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第9話 久慈川と不憫な中城先輩

桃子のタックルによってその場に倒れ込んだ中城先輩を見た俺はすぐに駆け出したのだが、俺が到着する間に桃子は足元の砂を掴むと


「麻由ちゃんをイジメるな!」


そう言いながら手に持った砂を中城先輩に投げつけたのだ。俺は慌てて後ろから桃子を抱き上げてこれ以上何も出来ないようにする。


「桃子!なにしてんだよ!危ないだろうが!」

「お兄ちゃん離して!邪魔しないでよ!」


俺に抱き上げられた桃子はそう言って暴れていいる。流石に小学生に暴れられるとキツイ!

何とか桃子の視界に中城先輩が入らないように体の向きを変えると杏奈達が駆け寄って来るのが見えた。


「桃子ちゃん!」

「杏奈ちゃん」

「そんな事してはいけません!危ないでしょう!」

「だっでぇ〜!」


桃子は杏奈に注意されたとたん大声で泣き出してしまった。お前が泣くのかよ!

俺にしがみついて泣いている桃子を俺は何とか引き剥がして杏奈に預ける。


「ごべんなざーい!」

「はい。ちゃんと謝れて偉いですね」

「まゆぢゃんもごめなざーい!」

「ううん。私の為にありがとね」


杏奈と姫川に抱きついている桃子を見て大丈夫だと判断した俺は中城先輩の方を見るとちょうど起き上がっていたので声を掛ける。


「中城先輩?大丈夫ですか?」

「ありがとうございます」


差し出した俺の手を握った中城先輩は目を見開いている。


「は?大輝じゃねーか?何でお前がいるの?」

「たまたま海に来てたんですよ」

「そ、そうか。てか何が起こったんだ?」


中城先輩は混乱しているようだ。俺がいる事に驚いているがそれ以上に今は何が起こったのかで頭がいっぱいのようだ?


「あれは麻由子か?え?ほんと何が起こってんだよ?」

「取り敢えずあっちに行きましょうか?そこで話をしますから」


姫川を見つけた中城先輩はますます混乱してしまったようだが俺はいち早くこの場から離れたかった。だって俺達の後ろでは桃子の泣き声が響いているし、そのせいで周りからめっちゃ注目を集めているからだ。ほんと大惨事だよ。



「ほんとうちの妹がすみませんでした」

「別に大丈夫だから気にすんな。まぁビックリはしたけどな!」


移動したあとすぐに俺が中城先輩に謝罪をして頭を下げると笑いながら気にするなと言ってくれる。しかしいまだにお腹を押さえているのでそこそこダメージは残っているようだ。

そりゃそうだろうな。小学生が全力でタックルしたのだ。下手すりゃケガをしていてもおかしくない。ほんと申し訳ない。


「取り敢えず色々聞きたいことはあるんだが、何でお前らが一緒にいるの?」


中城先輩には俺と姫川がクラスメイトだということを隠していたので当然の疑問である。

俺はチラッと姫川の方を見ると頷いたので本当の事を言っても良いという事だろう。俺が説明するために話そうとすると


「2人とも私の共通の友達なんですよ!」


久慈川が何でもないような顔をして話だした。

俺も姫川も思わず久慈川の方を見るが澄ました顔をしている。


「せっかくの海なのにナンパされるとウザいので大輝にナンパ避けをお願いしたんですよ。

ちなみに私と杏奈も友達で、杏奈と麻由子も友達です」

「なるほどね。それで一緒に来てたわけか」

「そうです!」


すげーな久慈川!こいつ本当の事も言っていないないが1つも嘘を言っていないのだ!

それで中城先輩をあっさり納得させやがった!俺は思わず久慈川に感心してしまった。


「一緒にいる事は分かったが何で大輝の妹は俺にタックルしてきたんだ?」


いきなり理由も分からずタックルされたのだ。

そりゃそれも疑問に思うよな。さて何て言い訳したものかと思っていると


「おまっ……」


桃子が声を上げようとしたが杏奈が咄嗟に手で口をふさぐ。そして桃子に何やら耳打ちをすると大人しくなった。その様子を中城先輩が心配そうに見ているのだが


「すみません。ちょっと興奮しているみたいですが、もう大丈夫なので気にせずお話を続けて下さい」


そう言ってニコリとほほ笑んむのだがその笑顔には圧があってそれ以上、桃子に言及出来ない雰囲気を作っている。


「さっき麻由子がちょっと嫌な目にあったんですけど、それを聞いた桃子ちゃんがめっちゃ怒ってたんです。そんな時にそいつに似ていた先輩を見かけて突撃しちゃったんですよ」


その隙をついて久慈川が話始めたのだが、またも上手く本当の事を隠しながら話をしていく。ほんとよくこんなスラスラ話せるもんだよ。


「だからイジメるなって言ってたのか」

「ですね!止められかなくてごめんなさい」

「それは全然問題ないけど、麻由子は大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ!桃子ちゃんが慰めてくれましたんで」

「い、いや麻由子に聞いて」

「桃子ちゃんのお陰で大丈夫です!」


久慈川が中城先輩の話を遮ったのだが、何かものすごい圧を出しているので中城先輩はそれ以上何も言えなくなっていた。


「あまり面白い話ではないので、何も聞かないのも優しさだと思いませんか?」


今度は杏奈がニッコリ笑いながら中城先輩に話かけているがやっぱり圧がすごい。


「そ、そうだな。大丈夫ならそれでいいよ」


そう言うと中城先輩は俺の側に来て何やら耳打ちしてくる。


「何?俺なんかしたの?めっちゃ怖いんだが」

「まぁ中城先輩は何にもしてないですよ。

今はちょっと気が立ってるんでそっとしておいた方が良いですよ」


正直何もしていない事がそもそもの原因なのだがそんな事は言えないからな。それにさっきの姫川を見て2人とも中城先輩に怒ってるんだろうしな。ちょっと理不尽な気もするが中城先輩にも悪い部分が全くないわけじゃないので俺も擁護がし辛いのだ。


「そ、そうか。なら仕方ないな」


無理やり納得している中城先輩を見て俺はちょっと可哀想に思ってしまうのだった。

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