表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】聖女の双子の姉に転生しましたが攻略対象の様子がおかしい~妹のために動いたら、私が落とされました~  作者: 木風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/60

第四十六話 大切な、たった一人の

胸の奥が、きゅっとした。

言われて初めて気づく。

私はどこかで、ずっと『守らなきゃ』の視点で見ていた。


「マリアンナは私のことが大好きで、絶対に守ろうとしてくれてるなって、転生した直後からわかってた。実際その通りだったし」


セリアは一度だけ笑って、すぐに真面目な顔に戻る。


「でも私は——マリアンナに『守られる存在』としてじゃなく、『普通の姉妹』でいてほしかった」


その言葉が、胸に刺さった。

痛い。でも、正しい。


「だから、黙ってた。でも——いつかは言おうと思ってた。マリアンナが自分の気持ちにちゃんと向き合えた時に」

「それが、今夜?」

「マリアンナが『前世』って言ったから」


セリアが私の手を取った。

握り方が、強い。逃がさない握り方。


「教えてくれてよかった。やっと、全部話せる」

「……ごめんね、セリア」

「何が?」

「ずっと、セリアのことを『守るべき存在』として見てた。対等に見れてなかったかもしれない」

「マリアンナのこと、怒ってないよ」

「でも——」

「ただ」


セリアが少しだけ真剣な顔をした。

そこで初めて、ほんの少しだけ頬を膨らませる。

可愛いのに、怖い。


「私の気持ちを無視して、クロードルートに向かわせようとしてたのは、ちょっとイラッとした」

「……それは、ごめん」


私は素直に頭を下げた。

言い訳できない。言い訳したくもない。


「これからは、一緒に考えよう。私の未来も、マリアンナの未来も。二人で」

「……うん」

「私はマリアンナの最推しかもしれないけど、マリアンナは私の——お姉ちゃんだよ。大切な、たった一人の」


その言葉で、喉の奥が熱くなり、目の奥が、じわっと滲む。

泣くのは違う、と思うのに、止められない。


「……泣かないから」

「泣いていいよ」

「泣かない!!」

「泣き虫お姉ちゃん」

「泣いてない!!」


でも声が少し震えていた。

セリアが私の肩に頭を預ける。

髪が頬に触れて、くすぐったいのに落ち着く。


「今夜は長くなるね」

「うん」

「全部、話そう。マリアンナの前世のことも、私の前世のことも」

「……うん」


そうして夜は更けていった。

私たちはお互いの『前世』を話した。

似ているところ、違うところ。

どちらも日本で、ゲームが好きで、でも立っていた場所は少し違う。


私の前世は社会人のゲームオタクで、本編を廃人と言われるほどやり込んでいた。

セリアの前世は大学生のゲームオタクで、続編まで楽しんでいた。

時代は近いのに、微妙にずれている。

だから知っている情報量も、噛み合い方も違う。


セリアの口ぶりから……私と違って、前世ではちゃんと恋愛もしてきたのがわかる。

どおりで恋愛に関して、あんなに積極的なわけだ。


「転生のタイミングが違うから、知ってる情報量が違うね」

「私は続編の知識があるから、魔王のことがわかる。マリアンナは本編を隅々まで知ってるから、細かいイベントやフラグを把握してる」

「そうか……そういう意味では、二人で補い合えるね」

「そう!だからこれからは二人で連携しよう」


セリアのその言葉だけで、胸の奥が少し楽になる。

ずっと一人で抱えていた『地図』を、やっと共有できたみたいで。


「でも、セリアはそもそも『悲恋の運命』に乗らないつもりでいたんだね。最初から」

「当然!ゲームのセリアが可哀そうすぎて、私はそっちには絶対行かないと決めてた」

「じゃあ、クロードルートへの誘導も——私が勝手にやろうとしていただけで、セリアは必要としていなかった?」

「誘導は必要なかったよ。私、殿下とは普通に仲良くしてたし。でも恋愛対象として見るつもりはなかった」


そこでセリアが少しだけ目を細める。


「……まあ、マリアンナが最終的に好きになるとは思ってたけど」

「思ってた!?」

「だって——マリアンナ、初対面の頃から殿下の話をする時だけ目の輝きが違ったよ」

「初対面の頃から!!?」

「うん。私的には、マリアンナと殿下がくっつくのが自然だろうと思ってた」


私はしばらく絶句した。

あれだけ必死に隠していたつもりの感情が、最初から見抜かれていたのかと思うと、恥ずかしさで枕に顔を埋めたくなる。


「……じゃあ、ずっと」

「ずっと待ってた。マリアンナが自分で気づくのを」


セリアがにこっと笑った。


「やっと気づいてくれたね」

「……遅くてごめん」

「全然。これが最高のタイミングだよ」


どこかで鳥が鳴いた。

気づくと窓の外が、うっすら明るくなり始めていた。

夜明け前の青い光が、カーテンの隙間から部屋に滲んでくる。


「……徹夜したね」

「したね」

「今日の授業、居眠りしちゃうかも」

「眠いけど——なんか、すっきりした」

「うん」


セリアが大きく伸びをした。


「マリアンナ、学年末には殿下に会うんでしょ?」

「……手紙でそう書いた」

「ちゃんと向き合ってね」

「……うん」

「応援してる。全力で」

「ありがとう、セリア」

「どういたしまして、お姉ちゃん」


夜明けの光が、部屋に差し込み始め、二人で寄り添って朝を迎えた。

ブックマーク、★★★★★、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