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人類獣化計画  作者: 夜舞崎 結季
◆別世界
18/28

第18話 別世界

悠真は獣化し、次第に不安になってきた佳一。そんな中、佳一のポケットが光り出した。取り出すと佳一はその宝石の中へと入っていった…

「ゆ、悠真!」

 佳一は悠真の両手両足を見る。明らか獣毛の面積が増えている。

ザワザワザワザワ

 獣毛は物凄いスピードで顔を残し、あっという間に体全体に生えた。それを俺はまた見る事しかできなかった。

「けい…いち」

 悠真は口を開き、小声で必死で喋る。

「どうやら…俺も…皆と同じ動物に…なっちまうみたいだな」

「んな事言うなよ!嫌だぜ?おまえまでなっちまうなんて!」

「大丈夫だ…俺が例えなったとしても…俺はおまえらを襲うような事はしないから……」

 悠真はにっこりと笑う。そしてこれが悠真が人間である最後の言葉だった。

ボキボキボキッ

 骨の軋む音と共に、悠真の体は沸騰のようにぼこぼこと膨らみ始める。皮膚は厚くなり、筋肉がつき始めた。骨格が変わり果てると、肌色の皮膚が黒く変色し始めた。顔まで変色が進むと、顔に変化が起き始めた。高い鼻は徐々に上から押されたように潰れ、歯は犬歯が発達する。頭が奇妙に盛り上がり、髪が抜け落ち、代わりに短髪な程の獣毛が生えた。

「悠真…」

「ウホゥ…」

 こうして悠真の獣化が終わった。悠真…いや、マウンテンゴリラは小さく鳴いた後、静かに眠る。千成は寝ていて気付いていないが、夜でもハッキリ見る事ができるサングラスをかけている佳一はその姿に衝撃を受けていた。

「おい佳一…さっきから何で悠真を連呼してんだ?」

「あ…いや、そのお~…ちょっとな」

 寝ていた千成が起きた。そして突然の質問に慌てる佳一。

「ちょっとなって…ちょっとがなんだよ」

 なかなか言わない佳一に千成は少し怒る。

「な、なんでもねぇよ。独り言だよ、独り言」

「激しい独り言だな佳一。まるで悠真が獣化したみたいな焦りだったぞ。ま、んなわけないか。アハハハ」

 千成は独りで笑い出す。そして佳一は千成の言葉に焦った。コイツの感鋭すぎる…と。

「佳一も寝ろよ」

「俺はまだ大丈夫だ。先に寝な」

「そうか。じゃ、おやすみ」

「おやすみ」

 千成は体を丸めながら寝る姿勢し入った。暫くし、佳一は寝ている二人に押入れから毛布を取り出し、それぞれに被せた。

 そして佳一は別部屋で綺麗な満月を眺めていた。

「ウオーーーーーーーーーーオオオォォォン」

「狼が鳴いてる…きっと元は人間だったんだろうなぁ」

 狼の鳴き声を聞きながら佳一は、安座をしながら更に独り言を言う。

「まさか悠真まで獣化するとは思わなかった…って事はあの犬に触った時点でカズにもきそうだな…結局俺は独りぼっちか。人間でいる時間(タイムミリット)はあと何時間だろう…」

 独りになるのが段々寂しくなり、目が潤い始める。

「結局俺は何も出来なかった…家族や亮大、そして悠真…俺は一体どれだけの人を見捨ててきたんだ!」

 情けない自分に急に苛立つ。壁を叩きながら、佳一の目は涙で溢れていた。

(佳一君…)

 涙が一向に止まらない佳一を廊下で絵梨香は聞いていた。

「大体何で人類を獣化させる必要があるんだよ!俺たちは何にもしてねぇじゃねぇか!人類がそんなに気にくわねぇのか宇宙人よお!」

(う、宇宙人!?)

 絵梨香はその言葉に驚いた。

「俺は何もできなかった。亮大を助けるために必死で頑張ったけど結局は助けれなかった。何もしてない亮大を俺は獣化させてしまったんだ…俺は人間として失格だ。俺なんて生きる価値なんてない。でも俺が死んだら皆は人間になれなくなる。何十億人の運命を俺は担っているんだ。でも俺は今は地球(ここ)にいる。宇宙人を倒すためにはどうすればいいんだ!」

 佳一は頭を抱える。

(佳一君…)

 絵梨香はこっそり部屋を覗く。すると、

(あれは何かしら?)

