第8話 トラップハウス
宇宙人の住む惑星に到着し、与えられた試練に挑む佳一。夜になってしまい泊まる先が見つからない佳一は一軒家を見つけるが、そこは宇宙人が言う罠の家だった。
「ここが私の住む惑星だ」
目の前には緑色の惑星が見える。雲が所々あり、海も太平洋ほどの広さがある。
UFOは広い大草原に着陸した。
「ほら、降りろ」
ドアが外に移動し、床から階段が現れた。佳一は長旅もあったせいか階段を一段一段ゆっくり降りる。降りると辺り一面に草原が広がっていた。
「おい小僧、おまえにこれから試練をやる」
宇宙人と亮大が入ったカプセルを持ったロボットが後から降りてきた。
「なぁに。簡単な試練だよ。ただしもし万が一クリアできなかったら、亮大は…即獣化だがなハハハハハ…」
宇宙人は佳一を嘲笑うかのように言った。
「それじゃあ早速第1試練。この草原の中に民家が1件ある。その民家の中に青い宝石がある筈だ。それを手に入れて来い。制限時間は明日の日が沈むまでだ。ほらっ」
宇宙人は佳一に懐中電灯を渡した。
「それじゃあ…」
宇宙人は右手を高く挙げた。
「スタート」
パチッ
指を鳴らすと、宇宙人は愚かロボット、UFOはその場から消えてしまった。
「あ、ちょっと」
佳一は右腕を差し伸ばしたが宇宙人は現れる事なく、佳一は一人呆然と立っていた。
夕暮れ。あれから数時間歩いているが景色は全く変わった気がしない。同じ道をぐるぐる回っているような気分だ。太陽は次第にゆっくりと地平線へと潜っていく。
夜。空を見上げれば星が点々と輝いている。
「何にも見えない。それに腹減ったぁ」
唯一宇宙人から貰った懐中電灯がこの時間帯もの凄く頼りになる。あれから何も食べていない。辺り見てももう真っ暗だから見当たらない、というか見つかっても食べれるのかさえ分からない。佳一はちょっとした丘を登ると。
「あ、灯りが」
遠くに一つの光が見える。佳一はその光に向かって走る。到着すると、一階建てのレンガ造りの一軒家で、煙突から煙がもくもくと出ている。
「今晩ここに泊めてもらおう。すいませーん」
佳一はドアをノックした。しかし返事がない。
「あれ?すいませー」
ガッ
「ん?なんだゲロ?」
いきなりドアを押され、佳一は鼻を押さえていた。
「イッタァ。あっ、すいませっ」
佳一は驚きを必死で抑えた。出てきたのは体長1メートル40センチ程あるカエルだった。
「何の用だゲロ?」
「あ、あぁすいません。私今晩泊まるところがないんです。なので床でもいいので泊まらせてくれませんか」
「おまえ、泊めてもらうんならまず自己紹介はしないのかゲロ?私は見ず知らずの奴なんか泊まらす気などないでゲロぞ?」
「ああすいません。皆中 佳一と言います」
「かいなかけいいち…まぁ名前なんてどぉうでも良いゲロ。入れ小僧」
どうでもいいのかい!
