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レイト・デイズ  作者: 有栖
第二章『七不思議』
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第八話『保健室の幽霊』

「なんか、ずいぶんフレンドリーな花子さんだったね…。」

「普通の奴だったなあ…。」


ある種、衝撃的な花子さん。もといアリアさんとの出会いを思い返しつつ、白羽と怜斗は歩いていた。

「次は『保健室の幽霊』?」

「そうだな。じゃあ内容を教えてくれ!」

「うん、えっとね――」


***


ある日、1人の女子生徒が保健室を訪れる。

少女は、少し熱っぽく怠い体を引きずり、保健の先生を探す。だが、中に先生はいなかった。少女は、仕方なく先生が戻ってくるまで寝ようと考え、ベットに横たわる。

朦朧とするのに任せて何分か寝ていると、ふと人の気配がして少女は意識をそちらに向ける。

ドアが開いたような音はなかった。


「…ぶ…か?」


何か、声が聞こえる。


「…い…す…?」


細々とした声で、半分眠っている少女はよく聞き取れなかった。


「誰…?」


不思議に思った少女は、淡い意識の中、その声に問いかける。

すると、シャアッと、心地好い音を鳴らしながら、カーテンがひとりでに開いた。


「っ!?」


少女は、怖くなり反対側を向く。


「キャアッ!!」


その少女の目に青白い顔の少女が映る。

そこで、彼女の意識はプツッと途絶えた。


***


「ずいぶん曖昧に終わったな。」

「そうだね…。まあ、とりあえず行ってみようよ。また話をすればいいよ!」


白羽も、アリアとの出会いで余裕が出来たのか、割と乗り気になっている。現金な奴だ。そして、ふたりは保健室の前へ。


「さて、入ろっか。」

「おう。」


二人は保健室の扉を開けて中へ、


――入れなかった。


「開かないな。」

「あ…。もう先生いないのかあ…。どうしよ…。」「うーし、ちょっと待ってろ。」


そう言った怜斗が、スルリと壁をすり抜ける。

と、扉からカチッという音が鳴った。


「開けたぞー。」

「うわあ、さすが霊。チートくさ……。ううん、ありがとう。」

「何言いかけたお前っ!」


白羽は咳払いをして気を取り直し、ガラッと扉を開き、保健室の中に侵入する。


「あれ?」


白羽は、ベットに誰かが寝ているのを見つけた。


「先生いないし鍵閉まってたのに…。誰だろ?」

「あれが『保健室の幽霊』かもしれないぜ?」


白羽は、ベットで寝ている女の子の顔を、そっと覗き込む。


「っ!?なにこの娘!?カワイイっ!!」


長い黒髪をツインテールでまとめており、眠っているその顔にはまだあどけなさが残っているが、それがまるで人形のような可愛らしさを演出している。


「うわあ…。すごいギューってしたいっ!!ちょっとギューってしていいかなあ??」

「いや、多分触れんぞ?」

「ええっ!?見えるのにっ!!私のこの溢れんばかりの愛をどうすればいいの…?」

「知らんわっ!!」


そんなやり取りがうるさかったのか、寝ている少女が目を開ける。


「ん…。誰…ですか…?」


眠気の残るかわいらしい声での問いかけが、さらに白羽の中のなにかを刺激する。


「あーーーっ!!もうダメッ!!カワイイーッ!!」


白羽が、ベット上でまだ状況のつかめていない少女に向かってダイブする。が、スルリとすり抜けてベットにボフッと着地してしまう。


「やっぱり触れないっ!?私、どうすればいいのっ!!」


ギラギラした目で白羽が少女を見つめると、少女はビクッとして凄まじい速度で部屋の隅に移動し、体を丸めて手の隙間から白羽を見つつブルブルと震える。


「いやぁん!!何あの生き物っ!!カワイイッカワイイッ!!」

「私…もう、死んでるから…生き物じゃない…です…。死に物、です。触れない…ですよ。」


少女が震えながらそう言うが、白羽は止まらない。


「ハア、ハア…。生きてるか死んでるかなんて、関係ないの…。貴女がカワイイならそれでいいの。さらにギューッてできればなおいいのーっっ!!だからギューッてさせろおおおおおっ!!」


