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人類獣化計画  作者: 夜舞崎 結季
◆その後の地球
15/28

第15話 二人と一匹

この犬…もしかして…

「んあ…」

 悠真は目を覚ました。その声に千成は反応する。

「起きたか悠真。腹減ってるだろ?」

「カズ…俺…生きてるの…」

「ったりめぇだろ。頭逝ったのか?」

 携帯の光が唯一の灯りの中、千成は悠真が運んできた食糧の中からおにぎり1個とサンドウィッチを取り出す。

「ほら、食べないとまた倒れるぞ」

「あ…ありがとう」

 悠真は起き上がり、おにぎりの袋を外す。千成もパンを一つ取り出す。

「やっぱ食べるっていいな」

「…そうだな」

 薄明るい部屋で二人はある程度食事を済ませた。




 翌日。

「佳一ーーーー、亮大ーーーー」

「何処にいる?いるなら返事してくれーーーー」

 二人は亮大の家の周辺を歩きながら叫ぶ。

「カーカーカー」

「パオォォォン」

「ンモォォォオオオ」

 色んな動物が二人の耳に響く。それに苛立った千成は。

「ったくうるせぇなぁ。これじゃあわかんねぇじゃねぇか。てめぇら少しは黙れや!」

 千成は怒鳴った。しかし

「ワンワン」

「ヒヒィィィン」

「ウホウホ」

 動物は千成の声に反応したのか一斉に鳴きだした。

「おまえは何してんだ!余計五月蠅くなっちまったじゃねぇか」

「す…すまん」

 千成は反省した。

「とにかく今は動物なんか無視しろ!佳一と亮大を探すことだけ考えろ」

 悠真の言う通りに千成は瓦礫の山を覗いたりして二人を探す。



 探してから二時間経過。悠真は川付近を探していた。

「もしかしたら漂流しているかもしれん」

 悠真は川岸で何か漂流してないか探す。

「ん?」

 悠真は何かを見つけ出し、走り出す。近づくと犬(絵梨香)が顔を出しながら流れていた。

「い、犬だ」

 悠真は犬を助け出そうと試みるが川の流れが速すぎる。すると運よく浅瀬で犬は止まった。悠真は急いで向かう。

「意識がない。おい、大丈夫か」

 悠真は体を揺らす。すると犬は赤いリボンをしていた。

「赤いリボン…これ絵梨香のとそっくりだ」

 そんなことを思いながら意識が戻るまで体を揺らす。

「おい、どうした悠真」

 遠くで千成は言う。

「ちょっと来てくれ!」

「何で」

「いいから」

 千成は浅瀬を渡り、悠真の所に向かう。

「なぁカズ。このリボン絵梨香が付けていたリボンと似てないか?」

「う~ん言われてみれば確かに…って何で?」

「分からんのか?この犬、もしかしたら絵梨香の居場所を知ってるかもしれんだろ」

「でも違う犬だったら…」

「それはその時だ。いいからこの犬を運ぶぞ」

「えーーー、運ぶのお?」

「じゃあいい。俺が運ぶよ」

 悠真は犬を背負う。

「意外と重いなコイツ…」




 絵梨香は目をゆっくり開ける。

「ここは…」

 絵梨香はぼやけている視界で周囲を見る。

「そう言えば私、流されたんじゃ…」

 そんなことを思っていると

「おっ、気付いたみたいだ」

「ひ、人の声?」

 絵梨香は人の声に反応するかのように耳を傾ける。

「ホントか、良かったぁ」

 段々視界が回復し始めると目の前には二人の顔が映っていた。

「か…千成君と悠真君!」

 見覚えのある二人の顔に絵梨香は目を全開に開く。

グゥゥウウウウ

「あ…」

 突如絵梨香のお腹が鳴った。

「良かった目を覚まして。ほらお腹空いてるだろ?これでも食いな」

 悠真はサンドウィッチを指し出す。

 絵梨香は無我夢中にサンドウィッチを食べる。あっという間にサンドウィッチは無くなった。

「おまえ早いな。でも食糧があまりないからこれだけなんだ。わりぃな」

