第27話 I do not go well so easy
神様は俺を信じてくれているのだろうか…
同時にスタートし、佳一は早速剣を前に構える。
「一、炎斬!」
剣から三日月状の炎の塊が発し、婆さんの元へ行く。
「ふっ、そんな技、通用しんぞ!」
婆さんは右の掌を前に出すと、佳一の技は婆さんを避けるように真っ二つに分かれ、岩にぶつかった。直後佳一は婆さんの背後に寄り、剣を振る。しかし、既に読まれており、素手で剣を止めた。強引にでも剣を降ろろうとするが、全く微動だにしない。
「そんなんで私に傷を付けれると思うか?」
すると婆さんは板挟みした剣ごと佳一を地面に倒し、人差し指を佳一の額に向けると人差し指から紫色の光が大きくなり始め、佳一に向け放そうとする。
ヤバッ!
佳一は右へ転がり、立ち上がる。
「ほ~、よく避けれたじゃないか。じゃが…」
「う゛っ!」
一瞬の動きでよく見れなかったが、確実に足で蹴られた感触があった。佳一は飛ばされ、壁にぶつかり、壁が凹む程の威力を身を持って体験した。
「クッソオ」
立ち上がり、剣を構えて婆さんを攻撃する。しかし簡単に避けられ、なかなか中らない。
「こうなったら…二、包囲炎!」
剣で丸く円を描くと、炎の壁となり、婆さんを包み込む。炎に閉じ込められた婆さんは焦ることなく平気な顔をしていた。
「フッ、これは私が教えた技。そんなの幾らやったって勝てんぞ!」
「落ちろぉおおおおお!!」
同時に炎は婆さんをぺしゃんこにするように丸い炎は平べったくなった。しかし前のおじさんの時とは違かった。平べったくなった時、真ん中で膨張し始めた。炎が消えると、膨らみの中に婆さんはいた。
「見た感じ、少しは力を付けてきたようじゃないか。じゃが、こんなんではまだまだ勝てん!」
婆さんの言葉を無視し、佳一は次の技に入る。剣を構え、目を瞑り、集中する。すると佳一の体から発している炎が威力を増す。そして佳一は瞼を開けると、
「四、炎流旋風!」
技の名前を言うと、佳一の姿は消え、真っ赤の龍の姿になった。
「あんな短期間で自分の技を作ったのかい。なかなかじゃないか」
「いっけぇええええ!!」
佳一が動くと龍も一緒に動き、婆さんへと一気に近づく。
「来いッ!」
婆さんは掌を前に出し、攻撃体勢に入る。
龍は大きく口を開けると赤い何かが光っている。
「なんだあれは!?」
婆さんは驚いていると、佳一が発す。
「五、炎光線!」
剣から赤い光線と龍から出る炎が合わさると、スピードを上げながら婆さんへと中る。黒煙が舞い、視界が一気に悪くなる中、佳一の龍は消える。
佳一は未だ消えない黒煙を見続ける。黒煙が徐々に消え、婆さんが見える。
「そ…そんな」
婆さんは一切傷を負っていない。戦う前と全く同じだ。
「なかなかやるじゃないか。今のが最高か?」
婆さんの問いに無言になる。
「どうやら今のが最高みたいだね、いいだろう。合格だ」
「え?」
「忘れたかい?あくまで傷を負わせれば合格じゃ、ほれ」
婆さんが左腕を上げると、一部切れている所があった。
「今の技は確かにちょっと防げなかった。さぁこっちに来な」
婆さんは梯子を使わず、そのまま出口へと上がっていった。
一方絵梨香含む虫達は残り10組まで減っていた。モニターには残りの組の卵の数が公表され絵梨香達は6位の404。5位との差は140。この週では上位5組が残れる。終了まであと4日。
「頑張れ絵梨香!」
「う゛ぅ~」
絵梨香の産卵管から卵がちょびちょび出る。しかしそんな事よりも絵梨香は、
「アアアアアア!!!」
産み過ぎて踏ん張る度に体中に痛みが生じる。産んだ卵はオスが穴の中へと入れると数字は448となった。
「このままじゃ俺たち生きて帰れなくなるぞ」
中央にはドロドロのマグマがぶくぶくと音を立てている。
「んなの解ってるわよ。けど…もう痛さで限界なのよ」
