第3話 清楚美人達と妹
「黒澤桃子です。いつもお兄ちゃんがお世話になっています!」
そう言って俺の妹は愛想を振りまきながら頭を下げている。
「え〜!めっちゃ可愛いんですけど!」
「黒澤くんに全然似てないね!」
愛想を振りまく桃子に久慈川と姫川のテンションが上がっている。そんな2人とは対照的に俺のテンションはだだ下がりだ。年上のお姉さんにチヤホヤされてご満悦な妹の顔を見ているとほんとにイラッとしてしまう。
「お前何しに来たんだよ?」
「お兄ちゃんに会いに来たんだよ!」
「え〜お兄ちゃんに会いにくるとかめっちゃ可愛いんだけど!」
あざとくも俺に会いに来たなんて言い出した桃子に対して久慈川のテンションがもっと上がってしまった。
「そんな可愛らしい理由な訳ないだろ!ほんと何企んでんだよ?」
こいつがそんな理由で俺のところに来るはずがないのだ。絶対に何か企んでいるに違いない。俺は思わず桃子を半目で睨んでしまう。
「そんな風に言うものではないですよ!桃子ちゃんが可哀想じゃないですか」
しかし杏奈はそんな俺から桃子を庇うように間に入ってくる。
「お姉ちゃん優しい!」
桃子は杏奈に抱きつきながらも俺の顔を見ると舌を出してきやがった。しかも杏奈にバレないようにである。俺は頭を引っ叩きたくて仕方なかったが杏奈に抱きついているのでそれも出来ない。
「ふふっ。桃子ちゃんは可愛いですね」
「お姉ちゃん達も皆すごい綺麗だよ!」
「え〜桃子ちゃん見る目あるじゃん!」
「んね!ほんとに黒澤くんの妹なの?」
どうやら女性陣はすでに桃子に籠絡されてしまったようだ。相変わらず年上に取り入るのはほんと上手いんだよな。
そして姫川よそんなに俺と妹が似てないのが気になるのかよ!
まぁそんな事より取り敢えず俺は聞いておかないといけない事があるので桃子に話しかける。
「桃子!お前どうやって来たんだよ?てか母さんにはちゃんと言ってんだろうな?」
「お母さんに連れてきてもらった」
「じゃあ母さんはどこ行ったんだよ?」
「もう帰ったよ!」
「はい?」
俺は空いた口が塞がらなかった。母さんに連れてきてもらったのは構わない。1人でここまで来たんじゃないと分かって安心したからだ。
しかしその連れてきた本人が帰ったってどう言うことなんだよ!
「しばらくお兄ちゃんのとこに泊まりなさいってお母さんに言われたの」
「は?俺は何にも聞いてないんだが?」
「だって言ったら絶対に反対されるから内緒にしようってお母さんと決めたの」
こいつらまじか!何でそんな大事な事を言わないでここまで来てんだよ!母さんも母さんである!ほんと何考えてんだよ!
「お前なぁ、俺が今日いなかったらどうするつもりだったんだよ!」
「お母さんに合鍵貸してもらってるもん」
「もん!じゃねぇよ!ちゃんと連絡くらいしろよな」
「連絡してもお兄ちゃん嘘つくじゃん!夏休み帰って来るって言ったのに全然帰ってこないんだもん」
桃子とのやり取りをと見ていた女性陣がうわぁお前それはないわ!みたいな顔をしている。頼むからそんな顔で俺を見るのをやめて欲しい!
「大輝くん、流石にこれは桃子ちゃんが可哀想ですよ」
「杏奈ちゃん!」
桃子はまた杏奈に飛びついている。てかいつの間に名前呼びになってんだよ!明らかに桃子のペースに巻き込まれてしまっている。だからノリと勢いで行動するやつは苦手なんだよ!
そんな事を考えていると姫川が口を開いた。
「夏休みなんだし実家にくらい帰ればいのに。桃子ちゃんもお兄ちゃんが帰って来なくて寂しいよね?」
「ううん!別に寂しくはないよ」
「え?」
姫川は口を開けたまま固まってしまった。
そりゃそうだろうな。話の流れでいけば寂しいと言うのが普通なんだろうが俺の妹は普通ではないのだ。ほんとこんなやつ真面目に相手をするだけ無駄なのだ。
「寂しくないのに会いにきたの?」
「うん!だって前に電話した時に帰って来ないって思ったんだよね。そんなのお兄ちゃんのクセに生意気だから私が代わりにきたんだよ!」
そう言ってちょっと得意気に答える桃子を見た姫川は呆気にとられている。
「何か黒澤くんの妹って気がしてきたよ」
そう言いながら姫川は俺の方を何やら納得したようだが、今のどこに俺の妹要素があったのか俺には全く理解が出来なかった。
「桃子ちゃん分かってる〜!大輝って生意気だよね!」
そんな2人のやり取りを見ていた久慈川が嬉しそうに会話に入ってきた。
「うん!お兄ちゃん生意気!絵理ちゃんも分かってる〜!」
「生意気なお兄ちゃんなんかほっといてこっちでお姉ちゃん達と遊ぼう!」
「やった〜!」
桃子は嬉しそうに久慈川に抱きついている。
もはや俺のことなど眼中にないんだろうな。
姫川も巻き込んでキャッキャッしている桃子を見て俺は思わずため息をついてしまった。
「前に大輝くんが妹と絵理が似ているって言っていたのがよく分かりました」
「だろ?ほんと言動がそっくりなんだよ」
「そうですね。こんなに似ているとは思いませんでした」
俺の横にやって来た杏奈が苦笑いしている。
そのくらい2人はよく似ているのだ。むしろ俺より久慈川と姉妹だと言われた方がしっくりくるレベルである。
「なんか騒がしくなってごめんな」
「全然ですよ。むしろ私は桃子ちゃんに会えて嬉しいですから」
「そう言って貰えると助かるよ。俺1人だと相手するのも大変だからさ。皆がいてくれて助かってる」
「ふふっ、確かに大変かもしれませんが、それだけ大輝くんに甘えているという事ですよ。
可愛らしいじゃないですか」
「甘えるんならもうちょい分かりやすくして欲しいんだけどな」
「年ごろなので恥ずかしいんですよ」
「そんなもんなのかね?」
「そんなものなのですよ」
俺には年頃の女子の気持ちなど分からないが杏奈が言うんならその通りなんだろうなと納得する事ができた。楽しそうにはしゃいでいる桃子たちを見ながらまぁたまにはこういのも悪くないななんて思っていると
「大輝!桃子ちゃんも海に連れて行くから!」
「お兄ちゃんだけずるい!私も行くから!」
久慈川がとんでも無い事を言い出して桃子まで乗り気になっている。こういうのは悪くないなんて思うんじゃなかった。やっぱりノリと勢いで行動する奴が2人も揃うと面倒な事にしかならないと俺は改めて思い知らされたのだった。