 しかし絵梨香はそんな事よりも…

「ワンワン!(千成君、悠真君!)」

 二人に気付いてほしいと必死で吠える。

 お願い…気付いて…

「なぁ…カズ」

「ん?何だ」

「この犬って…」

 絵梨香の思いが届いたのか、絵梨香は必死で吠える。

「私よ!絵梨香よ!」

「この犬って…人間の言葉解るのかな?」

「ワオン?(えっ?)」

 悠真の言葉に思わず驚く絵梨香。

「何言ってんだおまえ。犬なんて学習すれば解るだろ普通…」

「なんかやけにコイツ俺に訴えってるような気がするんだよ」

「そうそう!お願い気付いて!私は同じクラスの来井 絵梨香よ!」

 絵梨香は目で思いを伝える。それに対し悠真も絵梨香を見つめる。

ポトッ

「そうか!」

 悠真は閃いた。

「コイツまだ腹減ってるに違いない!さっきから気になってたんだよ口から出る涎」

「え?」

 絵梨香は無意識に涎を垂らしている事に気付かなかった。

「そうだよな。サンドウィッチじゃ腹空くもんな。やっぱきつかったか。ほら特別におにぎりやる」

 悠真は掌の上に袋から外したおにぎりを乗せる。

「ほら、これでラストだぞ」

「ダメだこりゃ…」

 絵梨香は仕方なくおにぎりを食べる。

「やっぱ腹減ってたんだコイツ。俺って犬語解るのかな?」

「バーカ。そんな簡単に犬語が解るかって。違う言葉でも言ってるんじゃないのか?」

「そうよ千成君!」

 絵梨香は千成の元へ歩く。

「ん?どうした?」

「お願い千成君!私は絵梨香よ!」

 ラストチャンスだと思い、絵梨香は脳で千成に伝えようとしている。

「もしかしてコイツ…」

 千成は目を閉じる。

「通じてるの?通じてるならお願い!」

 絵梨香も目を閉じる。互いに目を閉じ、絵梨香は伝え、千成は感じようとしていた。

「カ…ク…キ…エル?」

「ごめん…もう一回」

「カズ…ン。キ…エル?」

「カズ?もしかして俺の名前を知ってるのか?」

「あ…しは…くる…りか…」

「足はくるり?」

「あ…しは…くるいえ…か」

「くるい?来井絵梨香のことを知ってるのか?」

「ち…あた…は、くるいえりか」

「まさか!」

 千成は目を開く。

「おまえ…」

「ワン!」

「どうしたカズ?」

「コイツもしかしたら絵梨香かもしれんぞ」

「やっと通じたぁ」

 絵梨香はほっと一息吐く。

「マジ?」

「多分な…おまえは来井絵梨香か?」

「ワンッ!」

「ほら!」

「ほ…本当に絵梨香さんなの?」

 まだ信じられない悠真は尋ねる。

「ワン!」

 絵梨香は通じたことが嬉しかったのか尻尾を振る。

「このリボンは絵梨香のだったのか」

「にしても何で絵梨香さんが犬に?」

 二人は考える。

「あっ!」

 悠真が何か閃き、周りの動物たちを見る。

「ま…まさか…」

 悠真は恐れた。

「どうしたんだよ悠真?」

「もしかしてこいつら…前は俺らと同じ人間じゃないか…」

「うそ!」

「ワオン?(え?)」

「だってそうだろ?絵梨香さんが犬になってるならその可能性は十分ある」

「じゃあ何で俺らはならなかったのさ」

「それは分からない。運が良かったんじゃないか」

「じゃあ佳一と亮大もこの中にいるってこと!?」

「かもしれない…そうだ!」

 悠真は絵梨香に向かって話す。

「絵梨香さんなら動物たちの言葉が解る筈だ。できる?」

「できるよ!」

 絵梨香は顔を縦に振った。

「よし、じゃあちょっと探してきてくれ」

「ワン!(分かった!)」

 絵梨香は走り去った。

「俺らも探すぞ!」

「お、おう…」

 悠真と千成も佳一と亮大を探すことに。

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