 佳一は気付いてないが、佳一のポケット部分が青く光っていた。

(なんだろうあれ…すっごい気になる…)

 青い光を見て、急にそれが何か知りたくなった絵梨香は、ばれないようにゆっくりと歩き出す。

「ん?」

(ヤバッ)

 佳一は気配を感じ、顔を上げた。

「なんだおまえか。ま、まさか今までの俺を見てたのか!?」

「……」

「見てたのか」

 絵梨香は頭を縦に小さく振る。

「やっぱり……ん?何だこれは?」

 顔を下に向けると、佳一もポケットが青く光っていることに気付いた。

「何だろう?」

 佳一はポケットに手を突っ込む。

「これは前に!」

 ポケットから取り出すと角のように尖がっている青い宝石みたいなものだった。

「これは懐かしい。確かセカンドミッションの時、洞窟で見つけたやつだ。ポケットに入れたまんま持ってきちゃったのか。まぁいいや。にしても綺麗だな」

 月に当てるとキラキラと輝いていた。何故かこれを見てると心が癒される。

「でもこんなのあっても何も変わりはしねぇし…」

 佳一は青い宝石を見ながら言った。すると、

ピカーーン

「うわっ!」

(なに!?)

 突然青い宝石が光り出し、光に包みまれるように佳一と絵梨香は宝石の中へと入っていった。

「うわぁぁあああああ!!!」

 佳一は青く光った円柱の中をひたすら落下する。円柱を抜けると今度は何故か空。佳一はどんどん落ちていく。

「死ぬぅぅぅうううううう!!!」

 風圧で顔が歪む中、佳一は死の危機を感じていた。下を見ると一面森になっていた。

「ヤバイ!ガチでヤバイ!」

 どんどん標高が下がり、木の天辺が間近に見えてきた。佳一は恐怖のあまり両手を目にあて、目を瞑った。

キキィィィイイイイイ

「……ん?」

 急ブレーキがかかったような音がし、佳一は左手を外し、左目を開けると、あと数センチで木の天辺にあたるギリギリの所で止まっていた。

「た…助かった…」

 何で止まっているのか分からないが取り敢えず一安心した。

 一方絵梨香はと言うと…

「ワウウウウウウウ!!!(イヤアアアアアアア!!!)」

 絵梨香も物凄いスピードで落下していた。その声は佳一の耳にも聞こえていた。

「何だ!?」

ドスン!

「グハッ」

ピキバキバキバキピキ

ドーーーン

 絵梨香は佳一の背中に乗り、佳一は枝葉の中を落ち、地面に落下した。

「ア…ア…アア……」

 佳一は俯せの状態で指をぴくぴく動かしていた。佳一は何か言いたそうに指を背中の方に指す。何故なら…

 絵梨香が乗っていたからだ。

「おい犬…重いからさっさと退け…」

「ワ、ワオン(ご、ごめん)」

 絵梨香は佳一の背中から降りる。そして佳一はゆっくりと起き始める。

「あ゛ぁ~苦しかった。防具を着ていて良かった~。脱いでたら即死確定だった…」

 あまり痛さは感じず、2階から飛び降りたくらいの痛さで済んだ。

「にしてもここは何処だ…」

 周りは辺り一面木々。方角が全然分からない。

「シャアアアアア」

「ん?」

 佳一は察知し、後ろを向いた。

「……え?」

 佳一は体が急に動かなくなった。というか恐怖のあまり動けなくなった。後ろを向くとそこには超巨大なヘビが顔を出し、舌を出し入れしながらこっちを見ている。

「で…でかい…」

 佳一の身長を遥かに超えるヘビ。体長は推定20メール。佳一は右手を背中に移動させ、剣をゆっくり抜き始める。しかしそれを見逃さず見ていたヘビは、

「シャアアアアア!」

 一鳴きすると一気に佳一に襲いかかる。佳一と絵梨香は避け、絵梨香は木の後ろに避難した。

(な、なにあのヘビ…いくらなんでもデカすぎるわよ)

