第14話 その後の地球
話は佳一・亮大が宇宙人と共に去ってからの話です。
佳一達がUFOで飛び立ってから数時間後。人々は獣化され、店の食糧を食い漁ったり、草食動物は草を食べていた。
そんな中。
カタ…カタカタ…
倒れた家屋で何者かが埋まっている。
「あとこの足を抜ければ…」
必死で足を瓦礫から出そうとする。
「クソ…やっぱ駄目か」
諦めかけていたその時。
「ワンッ、ワンッ」
犬が隙間からそいつに気付き、ワンワンと鳴く。
「おぅわんこうじゃねぇか。なぁ俺を引っ張ってくれないか?」
犬にそう言うと犬は指示に従い、瓦礫の隙間を通り、そいつの服を引っ張る。
「グゥゥゥウウウ」
カタカタ…
「いいぞ、わんこう!」
徐々に足が抜けていく。
ガラガラ
「よしっ!」
完全に足が抜け、そいつは自力で瓦礫の外へと出る。
「助かったぁ。ありがとよわんこう」
頭を撫でると、犬は尻尾を振り始める。
「にしても…これは一体」
そいつは辺りを見る。まるでゴミの集積場のように家屋の瓦礫がそこらじゅうにあった。僅かながらにビルが建っているが、窓ガラスは割れ、今にも倒れそうな角度で何とか耐えている感じだ。そしてもう一つ…
「何でこんなに動物がいるんだ?」
動物園のようにあちらこちらに動物がいる。
「そうだ!皆に連絡を」
そいつは携帯を取り出し、ある奴に電話をする。
「プルプルプルプル…おかけになった電話番号は…」
「畜生出ないか」
携帯を閉じ、周辺を歩く。
「にしても一体どうなってんだ…」
瓦礫の上を歩きながらそいつは言う。
「あ!」
そいつは突然止まる。
「あれって…亮大の家じゃん!」
目の前にあったのは佳一が亮大の家に泊まりに行った亮大の家だ。1階部分には大きい穴が開いていて、今にも倒れそうなくらい亀裂がそこらじゅうにあった。
「亮大ーーー、亮大ーーーー」
そいつは大声で言う。しかし何も返事が来ない。そいつは亮大の家の中へと入っていった。階段を上がり、亮大の部屋に入る。
「いない…ん?誰のカバンだ?」
床には佳一が持ってきたカバンがあった。そいつはカバンの中身を見る。
「食糧も僅かに残ってる…誰かが亮大と一緒にいたって事か。だとすれば……佳一!」
こいつは以前カラオケで佳一・亮大と一緒だった同じクラスの高田 千成。千成は再び携帯を開き、佳一に電話をする。
プルプルプルプル
「出てくれ…」
カチッ
「おかけになった電話…」
「ダメか」
千成は暫く床に座っていた。
「んあ?ここは…」
別の場所で草原の中で倒れているのは同じく佳一達とカラオケに行った吉原 悠真だった。
風で草達が靡く中、悠真は起きた。
「こ…これは」
悠真が見た景色…それは町がある筈の場所に町が無く、瓦礫となった家屋の姿、そして多すぎるくらいいる動物の数だった。
「ど…どうなってんだ…これ」
悠真はただ驚く事しか出来なかった。
一方。
「オゥン(ここは…)」
校長室だった壁に赤いリボンをした犬に獣化していた来井 絵梨香が目を覚める。
「ワオン(痛っ)」
目の上が切れ、血が流れていた。
まだ人間の意識が残っていた絵梨香は起き上がる。
「ワオン!?(な、何これ!?)」
絵梨香も先程の二人同様、景色が変わった町に驚いていた。周りを見ると象やキリン、カンガルーや鹿がそこら中を歩いていた。
(どうなってるの?)
絵梨香は周辺を見ながら、ゴミとなった自分の町に不安と悲しみを思いながら歩く。
起き上がった悠真は食糧を探していた。
「にしても酷い…あの強風でこんなに…」
悠真はあまりの衝撃的な景色に驚きを見せるしかなかった。
「あっ」
コンビニの看板を見つけた悠真は突然走り出した。
「どけっ!どけっ!」
近くでネズミや猫が集まり、食糧を貪っていた。悠真は追い払おう。
「食糧…食糧…」
悠真は破片を退かしながら食糧を探す。
「あ!」
悠真はやっと未開封のおにぎりを見つけた。更に探すと、サンドウィッチやパンや栄養補助食品、飲料水などが見つかった。
近くにあった今にも取っ手が外れそうなカゴ3つに詰め、悠真は提げて歩く。
「これで…数日間は過ごせる…」
重たいカゴを持って数十分。悠真は壁に穴が開いているもの、雨よけには充分な一軒家を見つけた。
ドアを開け、悠真はカゴを玄関に置く。
「疲れ…た」
バタン
悠真はそのまま倒れてしまった。
「ん?」
その音を千成はしっかり耳でキャッチしていた。
「誰…まさか生存者か!?」
千成は階段を急いで降りる。そしてそこにいたのは…
「ゆ、悠真!」
クラスメートの悠真と確信した千成は悠真の体を揺らす。悠真が着いた場所は亮大の家だった。
「おい悠真!起きろ!おい!悠真!」
「その声は…」
悠真はかすれ声でゆっくりと瞼を開ける。
「か…カズ」
「しっかりしろ!死ぬんじゃねぇよ!」
「だ…大丈夫。ちょっと疲れているだけ…」