白羽が、暴走し始めた。


「おい、白羽。キャラが、キャラが…。」


怜斗のツッコミも引き気味だ。


「ギューッてさせて!!ギューッてしようっ!!そして、二人で愛し合おうっ!! 私の愛を受け止めてぇぇぇっ!!」<

「止めて下さぁいっ!!キャアアアアッ!!」


触れない少女に触ろうと挑む白羽と、逃げ惑う少女。そんな光景を見て、怜斗はポツリと呟く。


「この状況、白羽の方がちゃんと七不思議してるな……。」


さながら、七不思議『抱きつき魔』の誕生である。

そして、10分後。


「はあっ…はあっ…。私の愛は…届かないの…?ねえ…。届かないのっ!?」

「許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい…」


限りなく混沌とした空間が出来上がったものの、白羽の体力がなくなり動きが鈍くなったところで、怜斗が場をまとめようとする。


「さて、とりあえず状況を確認しようか…。そこの霊の子、大丈夫か?」

「許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい許して下さい…」

「おーい…。」

「ふぇっ!?は、はい…。だ、大丈夫…です。」

「おう。俺は、八潮怜斗。見ての通り霊だ。お前を襲ってたそこの変態、仁科白羽に憑いてる。お前、名前は?」

「私…ですか?私は…萩原七瀬はぎわらななせです…」

「七瀬たんっ!!」


白羽の叫びに、七瀬はビクッとして、また少し震え出す。


「白羽、話が進まん…。」


怜斗が、辟易としながら呟く。


「七瀬、お前は七不思議なのか?」

「はい…。『保健室の幽霊』って言われてます…。」

「七瀬たんは概念体?」

「いいえ…。私は普通の幽霊です…。」

「七瀬たんは女の子でも大丈夫?」

「ふぇ?どういう意味ですか…?」

「やーんっ!!ちょっとわかってない感じのとこもカワイイッ!!」

「白羽、話をそらすな…。ところで、保健室の幽霊の噂ってこんな感じなんだが、実際のところ、どうなんだ?」


怜斗が、噂の内容を七瀬に話す。


「あ…。あの時は…先生がいなくて、なのに生徒の人が来たから…大丈夫かな?って思って、それで、届かないのはわかってたけど、『大丈夫ですか?』って言って、思わずカーテン開ちゃったら、驚かれて…。」

「もうわかったよ七瀬たんっ!!優しい七瀬たんが大好きっ!カワイイッ!!結婚しようっ!!!」

「なるほど…じゃあ七瀬は危害を加える気とかはなかったと…。」


怜斗は、スルースキルを得た。


「危害なんて、加えません…私は、ただここで死んじゃっただけだから…。」

「いやあぁんっ!?無視しちゃうとこもかわいいよぅっ!!」


白羽が、うねうねと体を動かしながら悶えるのを横目に、怜斗と七瀬だけで話が進む。


「私は…体が弱くて、病気がちで…。それで、学校で倒れて…。そのままこのベットで息をひきとって、でも、未練があったみたいで、そのままここに…。」

「病弱な七瀬たんもカワイイよっ!!」

「なるほど…。よし、ここも大丈夫そうだな…。白羽、次行くぞ、次っ!!」


これ以上は危険と判断し、怜斗は早急に話を打ちきり、白羽を促す。


「えーーっ!!もっと七瀬たんを愛でたい愛したいっ!!愛し合いたいっ!」

「その愛は一方通行だっ!ほら、行くぞっ!!」

「うぅ…しょうがないなあ…。七瀬たん、またね…。」

「は、はいっ!あ、あの、白羽さん…。」


初めて名前を呼ばれ、再び白羽はキュンッとした。


「えっと…。また、来てくださいね…?」


上目遣いでの言葉に、白羽の心は撃ち抜かれた。


「あーーっっ!!かわいいよぅっ!!絶っっっ対また来るからねっ!!」


クネクネと体をくねらせながら、保健室を後にする。

この調査で、白羽は、なにかを失った気がする。


例えば…、主人公の資格…?

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