 絵梨香は木の後ろから様子を伺う。佳一は試練(ミッション)で一応鍛えた剣術でヘビと闘っていた。

カン、カン、カン

「なんだこいつの皮膚は。全然刺さらねぇじゃん」

 攻撃を()けながら、佳一は果敢に攻撃をする。巨大ヘビはデカイせいか動きが鈍かった。これはチャンスかと思ったが、予想以上に分厚い皮でなかなか傷をつけれない。

「シャアアアアアア」

 ヘビは尻尾を使って、佳一を捕まえようとする。

「そんな鈍さじゃ、俺を捕まえる事はできねぇぜ!」

グチョ

「シャアアアアアア!」

「よっしゃ!」

 尻尾付近を刺すと、すんなりと入った。

バキバキバキ

 ヘビは痛さに耐えられず胴体を上げ、頭が枝や木に自ら(あた)る。

 剣が刺さっている箇所は今尚、血が流れている。ヘビはじたばたし出した。じたばた動くヘビは次第に体力が尽きだし、ヘビは更に動きが鈍くなった。それを確認した佳一は剣を抜き、もう一か所刺した。

ブシュウウウウウ

 血が吹き出し、剣は赤く染まった。そしてヘビは体力が尽き、動かなくなった。

「へへ、ざまぁみろだ」

 剣を抜き、佳一はヘビから離れる。

(す…凄い)

 絵梨香はあまりの凄さに茫然としていた。

 佳一は近くに流れていた小川で剣に付着した血を洗い流し、絵梨香の元へと歩く。

「それじゃあ行くか」

 佳一はそう言って、森の中を再び歩だした。




「なかなか面白い奴じゃないか」

 ヘビと佳一の闘いをモニターで、謎の人物が見ていた。

「まさかあのヘビを倒すとはなかなか面白い。このあたしを久々に楽しませるとは…なら今度は…」

 謎の人物は部屋を出ると、何か入った瓶を取り出してきた。

「へへへ。コイツを出してやろう」

 そいつは瓶の蓋を開けた。

ボン

 白い煙が出た後、黒い掌サイズの塊が出てきた。

「よし、おまえの出番だ。いってこい!」

 そいつは窓を開け、塊を投げた。地面に落ちた塊はぶくぶくと膨れ上がり、ある姿になった。

「いいぞワニちゃん。さぁさっさと人間を殺してきな!」

 ある姿とは、巨大なワニだった。そして巨大ワニは移動し、川の中へと入っていった。

「期待してるぞ。ワニちゃん」

 窓を閉め、謎の人物は再びモニターを見る。




「一体ここは何処なんだよ!」

 佳一たちは相変わらず森の中を彷徨う。

「まるで樹海みたいだ…」

 いくら歩いても辺りは木々。まるでずっと同じ所を回っているみたいだ。そんな中、

ザーーーーー

 耳を澄ますと、水の流れる音がする。佳一と絵梨香は音に向かって歩く。暫く歩くと崖が見えてきた。

ザーーーーー

「うわぁ、スゲェ」

 崖の端から見る景色。そこには高々と落ちる滝が見えた。落差は50メートルくらい、幅はおよそ20メートル。下を見ると霧が発生し、風と共に滝から発生するマイナスイオンが肌を伝う。

「こんな滝、初めて見た。もっと近くで見てみたいかも」

 間近で滝を見たい佳一は、回り道をしながら下っていく。

(ふふふ…来た来た)

 滝の下、川の水面から頭を出し、佳一、絵梨香を確認したワニはひっそりと川の中へと沈む。

 佳一達は霧の中に入る。数メートル先が見えない程霧は濃く、足元に注意しながら一番下まで下りる。滝の轟音がする中、上よりもマイナスイオンは更に強くなり、心地よい。

「ここにいると心が癒される気がする」

 両手を広げ、目を瞑る。体全体に行き渡るようで身も心も癒される。

(ふっ、馬鹿者め…)

 滝の下、川の中では、ワニが待機していた。

(なに!?)

 佳一がリラックスしている中、絵梨香は何か気配を察知し、周辺を見渡す。しかし霧で全く分からない。

(何かがくるかも…)

「ワン!ワン!」

 絵梨香は危険を察知し、佳一に知らせる。しかし滝の音を五月蠅くて、佳一の耳にまで届いていない。

「ワンワン!(佳一君!佳一君!)」

 絵梨香は何度も吠える。しかし佳一には届かない。

(この轟音の中で聞こえるわけがない。人間よ…貴様はここで死ね!)

 ワニはゆっくりと佳一に近づく。

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