第16話 混ぜるな危険!再び
「分かるわ〜!あいつそういう所あるよね」
「そうなんですよ!」
「麻由子ちゃんも大変だよね」
「千代さーん!」
俺は目の前で繰り広げられるやり取りを見ながら唖然とするしかなった。あれから俺達の席に座った尾上さんはあっと言う間に姫川の心を掴んでしまい今ではこの通りである。
2人が話しているのはもちろん中城先輩の事であり、姫川の愚痴を尾上さんが聞いているうちにすっかり懐いてしまったようだ。
しかも何故か久慈川までもが尾上さんに懐いてしまっていて一緒になって盛り上がっている。
「何だか予想外ですね」
「そうだな。俺もそう思ってた」
杏奈が俺にそっと話しかけてきたのだが、かなり驚いているようだ。もうちょっとギスギスした感じになるかと思ったんだけどな。
「これは喜んでいいんでしょうか?」
「分からない。でも今のところ悪いことにはなってない感じだよな?」
「そうだと思います」
尾上さんが杏奈の従兄弟だと言うことも姫川はアッサリと受け入れた様だしこれはこのまま中城先輩への愚痴で終わるのかと思っていると
「私、智くんをデートに誘おうと思ってるんですよ!」
姫川が先ほど俺達に向かってした宣言を尾上さんにも言い出した!
「デートねぇ」
「はい!そうなんです!」
「やめといた方が良いんじゃない?」
「え?」
先ほどまで意気揚々と話していた姫川の動きがピタリと止まってしまった。まさか反対されるとは思っていなかったようだ。
そしてそれは俺達も同じだった。やっぱり尾上さんは中城先輩の事をそんな事を考えていると
「麻由子ちゃんとデートなんてあいつには勿体ないんじゃない?」
ん?何か思っていた話の方向とは違う感じだ。
姫川もとまどっている。
「で、でも」
「それに今のあいつなら多分普通に遊んで終わりになるわよ」
「確かにそうかもしれませんけど!」
「だからね、私たち全員で遊びにいかない?」
「全員でですか?」
「そう全員でよ」
そう言うと尾上さんは俺と杏奈の方を見て笑ったのだが俺は思わず身震いしてしまった。
「それであいつが舐めた真似しそうなら私たちが注意してあげれるでしょ」
「千代さーん!」
「おお!それはいい考えかも!」
姫川と久慈川は尾上さんの考えに賛同しているが俺はそんな気になれなかった。
だって明らかに尾上さんは何かしようとしているんだもの。それが何か分からないから俺は怖くて仕方がないのだ。
チラッと杏奈を見ると俺と同じ様な事を事を考えているのか固まっている。
しかしそんな俺達を置いてけぼりにして話はドンドン進んでいく。
「どこに行きましょうか?」
「遊園地とかどうよ!」
「そういや大輝が行ったって言ってたわね」
「私と杏奈と行ったんです!」
「それ聞いて私も行きたかったんだよね」
「なら遊園地でいいじゃない」
「「やったー!」」
「杏奈も大輝もいいわよね?」
尾上さんにそう言われた俺達2人は無言で頷く事しか出来なかった。だってめっちゃ怖かったんだもん!
こうして俺達はまた遊園地に行くことが決まってしまったのだった。
「今日はありがとうございました!」
「またお茶しに行きましょう!」
「いつでも連絡していいわよ」
姫川と久慈川はそう言うとご機嫌で帰って行ったのだが残された俺と杏奈はそうではない。
だって尾上さんも一緒にいるからだ。
2人が見えなくなった所で杏奈がようやく口を開いた。
「千代姉!どういうつもりなの!」
「なにがよ?」
「あんな事勝手に決めたじゃん!」
「別に勝手じゃないでしょ?2人も喜んで行くって言ってたし」
「引っかき回してるだけじゃん!」
どうやら杏奈は怒っているようだ。
まぁ確かに引っかき回している様に見えるよな。尾上さんの意図が分からないから何とも言えないのだが。
「先に言っとくけど私、あの子の事嫌いじゃないから。というか気に入ってるからね」
「そうなんですか?」
俺は思わず聞いてしまった。てっきり中城先輩に纏わりつく悪い虫位に思ってるのかと思っていたので意外すぎる。
「そうよ!健気でいい子じゃない!」
「そうだよ!だからそっとしといてよ!」
「そっとしといたらあの子が傷つくわよ」
その言葉に俺と杏奈は何も言うことが出来なくなってしまった。そんな俺達を見た尾上さんは大きなため息をつくと
「私ね腹が立ってるのよ!あのバカに!」
そんな事を言い出したのだ。さっき感じた怖さは怒っていたからのようだ。
「だいたいこんな事になってるのは全部あいつのせいでしょ!」
「そうかもしれないですけど」
「あんなやつ擁護しなくていいわよ!」
「それと皆で遊びに行くの関係ある?」
「あるわよ!1回痛い目見ないと分からないのよあのバカは!」
やっぱり何かするようだ。それが怖いんです!なんて今の状況で言えるはずがないんだけど。
「それを見てあの子も1回ちゃんと考えた方がいいのよ」
そう言うと尾上さんは杏奈の頭を撫でだした。
その目はとても優しい目をしていた。
「だから安心しなさい。悪いようにはしないからね」
「分かった」
杏奈は渋々ながらもそれを受け入れたようだ。
まぁどっちにしろ俺達は巻き込まれることに変わりはないんだろうな。そんな事を考えていると尾上さんに睨まれてしまった。
その目は「あんたもちゃんと考えなさいよ!」そう言われているような気がしたのだった。




