第24話 三日間の虫生活
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ゴゴゴゴゴ
モンスターの何度もの攻撃で辺りは砂煙。視界は数cm先も見えない程になっていた。モンスターは攻撃してから二、三分。未だにモンスターはその場を攻撃している。
「はぁはぁはぁ…」
砂煙の中で佳一は密かに呼吸を整えていた。実は佳一はモンスターが攻撃した際、最初は攻撃を受けていたが、何発も防具服に中る度に防具服に亀裂が入り、防具服が壊れた瞬間、佳一はなんとか逃れたのだ。更に佳一はなるべくモンスターにばれないように岩の裏へと隠れた。佳一の防具服にはまだ佳一の体温がまだ残っていた為、モンスターは防具服だけを攻撃しているという状況なのだ。なんとか逃げ切れた佳一だったが、モンスターの攻撃は予想を遥かに超えていた。
「なんなんだよアイツ……。レベルアップし過ぎだろっ」
防具服でダメージはあまり受けなかったが、モンスターの攻撃は恐ろしい程破壊力がある。
「どうしよう…そろそろばれてもいい時間が来るぞ。しかもこんな砂煙の状態じゃ、相手が有利だ」
ゴゴゴゴゴ……
音が止まった。
「ばれたか?」
砂煙が徐々に消え、景色が見えてくる。そして殆ど見える状態になった時、モンスターは佳一がそこにいなかった事に気付くと、モンスターは辺りを見回した。岩陰に隠れている佳一は少し顔を出し、じっとモンスターがいそうな方を見る。しかし、モンスターは佳一の足跡に残っていた僅かな温度を見つけた。足跡を目で辿っていくと、佳一が隠れている岩陰に目がいった。
「ヒィヤァアアア!!!」
モンスターが一鳴きすると、左手を伸ばし、剣の先端のように変形させ、そのまま佳一のいる岩に攻撃すると、岩の半分よりやや上が粉々に砕けた。佳一は突然の攻撃に顔を下げる。数秒後頭上を見上げると、あった筈の上部分の岩が無くなっていた。
「これはもうばれてるっ!」
佳一は危機感を感じ、置いてある剣を持った。上を見るとまだ左腕が伸びきっている状態だった。剣で切ろうと立ち上がりながら剣を振ると、腕はすぐ引っ込み、岩から身を出すと、視界には右手が佳一の方へ向かっていた。
「くっ」
ドーーーーン
一方絵梨香達のいる部屋には放送が流れた。
「おっほん!えーこれから皆移動してもらう。説明は移動後話す」
すると絵梨香達はその場から消え、目を開けると前の柵以外は壁で仕切られており、後ろにはモニターが立てかけられていた。絵梨香は柵へと近づくと衝撃的な光景だった。
「な、何これ!?」
柵から見た景色それは、まるでスタジアムのように中心には大きな穴が開いてあり、中心を取り囲むように絵梨香達の部屋のような部屋がぎっしりと詰められていた。それぞれ配置され、全部屋のドアが閉まった。
一体何が始まるのだろうか…
全員そんな気持ちで思っていた時、お婆さんの声がスピーカーから聞こえた。
「それでは説明しよう。今お前達は計1000以上おる。私としてはもうそんなに要らん。そこで、これからサバイバルバトルを行う」
「サ、サバイバルバトル!?」
「何だよそれ…」
周辺がざわつき始めた。
「ルールは簡単だ。今まで通り一週間毎にお前らの仕事の結果を発表する。その際今週は半分の501位以下はゲームオーバーとなり罰ゲームを行う。では今日から一週間じゃ。各部屋のモニターの下に穴があるじゃろ?そこに卵を入れていくとモニターにカウントされる。では罰ゲームを受けないように頑張ってくれ」
確かに後ろにはテレビ画面が壁に立てかけられている。
「罰ゲームって何よ…」
その時全員に緊張が走った。しかし一刻でも早くやった方がいいと、其々行動に出た。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ…
「…こ、ここは…」
瞼を開けると、辺りは若干明るかったが、何故かくっきりと天井が見えた。ゆっくり体を起こすと何かが変だった。
「何だ?やけに視界が低い…もしかして…」
佳一は自分の体を確かめる鏡みたいなものを探していた。しかし確認できるものは無かった。暗くて分からなかったが、佳一の視界には柵が見える。右にも左にもそして上にも…って上にもって事は虫かごの!?
