第三十話 天才魔術師の憂鬱
入学から二ヶ月が経った頃、私はエリオットとも接点を持った。
エリオット・ファルケンは、白金色の髪に紫の瞳という、見るからに『天才魔術師』な外見をした少年だ。
実際、魔術の才能は学年でも突出していて、入学早々から教師たちに一目置かれていた。
本人もそれを自覚している。……というより、隠す気がまったくない。
ただ、口が悪い。
悪いというか、棘に余計な装飾がついているタイプだ。
「ヴェルナー家の双子の片方か。聖女の姉だって?聖女の力がなくてもここにいられるのは、双子だからか?大した入学理由だな」
最初の会話がこれ。
さすが天才。煽りがうまい。
初手から喧嘩売ってくるのも才能なのかもしれない。
こっちの煽り耐性が無ければ、殴っていた。
「いいご指摘です。私が学院に来られたのは確かに家格のおかげです」
私は一度肯定してから、続けた。反論から入ると長引く。
「でも、魔術の力がなくても役に立てることはあると思っています」
「例えば?」
「計画を立てること、情報を整理すること、人をつなぐこと。力のある人が力を最大限に発揮できる環境を作ることも、誰かがやらなければならない仕事です」
言い終えると、エリオットはしばらく訝しげに私を見つめてきた。
まるで、そんな発想、聞いたことないとでも言いたげな顔。
「変なやつだな」
「よく言われます」
「褒めてない」
「知ってます」
エリオットが鼻を鳴らして立ち去っていく背中を見ながら、私は心の中でメモを取った。
——第一接触、成功。たぶん。少なくとも無視されていない。
エリオットルートのキーワードは『禁忌魔術』だ。
彼は純粋に力を求めるあまり、禁忌とされる『命を対価にした強化魔術』に手を出し、それがセリアとの悲劇を生む。
そして『禁忌』への関心が高まるきっかけになるのは、『強さへの焦り』と『自分に足りない何かへの渇望』。
エリオットが『禁忌魔術』に向かわないようにするためには——彼の『焦り』の原因を取り除くか、別の方向に発散させる必要がある。
ただし、今すぐは無理だ。近づきすぎたら、逆に火がつく。
(だから今は、観察)
エリオットとは今後も接点を持つ機会が増えるだろう。
ゲームの記憶では、彼はセリアに少しずつ惹かれていく過程で『強くなりたい』という気持ちを暴走させる。
なら、そこに『特別』を作らせない。作られる前に、薄くする。
セリアとエリオットが『二人の時間』を持ちすぎないように調整する。
クロードルート以外への深入りは、全部牽制する。それが私の役割だ。
少し心苦しい。
でも——他の攻略対象たちが傷つかないためにも、必要なことだと自分に言い聞かせた。
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