第15話 姫川の決意と突然の出会い
「えー!気を使わなくてよかったのに!」
「ねぇ!でも桃子ちゃんの気持ちは嬉しい!」
久慈川と姫川に桃子からの預かり物を渡したのだが2人ともご機嫌である。これだけ喜んで貰えれば桃子も本望だろうよ。
「あとこれは姫川のご両親に渡してくれ」
俺は姫川の両親用のお礼も渡した。
こっちは母さんからだったが何となくそれを言うのが恥ずかしかったので言わなかった。
「わざわざありかとう!渡しておくね」
そう言って姫川は受け取るとさっそく中身を確認しだした。ほんとこいつは!
「大輝ってそういうとこ意外とキッチリするんだね?」
久慈川が意外そうな顔をしている。まぁ母さんに言われたからだけどな。俺だけならやらなかったかもしれないし。そんな事を考えていると
「大輝くんのお母さんがしっかりした方みたいですよ」
「へぇー!そうなんだ」
杏奈がしれっと母さんからだと暴露した。
俺は思わず杏奈を見るが知らん顔されてしまった。
「黒澤くんのお母さんなのにしっかりしてるんだね」
「お前は人んちの母親を何だと思ってんだよ」
「だってねぇ」
最近、姫川の俺に対する扱いが雑になってきている気がする。これは決して気の所為ではないはずだ!
「大輝のお母さんてどんな人なの?」
久慈川が興味津々で聞いてくる。
自分の母親の事なんかあんまり話したくないんだけどな。
「まぁ何て言うか礼儀にだけはうるさい人だよ」
「厳しいってこと?」
「いや別に言葉遣いとかを注意されたりとかじゃないんだよな。謝ったりとかお礼を言ったりとかそういう基本的なところだけなんだよ」
「へぇ〜!」
「それ以外は何ていうか大人になった桃子って感じだよ」
「やっぱり桃子ちゃんはお母さん似なんだ!」
「まぁそうなるな」
割と母さんもノリで生きてるところがある。
だからこうやって一人暮らしさせてもらえているんだけど。
「そう聞くと大輝くんのお母さんって気がしてきませんか?」
突然、杏奈がそんな事を言い出した。
そんな似てるとは自分で思わないので俺は首をひねってしまう。
「大輝くんてお礼はきちんと言いますし、悪いと思ったらすぐに謝るじゃないですか」
「確かに!」
「黒澤くんそういう所は素直だよね」
杏奈の言葉に久慈川と姫川が頷いているが、
改めて言われると恥ずかしくて仕方がない。
「そう言うところも私は素敵だと思いますよ」
そう言って杏奈が微笑むので俺はついに耐えきれずにそっぽを向いてしまう。
そんな俺を見て久慈川と姫川がニヤニヤしているが言い返す事ができない。
「そう言えばあれから例の先輩にあったの?」
久慈川が思い出したように言い出した。
すると案の定、姫川が食い付いてくる。
「そう!智くん何か言ってた?」
「まぁ取り敢えず桃子がタックルした事は謝ったけど、それ意外は特に何にもなかったかな」
嘘は言っていないが本当の事も言っていない。
何も言わなかったというよりは言える状況では無かっただけなんだが。
「そっかぁ」
それを聞いた姫川は落胆したのか机に突っ伏してしまった。それを見てるとちょっと可哀想になってくる。
「麻由子は会ってないの?」
「会ってない〜」
久慈川の問いかけにも顔を上げない。
相当ヘコんでるみたいだな。
俺達は思わず顔を見合せてしまう。
「ねぇほんと何にも聞いてないの?」
「何にも言われてないんだよ」
「でもこのままにはしておけませんよ?」
「そうだけどさ」
机に突っ伏している姫川を見ながら俺達はコソコソと話をするが具体的な解決案がでてくる事はない。かと言って俺がここで何か言うのもおかしいしな。そんな事を考えていると
「決めた!」
そう言って姫川が突然顔を上げたのだ!
「決めたってなにを?」
久慈川が恐る恐る聞いてくれた。
姫川は俺達の方を向くと
「智くんをデートに誘う!」
そう力強く宣言した。まじかよ?俺はそう思ってしまったのだが姫川の目は真剣だった。
「デートに誘って私を意識してもらう所から始めないと!」
「それは良いと思うんだけどいきなりデートに誘うの?」
「うん!誘う!」
「落ち着いて下さい。ヤケになっていませんか?」
「大丈夫!なってないから!」
確かに姫川の言う通りヤケになっている感じでは無さそうだ。それでもイキナリだと失敗しそうで怖いんだが?そんな事を考えていると
「あれ?大輝と杏奈じゃん?何してんのよ」
聞き慣れた声が後ろから聞こえて来たので俺は振り返るとそこには尾上さんが立っていた。
「誰?知り合い?」
久慈川が不思議そうに聞いてくる。
何て説明しようかと悩んでいると杏奈が俺より先に説明してくれた。
「大輝くんのバイト先の先輩で私の従兄弟になります」
「まじで?」
久慈川は驚いているが俺も驚いていた。
従兄弟なの言うとは思っていなかったからだ。
姫川も立ち上がったまま固まっている。
「あれ、その子前にバイト先に来た子?」
そんな姫川に尾上さんが気付いてしまった。
まじかぁこれどうなるんだろうか。
尾上さんは俺達を見回すと
「なるなほどね。ちょっとお姉さんとお話しよっか?」
そう言って不敵な笑みを浮かべるのだった。




