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【完結】聖女の双子の姉に転生しましたが攻略対象の様子がおかしい~妹のために動いたら、私が落とされました~  作者: 木風


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第三十六話 妹のファーストダンス

私は固まった。

頭の中でアラームが鳴り響く。

王太子のファーストダンスは、ただのファーストダンスではない。

見られる。噂になる。意味を付与される。勝手に。


(このイベントはセリアのはず!クロードがセリアをダンスに誘うイベントのはず!!)


反射で、セリアのほうへ視線が飛ぶ。

セリアは目を丸くして、でも逃げずに、なんなら、少しだけ口元がゆるんでいる。


「あの、殿下。セリアのほうが——」

「今夜最初のダンスは、マリアンナと踊りたい」

「な、なぜ——」

「なぜ、か」


クロードが少し考えるような顔をした。

いつもなら、すぐに答えを出す人なのに。


「……マリアンナのためなら、理由は後からついてくる気がしてる」

「意味が——」

「踊ってくれる?」


翡翠色の目が真剣で、差し出された手がまっすぐで。

逃げ道がない。逃げたら、何かが壊れる気がする。


「お姉ちゃん。踊ってきて?」

「セリア……」


セリアが笑って言った。

背中を押す声じゃない。許可みたいな声。


「……はい」


自分でも驚くくらい素直な声が出た。

クロードが微笑んで私の手を取ると、指先が触れた瞬間、手のひらの温度が跳ねた。


フロアに出て、音楽が始まる。

リードは当然クロードの方が上手で、私は引っ張られるように踊っていた。

足がもつれないように必死なのに、視線だけは、どうしても彼の胸元あたりに留まってしまう。


「マリアンナ」

「……はい」

「緊張してる?」

「……少し」

「なぜ?ダンスは上手なのに」

「殿下が……その……」


言葉が続かない。

クロードが少し顔を近づけた気がして、私は反射で顎を引いた。近い。近すぎる。


「……私は、今夜の殿下のダンスのお相手はセリアになると思っていたので」

「なぜ?」

「セリアと殿下は……お似合いだと思うので」


だって私の脳裏には、あのスチルの記憶がある。

シャンデリアの光。ドレスの裾。セリアの横顔。クロードの手。

どう考えても、私とでは『あれ』にならない。なってはいけない。


「マリアンナは、そう思ってるんだね」

「はい」

「僕は違う考えだけど」

「……どんな考えですか?」


クロードが、しばらく黙った。

音楽だけが流れて、私の心臓だけが忙しい。


「今日はまだ、言わないことにする」

「なぜですか」

「マリアンナが受け止める準備が、まだできてないと思うから」

「受け止める——」

「踊ることに集中しよう」


そう言って、クロードが軽くリードを強めた。

私の足が半歩遅れて、でも彼はそれを許すみたいに、間を合わせてくる。


結局、クロードと三曲踊った。

一曲目のつもりが、終わったら『もう一曲』と言われ、二曲目が終わったらまた『もう一曲』。

断る隙がない。というか、断れる空気じゃない。


四曲目の前にようやく、私ははっとした。


(セリアが一人!!)


慌てて距離を作ると、クロードが当然のように言った。


「また踊ろう」

「……はい」


返事をしてしまった自分に驚きつつ、私はその言葉ごと心臓の奥に封印して、セリアのもとへ駆け寄った。


「セリア、一人にしてごめん……!」

「全然平気。楽しく見てたよ」

「え?」

「マリアンナが殿下と踊ってるの、すごく綺麗だった」


セリアがにこっと笑う。

その笑顔に、申し訳なさが少し溶けた。


「ねえマリアンナ」

「なに?」

「殿下に誘われて、どうだった?」

「……セリアも踊って来いって言ったじゃない。断れる雰囲気じゃなかっただけ」

「そうかな」

「そうだよ!」

「マリアンナ、嬉しそうな顔してるよ」

「……してない」

「してるってば」


ころころ笑いながら、セリアが私の腕を抱えた。

昔と変わらず、当たり前の距離。


「私のことは心配しなくていいよ。マリアンナが笑ってる方が、ずっといい」


その言葉が、心の奥に沁みた。

優しくて、残酷で、ありがたい。


(……本当に、受け止める準備が、できていない)

ブックマーク、★★★★★、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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