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第20話 ギャルとコインランドリーと独白

「何か前に杏奈が言ってた通りだよな」


俺が横に座っている杏奈に話しかけると杏奈は不思議そうな顔をしながら首を傾げている。


「何のこと?」

「ほら前に言ってただろ?女の子は思ってるよりも強いって。今日の姫川を見ててそう思ったんだよな」

「確かに言ったけど、はしょり過ぎでしょ」


杏奈は俺が何を言いたいのか分かったようだが呆れた顔をして俺の説明不足を指摘する。

まぁ確かに今のは言葉足らずだったな。だから説明が下手くそだと言われるんだろう。


「でもあんなに強い子だとは思わなかったな」


俺が1人で納得していると杏奈がポツリとそんな事を呟いた。それは多分独り言なんだろうけど2人しかいないコインランドリーだと簡単に俺の耳に届いてしまう。


「もうちょっと取り乱したりすると思ってたのか?」

「ううん。そもそも告白するって思ってなかったんだよね」

「それは中城先輩と観覧車に乗ったからじゃないのか?」

「それがあったとしてもだよ」


杏奈には遊園地での中城先輩とのやり取りは伝えている。何となくそうした方が良いと思ったからだ。俺の話を聞いた杏奈は


『なんか思ってたより2人とも強いよね』


そんな風にさっきと同じ様な事を言っていた。

その時の顔が何処か羨ましそうな顔をしているように見えたのだが、姫川の話をしている時もその時と同じ顔になっている気がする。


「何でそう思ったんだ?」


俺は杏奈に聞いてみたが杏奈は何も答えなかった。会話の無くなってしまった俺達の代わりにゴウンゴウンという洗濯・乾燥機が回る音だけが響いている。ぐるぐると回る洗濯物を見ながら何て声をかけようかと考えていると杏奈が口を開いた。


「私に似てると思ってたんだよね。今の関係に甘えて踏み込むのを怖がってるんだって思ってたの」


それは俺に話しかけるというよりも独白のように感じたので俺は無言で続きを促す。


「自分の気持ちには気付いて欲しいくせに、肝心な事は言わずに本当の自分は隠しちゃうの」


杏奈は俺の方を見る事なく真っ直ぐ前を向いたまま話を続ける。


「無くなっちゃうのが怖いんだよね。自分の気持ちを伝えても望んだ結果にならなくて、そのせいで今までの関係とか積上げて来たものとかそういうのが無くなるのがさ」


「だから今の関係に甘えるの。本音とか伝えないといけない事を隠して甘えるんだよ」


「そういうところが私に似てると思ってたんだけど全然違った。麻由子はちゃんと強かったんだよね」


「麻由子は傷つくのが分かっててもちゃんと向き合ったんだよね。私とは全然似てなかった。ズルいのは私だけだったんだよ」


そう言うと杏奈はようやく俺を見るがその表情はいつもと違ってとても弱々しかった。

こんな杏奈を見るのは初めてだ。


姫川が自分と似ていると思っていたけどそうではなかった。そう言っているがそれだけでこんな顔になるはずがない。それにさっきの話は恐らく杏奈自身の事なんだろうな。


そしてそんな風に思わせている原因は他でもない俺なのだ。ほんと自分のヘタレ具合が情けなくなってくる。もう少し早くに伝えておくべきだったと後悔しかない。


「俺の話を聞いてくれるか?」

「急にどうしたの?」


杏奈は俺の言葉に困惑している。あんな話をしたあとに急に俺の話を聞いてくれとか意味が分からないものな。困惑するのも頷ける。

どうやらこんな時なのに俺の説明下手が発動してしまったらしい。ほんと締まらないがそんな事を気にしている場合ではない。


「俺の初恋の話なんだよ」


俺の言葉に杏奈が分かりやすく身体を揺らす。

そして俺の方に改めて向き直り姿勢を正した。

その表情は真剣なのでどうやら話を聞いてくれるようだ。


そして俺は杏奈に話し始めるだった。

初恋の人であるあんずちゃんの事を。

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