「ウソだろう!?まさか俺は…」
「虫になったんだよ」
カチッ
「うっ」
電気が点き、目を細める。目の前には巨大な婆さんがいた。というかこれは俺は小さくなったって事か。
「起きたかい?ミイデラゴミムシ」
「ミイデラゴミムシ?」
ミイデラゴミムシとは簡単に言えば派手な体色をしたゴミムシ類の昆虫の事。体長はおよそ1.5cmで、黄色で褐色の斑紋があり、鞘翅に縦の筋が9つある。
「今のおまえの姿じゃ。ちと相手のレベルが高過ぎた。おまえは三日くらいその姿でいてもらう」
「な、何で!」
「これを見なさい」
直後に何者かがストレッチャーで運んできたのは傷だらけの俺の体だった。とても人間という姿を確認するにはせいぜい顔の部分で胴体は臓器が少し見えている。これで闘うなんて流石に無理だ。
「あのモンスターには時間が設けられていてね。時間はとうに過ぎているのに騒がしいから行ってみた結果。おまえがこんな姿になっていて私は驚いたよ。これからおまえの体を治してやる。こんな体じゃ話にならんからな。なんなら一層の事、おまえはそのままの姿で生きるか?」
「そ、それは嫌です!俺は…どうしてもやらなきゃならない事があるんです」
「そうか。いっとくが最低でも三日だ。これはどういう意味か解るか?」
「い…一週間以内だから残り四日しか練習が出来ない」
「その通り。いっとくが治すのは今回だけじゃ。それ以降は死んでも助けないからな」
そう言ってお婆さんと俺の体を乗せたストレッチャーは部屋を去った。
「助けないって言ってもなぁ…この体じゃどうしようも出来ないし…」
佳一は籠の中を歩き出す。
一方絵梨香達は必死で卵を産み続け、遂にその一週間が経った。
「一週間経った。それじゃあ前に言ったように、これから501位以下は罰ゲームを行う。後ろの画面に順位が表示される」
皆後ろの画面を見る。すると今まで真っ黒だった画面が青く光り出した。絵梨香の画面には386と表示されていた。
「見たか?今表示された数字が順位じゃ。501位以下は赤い画面となっておるじゃろ?そいつらは今から罰ゲームを執行する」
すると中央で何かが開く音がする。絵梨香は反対側へ移動し、中央を見た。
「な、何これ…」
絵梨香が見た光景。それは、今まで何も無かった中央には赤くドロドロと煮沸しているマグマが姿を現した。
ガシャン
「「「イヤァァアアアアア!!!」」」
何かが外れた音と共に悲鳴が聞こえる。よく見ると中央のマグマへ小さい何かが次々と落ちていく。
「あれって…」
絵梨香は気付いた。落ちているのは……今の私達だと。
「まさか罰ゲームってマグマに落とされるって事!?」
「そうみたい…だな…」
未だに聞こえる悲鳴がこの会場に鳴り響く。そんな中スピーカー越しにお婆さんの声が聞こえる。
「さぁて、これで一気に減った。次は50まで絞る。51以下は解ってると思うが……先程の奴等みたいになるからの。ハハハハハ」
お婆さんの笑い声は、私にとって恐怖を与えた。もし落ちたら私は人間になれないと…
一方、一時的にミイデラゴミムシになってしまった佳一は籠の中で退屈な時間を過ごしていた。体を動かそうと筋トレをしようとするが、虫の体ではどうにも出来ず、唯一走る事しか出来なかった。籠の中で走っていた。
「にしても四足じゃ走りずれぇよ!」
普段二足で歩いている人間にとって、四足で歩くのは難しい。たまに転んだりしながらも、佳一は走り続けた。
走り終え、休んでいると急にお腹が痛くなった。
「どうしよう…トイレとかどうすりゃいいんだ…」
焦れば焦るほどお腹に力が入ってしまい、じっとしたらすぐさま出てしまいそうになる程、限界まで来ていた。
「あ…」
プゥ~
「屁だったのか…」
思わずダイかと思った佳一だったが、屁だった事に一安心した。その後もダイかと思ったら屁という状態が何日も続いた。
虫にされて三日目。お婆さんの言う修復完了の日がやってきた。
ガチャ
「おい、修復かっ……」
バタンッ!
お婆さんは喋った途端、戸を閉めた。
「ど…どうしたんだ?」
佳一には全く理解できなかった。数分後、お婆さんはガスマスクをして入ってきた。
「どうしたんですか?」
「おまえをこれにしたのが間違いだった…」
「え?」
「おまえがなっている虫はな、凄い悪臭を放つ奴だ。おまえオナラ結構したじゃろ?」
「そう言えば…異常なくらい屁が出ました」
「じゃろうな。この屁はとにかく異臭でな呼吸なんておろか、害を生じるのじゃ」
お婆さんはドアを全開に開け、手で異臭を外に追いやる。
「とにかく、おまえの体は治した。これから魂だけを移動させ、おまえの体に移させる」
お婆さんは早歩きで籠を取り出し、部屋の外へと出る。
地下へと降りていき、奥のドアを開けると、手術室みたいな部屋だった。真ん中には台の上でパンツ一丁の姿で俺の体が乗っていた。傷は無く、戦う前の状態になっていた。
「それじゃあ早速いくよ」
籠から取り出された俺はヘルメットに変なコードが付いた物を被さるというかあまりに虫が小さい為、ヘルメットに入ってしまった。
「じっとしているんだよ」
お婆さんが何やら操作している音が聞こえる。次第に機械が作動する音が聞こえる。
「瞑って!」
お婆さんの言う通り、佳一は目を閉じた。
「OK!瞼を開けてごらん」
瞼を開け、顔を起こすと、自分の人間の時の体に視界が入った。
「これで終わりじゃ。何度も言うが、残り四日で私に傷を負わせれるように頑張るんじゃ」
「はい!」
「おまえの服はそこにある」
お婆さんの指差す方を見ると、防具服と剣がまるで新品のような状態で置かれていた。早速佳一は着替え、剣を持つと早速練習場へと向かった。再びスイッチを入れ、また新たに練習を開始すると、一回負けたモンスターが再び現れた。
「ぜってぇ今度こそは負けねぇからな」
そう言って佳一は走り出した。
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