既読がつかない夜
午後十一時。私はスマホを握りしめていた。
「明日、会えますか」
送信してから三時間は経っている。だが既読がつかない。占い師なのに胸がざわつく。
メールの相手は二ヶ月前から通ってくれている常連さんだ。出会った当初は「仕事運を見て欲しい」と言っていたのに、最近は「先生とお話したくて」と来店する。
彼とは先週初めて食事に行った。
占い館で会う彼と、外で会う彼は少し違って見えた。少し照れていて、いつもより饒舌だった。
「また会いたいです」彼は帰り際にそう言った。
だから私はメッセージを送った。既読はまだつかない。
私はタロットカードを取り出した。
「自分のことは占わない」そのルールを破るのは今回で二回目のだ。
カードを引く手が震える。
出たカードは「月」「隠者」「吊るされた男」だった。
どれも、待つことを告げるカードだった。
「そんな…」私は凄く悲しくなった。
やっぱりまだ既読にならない。
嫌な想像だけが、膨らんでいく。
午前一時。こんな気持ちで寝れる理由はない。紅茶を淹れた。紅茶を一口飲んで、ふと窓を見る。夜空に丸い月が浮かんでいた。
そういえば、彼は、写真が趣味だと言っていた。
その時スマホにメッセージが届いた。
「今夜、満月だったから撮影しに行ってた。連絡遅れてしまい申し訳ない。僕も明日会いたいです」
メッセージと共に撮影した写真も添付されている。とても美しい。私はタロットカードをもう一度見返した。
「月」は満月。「隠者」は一人の時間。「吊るされた男」は、視点を変えること。カードに答えは出ていたのだ。ただ、私が気づかなかっただけ。
「明日、楽しみにしています」私は返信した。
不安な夜を超えるのは、占いよりも、しんじるこころかもしれない。
満月は私の味方をしてくれた。
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