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第21話 黒澤大輝とあんずちゃんの出会い

「俺の初恋は幼稚園の頃かな。相手は同い年位の女の子で名前はあんずちゃんて言うんだ」


当時の事を思い出しながら俺は杏奈に初恋の事を話はじめた。何の脈絡もないかもしれないが今の杏奈を見て俺の話を聞いて欲しいと思ったんだから仕方ないじゃないか。

杏奈が何も言わないので俺は話を続ける。


「初めて会ったのは近所の公園だったかな。

当時の俺は泥団子を作るのにハマっててさ、その日も泥団子を作るために1人で公園に行ってたんだよ」


多分テレビか何にかでやってるのを見たんだろうな。あの時は暇さえあれば狂った様に泥団子を作ってた気がする。


「それで夢中になって泥団子を作ってたんだけど気がついたらベンチに女の子が1人で座ってたんどよな。普段はあんまり人がこない公園だったからビックリしたのを覚えてる」


そう本当にビックリしたんだよな。いつも公園には俺1人だったから。まさか人がいるなんて思ってなかった。


「最初は気にしないようにして泥団子を作ってたんだけど、その子がずっとこっちを見てくるから声をかけたんだ」


『よかったら一緒に泥団子作る?』


「俺は泥団子を見せながら誘ったんだけど、

その子は俺の持っていた泥団子を叩き落としたんだよ」


あれにはさすがの俺も驚いた。無言でイキナリ泥団子を叩き落とすんだもんな。しかも結構キレイに出来てた自信作だったからショックで俺はその場から動けなかった。


「それでその子はそんな俺を見て何も言わずに走り去って行ったんだよ。それがあんずちゃんとの出会いだった」


ここまで無言で俺の話を聞いていた杏奈だったが、あんずちゃんと初めて出会った日のことを俺が話し終えるとようやく口を開いた。


「なにその出会い。その子、最低じゃん」

「当時の俺もおんなじ事を思ったよ。お気に入りの泥団子を叩き落とすとか悪魔かよ!って」

「それがとうやったら初恋になるの?今の話だけだと好きになる要素ないじゃん」


ほんと俺もそう思う。あの時はかなり怒っていたのだ。もしかしたら人生で一番怒ったかもしれない。なのに俺は彼女の事を好きになった。


「家に帰ってからさその話を母さんにしたら逆に怒られたんだよな」

「大輝が?」

「そう俺が怒られた。『泥だらけの手で女の子を誘うなんてあんたが悪い』って言われたよ」

「めっちゃ理不尽じゃない?」

「かもな。でもその時の俺は確かにって思ったんだよ。多分今よりも素直だったんだろうな」


母さんに言われて俺は泥だらけの手で誘った自分が悪いと思ったんだよな。その時には泥団子を叩き落とされた事への怒りなんて無くなってどうやってあの子に謝ろうかって事ばかりを考えていたのだ。


「それで次の日にその子に会いに公園にいったんだよな」

「泥団子を叩き落とされたのに?」

「そう!叩き落とされたけど会いにいったんだよ」

「何それ。それで?」

「その日は会えなかったんだ。彼女は公園にこなかったんだよ」


それから俺は彼女に会うために毎日の様に公園に通うようになっていた。それまで必死に作っていた泥団子になんか目もくれずに、彼女が来るのを待ち続けていたのだ。


「毎日公園に行ってたんだ」

「毎日行ってた。何でそんなに会いたかったのか今考えるとよく分かんないだけどな」


ほんと何であんなに会いたかったんだろうな。

自分でもよく分からないけどそうしたかったんだから仕方がない。


「それで1週間経った頃にようやくその子に会うことが出来たんだよ」


その日もいつも通り公園に行くとベンチに彼女が座っていたのだ。やっと会えた事で俺のテンションは上がっていたので足早に駆け寄った。


「でもその子は泣いてたんだ。ベンチに1人で座って声も出さずに泣いてたんだよ」


泣いている姿を見て俺は動くことが出来なくなっていた。でも同時に何かこの子の為にしてあげたいと強烈に思ったのは忘れない。


「その時にさ母さんに言われた言葉を思い出したんだよ」

「女の子に泥団子ってやつ?」

「そうそれ!それで俺は女の子には花だろって思ったんだよね」


ほんと今考えると安直すぎて恥ずかしくなる。

それでも俺は近くにあった花を何本か摘んで彼女に差し出したのだ。俺と友達になろう!

そう言いながら。


「その子はビックリした顔をしてたけど花を受け取ってくれたんだよ」

「今度は叩き落とされなかったんだ」

「叩き落とされなかったね。もし叩き落とされてたら俺も泣いてたかもしれないな」

「ふふっ、叩き落してたら大変な事になってたんだね」

「ほんと叩き落とされなくて良かったよ」


これが俺とあんずちゃんの出会いで俺達が友達になったきっかけなのだ。

最初はあんずちゃんも戸惑っていたけど話して行くうちに仲良くなって帰る頃にはすっかり仲良くなっていた。別れる時に次の日も会う約束をするくらいにだ。


「そこからは毎日の様に一緒に遊んでたよ。

それで色々と話してるうちにお互いの家が近い事が分かってさ。そこからは公園だけじゃなくてお互いの家で遊ぶようになったんだよな」


あんずちゃんの家よりも俺の家で遊ぶ方が多かったからかいつの間にか母さんと仲良くなっていたのには驚いたけどな。


「それって幼馴染だよね」

「確かに!今思うとそうなのかもな!」


杏奈の言葉を聞いて俺はようやく彼女との関係に名前を付けることが出来た気がした。

そう俺とあんずちゃんは幼馴染だったのだ。


「それでそこからはどう初恋になるの?」


そうまだ出会いを話しただけだった。

俺が彼女のことを意識するようになったきっかけがあるのだ。

俺はそれを話し始めるのだった。

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