「ちょっと待ってろ!」
千成は悠真が持運んできたカゴの中から飲料水を取り出した。
「ほら!口を開けろ」
千成は手で口を開かせ、水を少しずつ悠真の口の中へと入れる。そして、体をゆっくり起こす。
「水を飲め!悠真」
悠真の顔を上に向け、水を入れる。
ゴク…ゴク…ゴク
悠真は少しずつ水を飲む。
「そうだ…少しずつ飲め」
1Lペットボトルの半分程飲んだ悠真はさっきより落ち着いた。千成は悠真を背負い、二階の部屋まで運び、寝かせる。
「良かった…仲間がいて…」
千成の目から大粒の涙が流れた。
一方絵梨香は瓦礫と化した町を歩いていた。
「よこせ…おまえの肉を」
「おまえこそ…さっさと殺して食ってやる」
何処からか声が聞こえる。絵梨香は身を潜めて声のする方を覗く。視線の先には大型犬のアイリッシュ・セターと中型犬のバセンジーが互いの目と目を合わせながら威嚇していた。
「俺に勝てると思うのか?俺はこう見えて、柔道日本代表だぜ?」
中型犬のバセンジーを見ると確かに普通の犬に比べ筋肉といい、体つきがいい。
「んなの知るか。俺だって陸上日本代表候補だ。すぐさま貴様を噛みきって殺してやる」
そう言うと、大型犬の方から襲ってきた。流石は陸上とあって速い。そして中型犬の背中を噛みつく。
「貴様、その程度で痛いとでも思ったか?」
「なぬ…」
血が出ている筈なのに中型犬は一切鳴かない。と言うか全然平気な顔をしている。
「それじゃあ今度はこっちから行くぜっ!」
「クオゥン!」
大型犬を地面に叩き、思いっきり背中に噛みつく。あまりの力に大型犬は悲鳴を上げる。
「ク…クソ…」
大型犬は痛さを我慢しながら振り払おうと胴体を揺さぶる。
噛み続けている中型犬は噛む力が次第に弱まり、大型犬が体を揺さぶる内に離す。噛んだ後には歯型がくっきりと残り、血が流れていた。
「今度はこっちからだ」
俊足を使い、中型犬の攻撃を避ける。
「逃げんじゃねぇ!」
中型犬は噛んでいくがどれも空振り。そして少し疲れを出し始めた中型犬に目を向けた大型犬はチャンスを狙いながら首の部分を噛む。
「ウワァァアアアアア!!」
鋭い牙が皮膚を貫き、筋肉まで牙は入る。あまりの痛さに中型犬は倒れて唸る。
「き…貴様などに…」
中型犬はもがく。しかし…
「これでどうだっ!」
「アアアアアアアアアア!!!」
大型犬は一回離したと思ったら再度噛む。中型犬は痛さに我慢できず叫ぶ。噛む力を強める程筋肉に牙が入る。血がじわじわと垂れる。
「ク…クソ…」
動きが鈍くなった中型犬は次第に声を発しなくなり、中型犬は目を閉じた。
「ざまぁみろ」
大型犬はそう言うと、ムシャムシャと食い始めた。
「う…」
それを見た絵梨香は思わず目を狭める。
「早く別の場所に行こ」
絵梨香は戻ろうと後ろを振り向くと…
「おまえ何してる?」
「あ…あ…」
後ろには口周辺が真っ赤になっているライオンがいた。
「何してる?それともあれか?俺の餌になってくれるのか?だとありがたいがね」
ライオンは涎をぽたぽたと垂らす。
「嫌…嫌…」
絵梨香は一歩ずつ下がる。
「逃げんなって。ここ5匹くらいオス犬ばっかで飽きちまったんだよ。たまにはおまえみたいなメス犬も食ってみたいぜ」
「来ないで、来ないで!」
絵梨香は走る。
「走ったって無駄だぜ。大人しく俺の餌となればいいものを…」
ライオンは絵梨香の後を追うように走る。徐々に距離が近くなる。その距離およそ60メートル。
「来ないで!お願いだから来ないで!」
絵梨香は僅かな通路を通ったりしたが、ライオンは飛び越えなどをして段々距離を縮める。
「逃げたって無駄だ」
距離は40メートル、30メートルと近くなっていく。
「これじゃあ私…食べられちゃう…」
走りながら何処か安全な場所を探していると目の前には濁流流れる川が流れていた。
「もう逃げられないぜ」
後ろを向くと既にライオンがいた。その距離およそ10メートル。
これじゃあ食べられちゃう…
濁流となってる川とライオンを見ながら絵梨香は焦り始める。
「さっさと俺の餌となりやがれってぇの」
ライオンは絵梨香に向かって飛ぶ。
「嫌!」
ボチャァン
絵梨香は避け、決死の思いで濁流へと飛び込んだ。
「クソ!あいつめ」
ライオンが戸惑ってる内に絵梨香は犬かきしながら泳ぐ。しかし川の流れが速く、絵梨香は流される。
「これはチャンス」
ライオンは絵梨香を川岸で見ながら漂流するのを待つ。
「ヤバイ…このままじゃ…」
絵梨香は川の流れにより、段々下流へと流れる。
「ヤバイ…疲れてきた…それに意識が…」
泳ぎ疲れてきた絵梨香は溺れそうになる。
「ダメ…だ…」
絵梨香は力尽き、濁流の中へと巻き込まれていった。
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