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人類獣化計画  作者: 夜舞崎 結季
◆別世界
21/28

第21話 初対決へ

絵梨香は人間に戻るためにゴキブリに変身し卵を産み続ける。佳一は頼もしい相手と共にお婆さん家へ。そしてお婆さんと佳一が…

 佳一とニワハンミョウはとある岩の上で休んでいた。

「こんな俺のために協力してくれてありがとう」

「いいのよ。あたしはあたしで久しぶりに人と逢えて嬉しいし、あたし、困っている人とか見ちゃうと放っておけないタイプだから」

「そうなんだ。そういえば、まだお互い名前を言ってなかったね。俺は皆中 佳一。佳一って呼んで」

「宜しくね、佳一君。あたしは妹尾(せのう) 愛実(まなみ)。まなって呼んで」

「宜しく、まな。そういえばまなに聞きたいことあるんだけどいい?」

 佳一は移動中にどうしても気になることがあった。

「いいわよ。答えられる範囲なら答えてあげる」

 愛実は快く佳一の質問を聞く。

「まなは俺を助けてくれた時に空が光ったって言ってたよね?その時の色って覚えてる?」

「色……そうねぇ。確か緑だった気がするわ」

「緑…緑……あっ!」

 佳一はふと思い出した。確かまだ皆が獣化していなかった時、母さんが俺に言ってた「ねぇ、さっき緑色に光らなかった?」やっぱりあれは宇宙人の仕業だったのか。

「じゃあまなはその光でここに飛ばされてきたってことだよね」

「そうよ。目を開けたらここにいたの」

「そっか……」

「まだ何か聞きたいことある?」

「いや、取り敢えずこれだけは聞きたかったからいいよ」

「そう、なら早く行きましょ」

「もう行くの?」

「言ったでしょ。私たちの1時間がここでは4時間だって」

「そうだったね」

 佳一は愛実の背中に乗って再び移動し始めた。




 一方蜚蠊(ゴキブリ)にされた絵梨香はと言うと、毎日交尾をやっていくにつれて絵梨香のお腹はバスケットボールくらいまで大きくなっていた。

「く…苦しいよぉ」

 お腹は常に満腹状態。パンパンに膨らんでいる。

「ゆっくり深呼吸しろ。いづれ産まれるときが来る。その時まで待て」

 オスの蜚蠊が絵梨香に言う。

「あぁ!」

ブブッ、ブブブブブブッ

 突如便を出すかのような感触が襲い、力を込めると大量の卵が絵梨香の体外へ排出された。

「出てきたぞ!頑張れ!頑張れっ!」

 お腹に力を入れる度に卵が次々と出ていく。排出された卵はオスの蜚蠊が一生懸命隅へと運ぶ。絵梨香が落ち着いた頃には卵が山のように積まれていた。

「ハァ、ハァ、ハァ…」

「よくやったぞ!一回でこんなに出るなんて思わなかった」

 見知らぬ男に褒められても絵梨香は嬉しくない。ただ絵梨香は早く人間に戻るためにこうして卵を産み続けているだけ。別におまえなんかどうでもいいと絵梨香は心の奥で思った。

ブーー、ブーー、ブーー

 突如サイレンが鳴り響く。

「何、今のサイレン?」

「これは卵を集める時間さ。これで2週連続worst5に入るとここから出ていくんだ」

ガチャ

 扉が開く音が聞こえたと同時に後ろを振り向くと全身黒い人間みたいなのが袋の中に卵を入れていく。

「あれが回収されて即結果が言い渡される」

 卵を全て袋に入れると咄嗟にそいつは扉を閉める。他の部屋でも同じように卵を集めると咄嗟に閉める。

「それじゃあ発表するよ」

 扉が閉まって僅か30秒。お婆さんの声が天井のスピーカーから聞こえる。

「毎週こうやって発表されるんだ。結果は全て番号で言われる。扉に書いてあるのが僕らの番号さ」

 絵梨香は扉を見る。白いスプレーで「349」と書かれていた。

「まずBEST3から。3位807、1411個。2位688、1478個。1位499、1507個だ。1位にはポイントをやろう。現在最高は499で3個だ」

「せっ、1507個!?」

 あまりの数に絵梨香は驚く。

「上位なんていっつもそのくらいは行くさ。言い忘れたけど、1位以外はポイントを得れないんだ。5ポイントで人間になれるんだ」

「5も!?」

「因みにポイントは3週間以内に1位を取れなければポイントは0になる」

「そ…そんなのって…あまりにも厳しすぎるわ」

「だからみんな必死でやっているのさ。甘く考えているとすぐビリになるからね。2週連続worst5に入った場合は即ここから退場になる。僕らはまだ3日しか経ってないから多分worst5には入ってると思う」

 オスが説明してくれている間にお婆さんは次にworst5の発表をする。

「それじゃあworst5の発表をする。1位349、102個…」

 早速絵梨香たちの番号が発表された。

「2位707、291個。3位081、303個。4位276、304個、5位348、305個だ。因みに6位は342、306個だ。失格者は707・348だ」

「嫌だ…やめて…出ていきたくない…」

 蚯蚓側からそう聞こえると、

ガチャ

 まるで落とし穴のように開き、蚯蚓(ミミズ)二匹は落ちていった。そして何事もないように床は閉じる。

「では次回まで頑張るように」

 マイクの切る音を最後に、周りはまた交尾を始める。

「よし、俺らも頑張ろう!次回worst5に入ったら一生俺らはこのままだぞ!」

「こんな姿で死ぬまでなんか嫌!1位取れるように頑張りましょ!」

 自然に絵梨香たちも交尾を始めた。




「見えてきたわ」

 あれからどのくらい経っただろう。一日は軽く超えた気がする。けど一日中同じ天気だと本当に一日経ったのかさえ分からない。もしかして2、3日経ったかもしれない。そんなこんなでお婆さんの家に着いた。