佳一はそう思いながら中に入っていった。しかしこんな他人を泊めてくれるなんて有り難い人(?)だ。佳一は今晩泊まるとこが決まり、安心した。
「ふふふ…まんまと罠の家に入ったな小僧」
その様子を宇宙人は椅子に座り、モニターで見ていた。
「そこにいるカエルは我が僕。これでおまえはTHE ENDだ」
宇宙人は引き続きモニターを見ていた。
宇宙人が見ているのも知らず、佳一はカエル跳びをしながら進んでいるカエルの後を着いていった。奥の扉を開けると4帖程の藁が敷いてある部屋に着いた。
「ほら、ここで寝るでゲロ」
「こんな所でいいんですか?」
「なに?なんか文句でもあるのか」
「い、いえいえ、そういう意味ではありません。ありがとうございます」
佳一はカエルに礼をした。その時
グググ~
「あっ」
お腹が鳴ってしまった。そう言えば降りてから何にも食べてない。
「おまえ腹空かしとんのか?」
「は…はい」
「じゃあ余った飯を分けてやるからこっちに来るでゲロ」
「す、すいません」
佳一は後を着いていった。キッチンに着くと、台の上に置いてあるある物を渡された。
「こ、これですか!?」
皿ごと渡されたのは地球では見たこと無いような虫の揚げ物だった。
「なんじゃ、おまえはこれ食わんのゲロか?」
「いえ、た、食べますよ」
佳一は苦笑いしながらなるべく小さい虫を探して取り出した。見た目はバッタの子供のようだ。少し警戒をしながら、佳一は口の中へ強引に入れ、急いで噛んだ。味はとにかく不味い。そして食感はグチョグチョしてて今にも倒れな気分。佳一は強引に喉に通した。後味がより一層不味さを増す。
「い、いたたぎました。もう充分です」
「もうかい?たった虫一匹で大丈夫ゲロなのか?」
「はい。僕少食派なんで…ハハハハハ」
苦笑いしながら俺は皿をカエル返した。
「じゃあ今夜はもう寝なさい」
「あ、ちょっと待ってください!」
佳一は去ろうとするカエルを止めた。
「なんじゃ?」
「一つ聞きたいことがあるんです。この草原の中に青い宝石が何処にあるかご存知ですか」
「青い宝石?そんなの知らんでゲロ」
「そうですか。すいませんなんか…それでは寝させていただきます。おやすみなさい」
「あ、ちょっと待て小僧。今夜は寒いからこれを飲んでから寝るでゲロ」
カエルが冷蔵庫から瓶を取り出した。
「これはドリンクじゃ、これを飲んで寝れば翌日はハッピーな程元気になるぞ。ほら飲んでおけゲロ」
「あ、ありがとうございます」
佳一は瓶を受け取った。中には紫色のドロドロっとした液体が入っていた。
「それじゃ、おやすみでゲロ」
カエルは自分の部屋へと入っていった。佳一も藁が敷いてある部屋に戻った。
「ふふふ…その瓶を開けろよ小僧。その中身は獣化液。飲んだら翌朝おまえは獣化している。さぁ早く開けるんだ…さぁ!」
モニターで見ていた宇宙人はニヤニヤと笑みを浮かべる。
佳一は部屋に入り、取りあえず座る。そしておばさんがくれた獣化液を飲もうと蓋を開けようとする。が、なかなか開かない。
「ん゛ん゛ん゛~」
全ての力を蓋を開ける為に手に注ぐが開くどころか微動だにしない。
「ダメだ。これは明日返そう」
佳一は瓶を端に置き、チクチクする藁の上で横になった。
「クソッ!あのクソガエルは何で簡単に開けておくとかしなかったんだ!!」
宇宙人は机の上に置いてあるマイクを持った。
「おい!バカガエル」
「は、はいっ」
宇宙人はモニターをカエルに移した。
「何で蓋を固く締めたんだ」
「そ、そうでしたか。それは申し訳ありませんでした」
カエルは何度も謝った。どうやら宇宙人が持ってるマイクはカエルと繋がっているらしい。
「まぁ良い…まだ第2が残っているからな。これが成功しなかったらおまえはどうなるか分かってんだろうな?」
「も、申し訳ありません。必ず次は成功させて見せます」
「頼んだぞ」
宇宙人はマイクを置き、モニターを佳一に変えた。
「クソッ!アイツ何で蓋開けねぇんだよ。おかげで怒られちまったじゃねぇか」
成年のような男の声でカエルは怒っていた。目線が自然と卓上に置いてある写真立ての方を向く。写真は男と奥さん、前には9匹の子供たちの笑顔な姿が写っていた。