絵梨香はもう歩く事すら出来なかった。ただオスが産んだら再び性行為する繰り返し。性行為をしようとすると体が偶に拒絶反応を起こす事も最近になって増えてきた。
「この間だけの我慢だ。死にたくないなら我慢しろ!」
オスは性行為をしようとするが絵梨香の体は拒絶反応を起こし、オスを蹴飛ばす。
「ご、ごめん…体が勝手に…」
聞こえるか聞こえないぐらいの声量で喋る絵梨香に対し、オスは無理矢理でもやってやると性行為をする。
「ここが人間界へと繋がる通路だ」
森の中を十分くらい歩くと目の前にはただの岩壁しか見えなかった。
「ここ…が?」
「まぁ見てなさい」
婆さんは岩壁に手を当てると、急に風が吹き始めた。
ゴゴゴゴゴ
徐々に揺れだし、立っていられなくなった佳一の目の前には大きな穴が見えていた。
「ほら、ここが人間界へ通ずるトンネルじゃ」
揺れが静まり改めて見ると高さ10mくらいの穴が開いていた。
「さぁ早く行きなさい」
佳一は暗闇の中へと進む。足音がトンネル内で響く。
「お、あれが出口か?」
暫く進むと小さい明かりが見えた。出口へ出ると、草原へ出た。そしてその下には自分の町が見えた。
町へ降りると景色は相変わらずだった。変わったと言えば草がアスファルトの隙間から生い茂っていることくらい。勿論人は一人もいない。周囲は獣化したであろう人間が呑気に横に寝そべっていたり、散歩していた。
家に着き、獣化した千成と悠真を見に行こうと入ると誰もいなかった。
「あれ~…アイツら何処行ったんだ…」
捜索しに周辺を歩くが、一向に見当たらない。早くも陽が沈みかけ、空は茜色に染まり、反対側は早くも夜へ空へと変わり始めていた。
結局見つからないまま家へと戻り、暗い部屋に一人座る。外から照らす月光が佳一を当てる。稀に鳴き声が聞こえる中、佳一は思った。
「亮大…大丈夫かなぁ」
自分のせいで獣化させてしまった亮大は今頃何処にいるんだろうと心配で仕方なかった。
「遂に来たか」
ルピはニヤニヤしながら佳一の存在をモニターで確認していた。
「いよいよだ。亮大いや、グルドゥフィル」
グルルルルル…
ルピの後ろの檻の中では闇に包まれている亮大がいる。
「この日を待ってたぞ唯一残った人間、皆中 佳一。おまえを獣化させて人類絶滅させてやる!」
翌日。座り込んだまま寝てしまった佳一は硬直した体をボキボキ鳴らせながら動かす。外に出ると太陽が空高く昇っているのと同時に…
「起きたか?佳一」
丁度太陽の中心部にいるのは…
「ルピッ!」
「久しぶりじゃないか。急に姿を消したからどうしたのかと思ったよ」
「亮大は!亮大は何処にいるッ!」
「そう焦るな。お前の友達は此処にいる」
ルピは指をパチンと鳴らすと、突然黒い雲が現れ、太陽を隠し、辺りはまるで夜のように薄暗くなった。そして蠢く雲の隙間から現れたのは、
「りょ、亮大!」
隙間からゆっくり降りてきたのは獣化していない人間状態の亮大の姿。亮大はゆっくり地面へと到着した。
「返してやる」
「…えっ?」
「そいつにはもう用は無い。だから返してやる」
ルピの言葉に疑心暗鬼したものの。佳一は亮大の元へと走る。亮大は立ったまま目を閉じている。
「亮大ッ!亮大!」
両肩を揺するが、亮大は何も反応しない。
「おい!どういう事だ!」
「余所見は厳禁だぜ?」
「は?…うっ!!」
突然誰かに殴られ、地面に叩き付けられる。起き上がると亮大は顔を下に向けながら右拳を伸ばしていた。それは正しく佳一が殴られた左頬に合致する。
「りょ…亮大…」
「さぁやれ!目の前にいるクズをやってしまえ!」
「グワァアアアアアア!!!」
人間では到底声に出せないような発声をすると、佳一は一気に姿を変え、目の前には体長10m程の巨大な翼が生えた一匹のドラゴン…
「さぁ!さっさと佳一をやり、人類を滅ぼせ!!」
グワァアアアアア!!
