表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】聖女の双子の姉に転生しましたが攻略対象の様子がおかしい~妹のために動いたら、私が落とされました~  作者: 木風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/60

第三十八話 来なくていい、来なくていい、来なくていい

二年生の秋、クロードが王太子公務の一環として学院を視察に来た。

王族が定期的に学院を視察することは制度上決まっている。

分かっている。分かっているけど——正直に言う。


(来なくていい、来なくていい、来なくていい)


折角、頭が冷えてきたのに。

完全に冷えていたかというと怪しいが、手紙だけの交流より直接会う方が明らかに危険だ。

なのに、来てしまった。来るなと言っても来るのが王太子である。理不尽。


視察を終えたクロードが私を見つけて歩み寄ってきた時、八ヶ月ぶりの再会を「こんにちは」の一言で乗り越えようとした私の試みは、当然のように失敗した。

なぜならクロードが、最初にこう言ったから。


「久しぶりだね。元気そうで良かった」


ごく自然に笑いかけてくる。


(……成長した)


成長した、とは変な感想だ。

でも八ヶ月でクロードはまた少し大人びていた。

十七歳になり、子どもっぽさが完全に抜け、王太子としての風格が出てきている。

肩の線、言葉の置き方、周囲の空気の掴み方。全部。

なのに笑うと、相変わらず少しだけ素の部分が覗くのが——だめだ。


(やめろやめろやめろ)


私は自分の思考を強制終了させた。

今考えるべきはセリア。業務。安全。そう、業務。


「殿下、セリアも喜んでいましたよ。久しぶりにお会いできるということで」

「そうか。セリア嬢にも会いたい」

「では今から——」

「でもまず、マリアンナと話したい」

「……なぜですか」

「手紙の続きを話したい」

「手紙の内容は業務報告なので……」

「最後の方は本の話だったけど」

「……それは殿下が——」

「次のおすすめの本を持ってきてくれたら嬉しい」

「殿下の方が読書量はずっと多いはずですが」

「マリアンナが好きな本を知りたい」

「……」


私はしばらく無言になった。

喉の奥がむず痒い。顔に熱が集まる気がする。


(なんでそんなことを知りたいの!!)


心の中で叫んでも、外には出せない。

だから私は、できるだけ事務的な顔で頷いた。


「……わかりました。後で持ってきます」

「ありがとう。あと——」

「まだあるんですか!」

「セリア嬢との文通も始めたいんだけど、仲介してもらえる?」


(そっちも忘れてなかった!!よかった!!)


「もちろんです!!是非!!」


思わず声が大きくなった。

自分でも分かる。今のは『嬉しさ』が出た。

セリア関連だよね。そうだよね。


「……急に元気になったね」

「それが本来の目的ですから!!」


クロードが少し苦笑した。

苦笑なのに、どこか優しいのが困る。


「マリアンナにとっての本来の目的、か」

「……はい」

「そうじゃなかったら、マリアンナの目的は何だったんだろうね」


その言葉が、妙に意味深に聞こえて——私は本を取りに行く名目で、足早にその場を離れた。

背中に視線が刺さる。


「逃げた」と小声が聞こえた気がしたけれど、聞かなかったことにした。

ブックマーク、★★★★★、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