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第10話 夏の視線にご用心

「本当によかったのか?」

「うん、別に今聞くことじゃないしね」


俺の問いかけに姫川はあっさりと答えた。

あれから中城先輩と少し話をしたのだが、どうやら大学のゼミ合宿とやらで海に来ているらいしく集合時間に遅れるからと戻って行った。

歩いている中城先輩の後姿を見ている表情はどこかスッキリしているので聞かなかった事に後悔はないんだろうな。


「麻由ちゃん大丈夫?あとごめんなさい」

「大丈夫だよ!桃子ちゃんもありがとね」


桃子は心配そうに姫川の手を握っている。

謝っているのはタックルをした事に関して桃子は杏奈からしっかりとお叱りを受けて、二度と人にタックルしないと約束さられたからだ。

でも姫川も桃子に悪意がなかったのは分かっているから桃子の頭を撫でている。


「何かお腹空いてきちゃった!」


突然、久慈川が大きな声で空腹を訴えだした。

たぶん空気を変えようと思ったんだろうな。


「焼きそばならあるぞ」

「そういや大輝に買いに行かせたんだった!」

「言い方!俺は自分で行ったんだよ」

「自分からパシリになるなんて、さすが大輝!

やるじゃん!」

「パシリじゃねぇよ!」

「大輝くんはいつから絵理の召使いになったんですか?」

「召使いってなんだよ!なってないから!だからそんな目で見ないで!」

「アハハハッ!」


無茶苦茶、言い出した久慈川に俺は思わずツッコむと杏奈が乗っかってきた。そんな俺達のやり取りを見て姫川が声を出して笑っている。

それだけ声を出して笑えるなら本当に大丈夫そうだな。


「笑ったら私もお腹空いちゃった。黒澤くん焼きそばちょうだい!」

「ほらよ」

「私も〜!」


こうして色々あった俺達は少し遅めではあるがようやく昼食をとる事ができたのである。


「やっぱり海といえば焼きそばだよね!」

「ね〜!美味しかった!」


そう言って久慈川と桃子はその場に揃って寝転んでしまった。その拍子に羽織っていたラッシュガードがめくれてお腹が見えてしまった。

チラッと見えるお腹だけでなくスラッと伸びている足にも俺は思わず釘付けになってしまう。


「2人ともお行儀がよくないですよ」


杏奈が久慈川と桃子に注意したことで俺は久慈川のお腹から慌てて意識を戻す。


「あんまり無防備だと誰かさんみたいにイヤらしい目で見られますからね」


どうやら久慈川のお腹を見ていた事はバレバレだったようだ。杏奈が凄いジト目で俺を見てくるのでそっと目を逸らす。


「大輝も男の子だねぇ〜!」


久慈川がニヤニヤしながら嬉しそうに俺を見てくる。くそ!久慈川にも気付かれてしまった。


「お兄ちゃんのスケベ!」

「黒澤くん言われてるよ!」


桃子がスケベと言い出したので姫川までニヤニヤしながら俺を見てくる。結局全員に知られてしまったじゃないか!

俺だって健全な男子なんだからそれくらい許してくれてもいいじゃないか!そう思ったがそんな事など言えるはずも無かった。しかも妹にはスケベとまで言われてしまっては大人しくする事しか出来ない。


「大輝は私のお腹を見た罰としてかき氷を買ってくるよーに!」


久慈川は調子に乗ってそんな事を言い出した。


「あっ!私もかき氷食べたい!」

「お兄ちゃん私も!」


久慈川の提案に姫川と桃子まで乗ってきた。

いつもなら突っぱねるのだが、杏奈の視線もあって何となくこの場に居づらかった俺は久慈川の提案を了承する。


「分かったよ。かき氷でいいんだな?」

「おっ!いつもより素直だねぇ」

「うるさい!杏奈もかき氷でいいか?」


俺が杏奈に声をかけると口を突き出してソッポを向いてしまった。思ったより怒っているみたいだ。そんな俺達を見た久慈川と姫川は2人で顔を寄せ合って何やら話をすると手招きして杏奈を呼び寄せる。そして桃子まで加わって4人で何やら話をし始めた。でたよ密談!

すでに何度も経験してきたので何となくこのあとの展開が読める。そして密談が終わると


「仕方ないので私も一緒に行きますよ」


俺の予想通り杏奈がそう言い出したのだ。

まだちょっと口を尖らせているので完全に納得はしていないようだけど。それにしてもほんと密談すごいな!まじで何を話しているのか知りたくなってきた。


こうして俺と杏奈の2人で昼食の時と同じく買い出しに行くことになったのである。

ほんと久慈川は友達思いなやつだよ。

俺は改めてそう思うのだった。

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