エピローグ
「何か大変な事になっちゃったね」
「いやぁ大変てか面倒くさ過ぎるだろ」
杏奈がの問いかけに俺はがっくりと頭を下げながら思わず本音を漏らしてしまった。場所はもちろんお馴染みコインランドリーである。いつも通り俺と杏奈の2人しかいないので本音も出てしまっても仕方がない。
「たぶん麻由子も振り向いて欲しくて頑張ってるんだろうけど、自分1人じゃどうにもならなくて辛いんだと思うよ」
「そうかもしれないけど、よりにもよって俺を巻き込まないで欲しいんだよな」
俺は思わずため息をついてしまう。そんな俺を見て杏奈は苦笑いしながら話を続ける。
「ちゃんと麻由子に伝えるの?」
「どうするのが正解なんだろうね?」
中城先輩が尾上さんをどう思っているのか普段の態度を見れば丸わかりなのだが、本人の口からは聞いたことがない。それを姫川に伝えるのは違う気がする。かといって正面から好きな人がいるのか聞くのもそれはそれで何だかなぁと思ってしまうのだ。
「結局、どうやっても姫川にとっていい結果になりそうにないんだよなぁ」
「でも麻由子も薄々気付いてるから行動に移してるところもあるんじゃないかな」
「そんなの何にも良いことないだろ?」
「それでもだよ。ずっと片思いしてるからこそちゃんと行動してハッキリさせたくなっちゃうんだよね」
杏奈の言葉にはやけに実感が込められていて説得力があった。
「だから、ちゃんと伝えてあげるのも1つの優しさだと思うよ」
「そういう優しさもあるんだな」
杏奈の話を聞いて俺は少しだけどうすれば良いのか見えて来た気がした。
「あんまり難しく考え無くて良いと思うよ。
女の子は大輝が思ってるより強いんだから!」
杏奈は得意げな顔でそう言いながらながら俺の頭を撫でてくる。それが妙に心地よくて俺はしばらくの間、無抵抗で撫でられ続けていた。
「大輝には他の子の事よりもっと考えて欲しいことがあるんだけどなぁ」
俺の頭を撫でながら杏奈がボソッと呟いた言葉は恐らく無意識だったんだろうけど、俺にはバッチリと聞こえてしまった。俺は言うかどうか迷ったのだがちゃんと言うべきだと思って口を開いた。
「ちゃんと考えているのでもう少しだけ待っててくれませんかね」
言うべきだと思ったとしても恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。だんだんと弱々しくなったあげくに何故か敬語になってしまった。俺は情けなさを誤魔化す様にそっぽを向くのだが杏奈の事が気になってしまいチラッと目線だけ向けてしまう。杏奈は驚いたのか撫でていた杏奈は手も止まってしまっていたのだが次第に嬉しそうな顔に変わったかと思うと
「ふふっ。大輝にお願いされちゃったし、もうちょっとだけ待っててあげようかな」
そう言ってまた俺の頭を撫で始めた。どうやら俺の決断は間違っていなかったようてホッと胸を撫でおろしながら先ほどの杏奈の言葉を思い出していた。
『ずっと片思いしてるからこそちゃんと行動してハッキリさせたくなっちゃうんだよね』
ほんの少しではあるが姫川の気持ちが分かった気がする。たぶん姫川は曖昧無ままではいられないんだろうな。そう考えるのは俺も同じ様な事を考えているからなんだろう。それはそれとして姫川にどう伝えるかは考えないといけないのだけれと。
それに杏奈の事も分かってきた。近いうちに俺もハッキリさせないと。俺は頭を撫でられながらそんな事を考えるのだった。




