第7話 ギャルは忘れた頃にやってくる
結局、ギャルの笑顔をどこで見たのか謎のままだが考えても思い出せないので、俺は思い出すのをやめた。
というか多分あのギャルに会うことなど二度とないだろうから考えるだけ無駄なのだと悟ったのだ。
そう言うと中城先輩はまたもや残念な子をみる目で俺を見てきた。
あんたの方が残念だぞ!と思ったが、思うだけで結局言えなかった。いや言わなかったのだ。
何だかんだと言っても先輩なのだ。いくら俺でも最低限目上の人間を立てるくらいの気概はある。
そんな俺はギャルに会ってから2日間コインランドリーには行かなかった。
そもそもコインランドリーは毎日行くもんでもないし、洗濯物も少なかったので勿体ないと気づいたのである。
俺にしては苦渋の決断ではあったのだが、中城先輩から
「コインランドリーは洗濯物を無理矢理作って行くところじゃない」
との真っ当なお言葉を頂き、俺が言い返す事が出来ずにいると、
「そんなにギャルに会いたいのか?」
とニヤニヤしながら言われてしまい、毎日コインランドリーに行くことを諦めた。
ギャルの事を持ち出すのは卑怯である。
やはり中城先輩は尊敬できない。
そして俺はそもそも利用客も少ないし本だけ読みにコインランドリー行くのはありなのでは?と思い尾上さんに相談したら、爆笑された後にまたもや残念な子をみる目をされながら
「それはやめときな」
とこれまた真っ当なお言葉を頂きこちらも諦めることとなった。
あの二人、普段は頭のネジが何本か無いくせに、そういう所は変に常識人になるのだ。
確かに無理矢理に洗濯物を用意して毎日コインランドリーに行こうとしたり、コインランドリーの雰囲気が好きだからと利用しないのに本だけ読みに行く事が非常識極まりない話である事は俺だって分かってはいるのだ。
だが、それをあの二人に正論で正されるのは何だか癪なのである。
こればっかりは仕方がない。俺だけが悪いわけではないはずだと思いたい。
そんなわけで今日は久しぶりのコインランドリーである。洗濯物も無理矢理用意したわけではない。そろそろ洗濯しないといけないのだ。
そこそこ量もあるし、とても良いコインランドリーライフが送れそうである。
とても楽しみだ!
俺は前日からコインランドリーで読むための本を部屋で物色していた。
あの空間で読むと、とても集中できるのだ。
どの本を持っていくか悩みがつきない。
そんな時、ふと友人にもらったが読むことなく
放置していた本が目に入った。
好みではなかったから読んでいなかったが、この機会に読んでみるのも悪くないな。
そう思い、この放置していた本を持っていく事にした。
後に俺はこの時の決断を大いに後悔する事になるのだ。
しかしこの時はあんな事になるなんて想像もしていなかった。
正直、久しぶりのコインランドリーと言うことで、俺はこの時点でいつもより浮かれていたのだと思う。
だからすっかり忘れていたのである。
前回コインランドリーで何があったのかを。
覚えていればこの本を絶対に選ばなかった。
今更後悔しても遅いのだが。。。
バイトを終えて帰宅した俺は、洗濯物の準備など諸々終えて家を出た。
2日間行かなかっただけなのに何だかソワソワしてしまう。
俺はコインランドリー中毒にでもかかっているようだった。
慣れた道のはずなのに何だか足取りがフワフワして、初めての場所に行くような気持ちになっていた。
人がいなければスキップしそうな勢いである。
そして路地裏に入りコインランドリーの前にでる。
あぁやっぱりこの雰囲気何度見てもいい。
夜の中に佇む光り輝くコインランドリー!
俺は暫くコインランドリーの外観を堪能してから店内に入った。
今日も利用客は誰も居なかった。
店内は変わらず、熱気と乾燥した空気といい匂いが漂っていた。
これこれ!この非日常感!
そう思いながら俺はいつもの洗濯・乾燥機の前に立ち洗濯物を入れていく。
今日、財布には100円玉が8枚ある。
両替機には向かわずそのまま100円玉を投入していく。
そして洗濯・乾燥機が動き出したのを見て俺は何時ものようにベンチに腰掛けてカバンから本を取り出した。
普段読まないタイプの本なので読み始めは少し緊張したが、だんだんと集中していくのが自分でもわかった。
話の導入部分が意外とおもしろかったのだ。
これはとても良い読書タイムになりそうだと思い、読書により集中しようとした時、それは突然やってきてしまったのである。
「おっ!今日はいるじゃん!!」
その声は集中していたはずの俺の耳に不思議とすんなり入ってきた。
突然の来訪者に俺は顔を上げる。
そこにはとても嬉しそうな笑顔の女性が立っていたのだ。
なぜ彼女がそこにいるのか?
思ってもいなかった人物の登場に俺の思考は停止してしまった。
状況がうまく飲み込めずに固まっていた。
「おーい?」
彼女はそう言って俺の顔の前で手を振りながら覗き込んでくる。
未だに思考が停止して固まったままであったが、見たことのあるシチュエーションにようやく俺は声を出すことができたのである。
そして呟いたのだ
「ギャルがいる」
その瞬間ギャルはとても笑顔になっていた。
その笑顔にまた見惚れている事に俺は気づいていなかったのでる。
初投稿になります。
完結目指して頑張ります。
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