第6話 最終段階
数時間後、大統領を乗せたヘリコプターは空港に到着し、飛行機に乗り継ぎポルトガルへ飛び立った。
「流石に海を渡っては来ないだろ」
大統領はファースト席でのんびりワインを飲んでいた。
数時間後、ポルトガルの空港に到着し大統領は飛行機から降りる。そして飛行中に手配しておいたヘリコプターに乗った。
「モナコの別荘に行け」
大統領は操縦士に言った。操縦士がエンジンをかけようとしたが。しかし一向にかからない。
「おい、どうした?」
「すみません、エンジンが故障しているみたいです」
「なにぃ?」
大統領は激怒した。
「申し訳ありません。今すぐ車を手配します」
操縦士はピンマイクで誰かに「ヘリが故障した。今すぐ手配してくれ」と言った。
数分後。タクシーが空港に到着した。
「これに乗れと言うのか?私を」
「申し訳ありません。これにお乗りください」
操縦士が謝る。
「時間が無いから仕方ない。乗るぞ」
タクシーの自動ドアが開き、部下二人と共にタクシーに乗る。
「何処まで行きましょう?」
運転手が尋ねる。
「何処かの高級ホテルでいい」
「分かりました」
運転手はタクシーを動かし高級ホテルへ向け、出発した。
1時間後、大統領らを乗せたタクシーはポルトガルの最高級ホテルに到着した。ホテルに入るとレッドカーペットが受付まで敷いてあり、天井にある大きいシャンデリアの光が大理石の床に反射し、キラキラと輝いていた。
「いらっしゃいませ」
受付係の一人の男が大統領達を迎える。
「一番高い部屋はあるか?」
「はい、ございます」
「じゃあそれにしてくれ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
受付人は受付に戻り、鍵の準備をしていた。
「こちらがその部屋の鍵になります」
渡された鍵は金色に輝いていた。
「ではご案内します」
男はエレベーターのボタンを押し、大統領らをエレベーターに乗せ、最上階の26階のボタンを押した。到着し、扉が開くと目の前に玄関が待ち構えていた。
受付人は鍵を挿し開けた。中は全面大理石で照明は全てシャンデリア。外にはジャグジーがあり、そこからは大西洋が見える。
「ではこれで失礼致します。ごゆっくり」
男は玄関の扉をゆっくり閉めた。
「まぁ最高級にしては普通だが、まっいいとするか」
大統領はベットに腰をかける。その中隅で一人の部下が誰かと無線で話していた。
「了解した。大統領!」
部下が大統領に言う。
「なんだ?」
「現在黄色い物体がポルトガル沖30km付近まで来ているようです」
「何!?海を横断しているとでもいうのか!」
「はい」
「嘘だろ…信じられない」
大統領は立ち上がり、窓から見える大西洋を眺める。
「いる…やつらいるじゃないか!」
遠くに見える大西洋の奥には黄色い一直線がくっきり見えた。
そんな黄色い物体は体を光らせながら衰えることなく大西洋を泳いでいた。視線には大統領が泊まっているホテルと灯りで照らされた町並みが見える。そんな中近くで一隻の船が漁をしていた。網を機械で上げると多くの魚が捕れた。
「船長!今日は大量っすよ」
船員が網を引っ張りながら言う。
「こんなに捕れたのは久し振りだ。帰ったら飲み会だ」
白髭が首まで生えている60代後半の船長は操縦席で喜びながら言う。あまりにも大量過ぎて収納ケースに収まらなくなった。仕掛けておいた4つの網全てに魚が大量に入っていた。
「よしっ、そろそろ戻るぞ」
船長が迂回しようとするとエンジンが突如急停止した。
「ん?どうしたんだ」
船長は何度もエンジンをかけるが一向にかからない。
「船長どうしたんすか?」
「わからん…エンジンがかからん。重すぎか?」
船長は何度もエンジンボタンを押していた。しかしかからない。
「クソッ!どうなってんだ」
船長は次第に怒り始めた。
「船長。下を見てください!」
船員が指した先には黄色い物体が海面を覆っていた。
「な、なんじゃこれは?」
船長は腰を抜かす。
「人類発見。獣化ヲ開始スル」
海から声が聞こえた後、船を飲み込むように黄色い物体が上から襲う。
「や、やめろおぉぉぉ!」
船長の声と共に船は飲み込まれた。黄色い液体の中に入った船員らは足掻いたが意味無く、獣化をし始めた。腕と足がポロッと取れ、皮膚を赤い鱗が覆う。ボキボキという音と共に体が縮まり、手足の変わりに鰭が生え始め、呼吸も次第に肺から鰓呼吸に変わっていった。顔も変化し始めた。口が前に突き出し、目が左右へ動き始めた。そして一人の船員は鯛へと変身し、海の中を泳いでいった。次々と船員が魚へ変身する中、船長は黄色い液体から顔だけを突き出し脱出しようとしたが、顔以外は既にマグロへと変身していた。
