見てるとも知らずに、私はただ黙って先輩の胸の中で泣きじゃくっていた。

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