「今度こそ成功させねば。じゃねぇと俺は…」
カエルは次の作戦の準備を行った。
一方佳一は藁の上で寝ていた。その様子をドアの隙間から確認したカエルはキッチンに向かい、引き出しからカプセルが入った袋を取り出す。袋から2錠取り出し、口の中に入れ、水と共に流し込む。
「うっ」
効果が出始めたのか、急に出っ張り始めた腹部を押さえる。何の薬かも分からず、ただ宇宙人から「第1が失敗したらこれを飲め」と渡されただけで薬の効果は不明。腹部が膨らみ始め、横から見るとカエル1匹分程、腹が出始めた。それにつれ、体長も大きくなった。
「何これ?ただデブくなっただけじゃん!?」
カエルは薬の効果に戸惑った。
「薬飲んだようだな」
宇宙人の声がイヤホンから聞こえた。
「すみません。これは一体…」
「何、文句でもあるのか?まぁ試してみれば分かる」
「試すって何をですか」
「アイツを飲め」
「!?飲む…ですか?」
「あぁそうだ。今おまえの体は獣化装置になっている。おまえが小僧を飲めば、小僧は獣化した形で出てくる」
「出てくるって…」
カエルは段々不安になってきた。
「いいから兎に角やれ!やらなかったらおまえの命はどうなるのか分かってんだろうな。失敗したその時、即…死だからな」
ブチッ
音が切れたのか、雑音が発生した。
「今俺の体は獣化装置…なのか。こうなったらやるしかねぇ!」
カエルは大きくなった腹を抱え、佳一が寝ている部屋の前まで来た。ゆっくりドアを開け、藁から発生する音を最小限にしながらゆっくりと歩く。そして佳一の前まで来ると、起こさないよう手でゆっくり体を持ち上げ、太く、長い舌を佳一の体の下に移動させる。
「何だ?なんかいい匂いがするゲロ」
前まで匂いなど一切しなかった佳一からとてもいい香りがする。カエルは段々興奮状態になり始め、少しずつ息が荒くなり、舌から多量の涎が滴りだした。
「やべぇ。ハァ、ハァ…早くコイツを、コイツを…」
カエルは更に息が荒くなる。早く口の中に入れたい。しかしそれを拒む別の自分がいる。
「えぇい!いくでゲロッ」
パクッ
ゴクッ
カエルは舌を佳一に捲き付け、一気に口の中へ佳一を入れて飲み込んだ。
「プハァ~」
お腹は今にも破裂しそうなくらい膨らんでいた。そしてお腹の中では佳一が暴れていた。
「クソッ!なんだここは!?」
目を開ければそこは暗闇の世界。箱の中に閉じ込められているような感覚で手足が思うように動かない状態の中、佳一は脱出しようと懸命に足掻いた。
「イタッ!皮膚が、皮膚がっ!」
粘液が皮膚に当たり、傷口を消毒液で多量に塗られているような激痛が佳一を襲う。一方カエルは出させないよう、必死で抵抗する。しかし
「ゲロッ」
べチョ
カエルは佳一を吐き出した。佳一は前進粘液塗れになっていた。
「ハァ、ハァ」
佳一は口の中に入った粘液を吐き出し、粘液を振り落とした。
「いきなり何すんだ!」
佳一は問う。
「…」
カエルは答えなかった。ただ舌を出しながら下を向いていた。そして体が僅かに震えていた。
「ど、どうしたんだよ?」
「こ、これで終わりだ」
カエルは頭を抱えた。
「おまえには分かんねぇでゲロ。俺はこの瞬間、”死”って決まったんでゲロ」
「死って…どういう事だよ?」
「死は死だゲロ。もうすぐ来る…もうすぐ」
「そう、もうすぐだよ、役立たずのクソガエル。安らかに…眠れ」
宇宙人はモニターを見ながら高く右腕を挙げた。
「あばよ。クズ」
パチッ
宇宙人は指を鳴らした。
「ゲロッ!」
カエルは宇宙人が指を鳴らした直後に倒れた。
「おい!どうした?」
佳一は手でカエルの体を揺らす。
「こ、小僧…これから気をつけるんだゲロ。青い宝石は向こうの部屋の箪笥にしまってある。あと、あいつはまだ…おまえを、おまえを…」
カエルは必死で佳一に言葉を残そうとした。
「おまえを?おまえを何だよ!」
「…」
カエルは白目になり、息を絶った。
「おいっ、おい!」
佳一はカエルの体を揺らすが、カエルが喋る事はなかった。
「何だよ。あいつは何を言いたかったんだよ」
佳一はカエルのその後の言葉が気になっていた。
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