「ここまで連れてきてくれてありがとう」

「そんなのでありがとうなんていらないわ。あたしは人に会えただけでも嬉しかった」

 すると愛実(まなみ)は佳一の頬にキスをした。佳一は少し赤くなった。

「じゃ、頑張ってね」

 愛実はそう言って飛んで行った。

「愛実さんの為にも、そして皆の為にもって……そういえばあのわんこは?」

 佳一は思い返す。そういえばわんこも一緒にいたような…

 曖昧な記憶な為、正直わんこがいたさえも分からない。

「どこかで会えるか」

 佳一は取り敢えずお婆さんの家に入った。地下へ辿り着くと、最初の難関、階段が待っていた。普通に登ってきた階段だが、小さくなると絶壁のようだ。

「よいしょ」

 ジャンプして上の部分にぎり掴める程度だった。佳一は()じ登り、また一段一段と登っていく。

「これで…さいご……だっ!」

 階段を登り切り、佳一は壁によりかかり、呼吸を整える。暫く休んだ後、廊下を歩くとお婆さんは椅子に座って何かを丸呑みにして食べている。あれはなんかの卵か?まぁそんなことはどうでもいい。佳一はお婆さんに声をかける。

「おばあああさああん!」

 しかしお婆さんは食事に夢中だった。

「おばああああああさああああああん!」

「ん?」

 今まで出したことがあるかないかくらいの大きな声でやっとお婆さんが食事を止め、佳一を見下ろす。

「おう、おまえか。まだ5日しか経ってないのによう来れたの?」

 5日も経ってたんだ…。やはり愛実さんの行動が救ってくれたんだな。

「早く元に戻してください!」

「分かった分かった。ほれっ」

 お婆さんは人差し指を佳一に向けると一気に視界は元の高さに戻った。

「にしてもよく来れたものじゃ。あたしはてっきり無理かと思ったが…。まぁいい。じゃあ早速本題に入ろうか」

「本題?」

「そうじゃ。ここから出るためのな。ここから出るには簡単じゃ。私に傷をつければいい」

「傷を?」

「おやおや、何だその言い方は。まるで簡単に出来そうな言い方じゃないか。まぁそう言えるのも今のうちじゃ。見た目で判断するなよ。あたしはこう見えても力はまだ十分有り余っておるからのっ!」

 お婆さんが言った直後、お婆さんは瞬間移動したように急に佳一の目の前に拳を見せる。佳一は何も反応できなかった。

「あたしをなめんじゃないよ。ここを出れた奴は前にも言ったがそういない。負けを認めた奴は皆この地で一生獣化して暮らしてるんじゃからのぉ」

 拳を下ろしたお婆さんは再び椅子に座り、運ばれた皿に盛ってある大量の卵を一気に飲み干した。

「飯はこっちで用意してやろう。いつでもかかってこい。私に傷をつけれるならな。因みにおまえは現時点で私に勝てる確率は0じゃ」

「く…」

「無理なら無理といつでもいっていいぞ。そしたらおまえを即獣化させてここで働かせてやろう。負けた時のために見ておくか?負けた後の元おまえと同じ人間共の生活ぶりを」

 お婆さんは笑みを佳一に見せると、立ち上がり、階段を降りていく。

「ほれっ、来いよ。特別に見せてあげてもいいぞ?」

「いいです…別に僕は降参なんていう言葉は絶対に言いませんから」

 佳一は強気だった。

「ほぉ~勝てる確率が0のおまえが何を言う?良いだろう。なんなら一回地獄を見せてやろう。着いてこい」

 お婆さんは別の階段を昇っていった。

 階で言うと4階くらいだろうか。しかしそこには4帖ほどのスペースしかない。

「ここでバトルじゃ」

「こ…ここで?」

 佳一は二人で少しの空間しかない部屋で戸惑う。ここでバトルって言われても…

「おまえ、別にこの空間で闘うんじゃないぞ?」

「えっ?」

ガチャ

 突然床が消えた。

「うわぁぁああああああ……」



「おい、目を覚ませっ」

 お婆さんの声で目を開けると、そこには岩が幾つもある広大な場所だった。上を見れば雲がゆっくりと流れている。

「ここは…」

「ここがバトル会場じゃ。それじゃあ早速始めるよ」

 佳一は起き上がり、剣を出す。

「先程も言ったが、おまえに地獄を見せてやる」

「大丈夫です。決して死ぬわけではないので」

「なかなか面白いことを言う奴じゃな。確かに死んでもらってはこっちが詰まらないからのぉ。数秒で勝敗(ケリ)をつけてやろう」

「別に構いません。僕は絶対『降参』とか『負けました』とかなんて言いませんから!」

「口だけは大したものだ。それじゃあ行くぞ!」

「お願いします!」

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