「クソ、チキショウゥゥゥ」
次第に黄色い液体に顔が入り始め、完全に入った瞬間、ボキッという音と共に顔がマグロへと変わり、優雅に泳ぎ去っていった。
黄色い物体が地球へ来て5日目。黄色い物体はアマゾンにいた時よりも数がかなり減っていた。とは言ってもまだ数千体はいる。現在黄色い物体は日本海・東シナ海上を泳ぎ、日本へと向かっていた。その様子を宇宙人はモニターで見ていた。
「やはり寿命がそろそろ来たか…今日が勝負だな」
宇宙人はモニターを見ながら言った。
一方亮大家。電気、ガス、水道全て使えなくなった中、佳一と亮大は部屋にいた。携帯も使えなくなり、佳一が持ってきた食糧も残り僅かとなった。
「おい…これからどうするよ?」
横になった亮大が言う。
「どうするよって言われてもなぁ」
佳一は壁によっかかりながら返答する。唯一の情報源のラジオも昨日から砂嵐で何も情報が得れない。二人の間に沈黙の時間が流れていく。すると
ピンポンパンポン
市内放送が町中に流れた。
「おっ、放送だ。ってことはまだ獣化していない人がいるってことじゃん」
亮大は立って喜んでいた。
「騒ぐなバカ。放送が流れるだろ」
その後佳一は亮大に怒った。そして放送が流れた。
「現在謎の黄色い物体は日本海・東シナ海上、日本に向け進行している。現在謎の黄色い物体は日本海・東シナ海上、日本に向け進行している。現在政府は撃退に向け準備している。獣化していない国民は家から出ないようにしてください。繰り返す現在……」
「おい聞いたか、日本海だぞ日本海。もう近くまで来てるじゃん。俺らも獣化しちまうのか!」
亮大は若干パニック状態になった。
「落ち着け亮大。放送聞いたろ?政府がなんとかするって」
パニックになっている亮大を必死で佳一は冷静にさせようとしていた。数秒後亮大は冷静さを取り戻した。
「と、とにかく政府が撃退してくれるらしいから俺たちはここで待とう」
佳一は亮大に言った。
「あぁ」
落ち着いた亮大は顔を縦に動かした。
同時刻、日本海上島根県隠岐諸島。自衛隊がユーラシア大陸に向け、海岸沿いに戦車を何百台構えていた。その後ろでは隊長らしき人が丘の上で双眼鏡を覗き、海の方を見ていた。
「黄色い物体はまだか?」
隊長は双眼鏡をキョロキョロと動かしていた。
「た、隊長!」
後ろで一人の隊員が隊長に言う。しかし隊長は気付いていないのか未だに双眼鏡で見ていた。
「隊長!」
しかし全く隊長は反応しなかった。
「……」
隊員は隊長の耳元まで近づいた。
「隊長っ!」
「ワッ!」
隊員は隊長の耳元に大声で言った。その直後隊長はあまりにも大きい声に飛び跳ねてしまい、尻餅をついてしまった。
「耳元で叫ぶな。この馬鹿者がっ!」
「す、すみません。あまりにも気付いてくれなかったので…」
「気付いてくれなかったじゃないわ馬鹿者!危うく鼓膜がいかれる所だったわ。で何だ」
「あ、はい。黄色い物体を発見しました」
「なにぃ?」
隊長は双眼鏡で見た。
「見えないじゃないか」
「双眼鏡では見えませんよ。戦車の望遠鏡で発見しましたので」
「見えたのなら早く準備せい!」
「は、はい」
隊員は駆け足で去った。
「遂に来たか」
双眼鏡を外し、隊長の顔がシュッときつくなった。隊長は無線機を取り出し、隊員全員に伝える。
「いいか、黄色い物体が来る。一匹残さず殺れ!いいな」
「「「おうぅぅぅ!!!」」」
隊員皆が一斉に戦車の中で拳を挙げた。そして隊長の目にも黄色い物体が見えてきた。
「よしっ!撃てえぇぇぇ」
ドドドドドン
隊長の声と共に戦車から何百発ものミサイルや弾が放たれた。爆発した時に所々黄色い欠片見える。
「どんどん撃てぇぇ」
弾切れになるまで撃ち続けた。激しい波が海岸に打ち寄せてくる。煙が上がり続け、全滅したかまだ不明だが、隊長は双眼鏡で確認する。
「これだけ撃てば全滅じゃろ。人間をなめるな!グハハハハ……なっ!」
喜びのも束の間、その先には何やら黄色い塊が一つの場所に集まり始めたのだ。その様子を宇宙人はモニターで見ていた。
「フフフ…遂に来たか最終段階。これで人類は一匹残らず全員獣化だっ!行け、野郎共!」
その声が届いたのか黄色い物体は風船のように大きくなり始めた。そしてある程度高くなったところで今度は膨らみ始めた。
「あいつら一体、何しやがる?」
隊長は双眼鏡でその様子を伺う。今にも破裂しそうなくらいに膨らみ、そして
パーン
黄色い塊が破裂し、直後に津波と共に台風以上の強風が襲ってきた。
感想等宜しくお願いします。