鳴いた時の音量は鼓膜を破りそうな騒音だった。思わず耳を両手で塞いでると、亮大の口から炎が吹き出た。避けたが、威力が凄まじい。たった一発で半径500mが火の海と化した。そして周りでは獣化した人間達が避難し出した。
「これが亮大の…姿…」
その姿だけに威力を感じた。
グワァアアアアア!!
ドラゴンは片足を上げ、佳一を踏みつぶそうと足を佳一へと落とす。避けた佳一だったが、踏んだ時の風の勢いが異常な程強く、吹き飛ばされそうになりかけた。
その後もドラゴンは佳一を踏みつぶそうとする度、佳一は避ける。攻撃できないと思っていた時、後ろからルピが佳一の体に黒い輪のような物で足を塞ぐ。転倒した佳一は上を見上げるとドラゴンの足が見える。
「ジ…エンドだ」
ルピの言葉と共にドラゴンの足は佳一の真上に落ち、砂煙が足の周囲を舞う。
「ふふふ…これで佳一は死んだか。グハハハハハハ」
ルピの笑い声が響き続ける。
「さぁて!これで人類は滅亡だ!この惑星は俺のもん!そして俺は研究所から追い出される事もないのだ!いいかおまえら!」
ルピは動物達に指を指す。
「これからおまえらをたっぷりと虐めてやるからな!今この瞬間から地球という惑星は俺の物になったんだ!食用として食われたくなければしっかり働くんだな!」
その頃ドラゴンの踏んでいた足に異変が起き始めていた。それに気づいたドラゴンは足元を見る。足の周りが少し赤くなり、次第に大きくなり、最終的には熱さでドラゴンは足を上げる。足を上げた先には佳一を囲うように炎が包んでいた。その姿をルピは見ていた。
「まだ生きていたか佳一!今度こそおまえをやってやるぞッ!」
ルピは光速で佳一へと向かい、佳一の目の前で殴ろうとしたが避けられた。
「なにっ!?」
そして佳一は背を向けたルピに向かって剣を反時計回りに回す。刃先はルピの右ひじに掠った程度だった。
佳一から数十メートル離れた先で右ひじから流れる血を見たルピは怒りをあらわにする。
「ケイイヂィイイイイイ」
ルピは今度は左の掌で黒い球を作り出しながら、佳一へと光速で移動する。
「これでお終いだぁあああ!!」
黒い球を佳一に向けて投げ、佳一は剣で斬ろうとするとルピはニヤッと笑う。
「ひっかかったな!」
黒い球を斬ると、剣を包み始め剣は液状化した。剣を失った佳一はその後のルピの攻撃を受け、電柱にあたる。背骨がボキボキと折れる音が耳へ伝わり、生き物として発声しないような鈍い声を出しながら血を吐く姿を見たルピは瞬時に佳一の首を掴む。
「グッ」
「佳一?おまえは剣が無いとただのクズ同様なんだなぁあ?」
ルピは更に首を強く締める。佳一は再び鈍い声をあげる。
「おまえが死ねば人類は終わりだ。そして俺は研究所から栄誉を貰うだろう。そうだ」
ルピは笑みを浮かばせながら、手を離す。青ざめた顔になった佳一は倒れるどころか、立つことも出来ない。
「おまえもコイツらみたいにしてやるよ。より一層の地獄を味わうようにな」
するとルピは内ポケットから黒い液体が入った注射器を取り出した。
「これは凄いぜ。どんな姿になるかは見てからのお楽しみだ」
ルピは佳一の腕を掴み、血管へと液体を注入する。
「じゃあな佳一。おまえの餌はそこら辺にうじゃうじゃいるからよ」
ルピは去って行った。そして佳一は姿を変え、まるで化物みたいに気持ち悪く。目をギョロっと動かし、その目で周囲を見渡すと色んな動物達がいるのを確認すると、佳一は動物を次々と食べていった。
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