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第23話 ギャルと想定外は突然に

「アハハハッ!」


ぐったりしている俺の横で尾上さんが爆笑している。あれから水着選びに付き合わされた俺の精神はゴリゴリに削られたのだ。女性用の水着売り場に初めて足を踏み入れたのだがあんなのもう下着売り場と変わらないじゃないか!まぁ下着売り場にはもちろん入った事などないのだけれど。


「ごめんね!楽しくなっちゃってさ」


杏奈は手を合わせて謝ってきているが、その表情はやり切った満足感で溢れている。杏奈も尾上さんも恥ずかしがる俺を見て本当に楽しそうにしていたのだ。最初はどっちが似合う?何ていいなが選択式だったのだが途中で俺の好みの水着を選んで来いと売り場に1人で放り出された時はまじでやばかった。女性用のそれも水着売り場で1人になる心細さと好みの水着を選ばされる羞恥心でただの挙動不審者になっていたに違いない。


「いや〜あんだけ初心な反応してくれてると連れて来たかいがあったわ」

「恥ずかしがる大輝めっちゃ可愛かったもん」

「カーテン開ける度にキョドってたのなんてほんとウケるんだけど」


杏奈と尾上さんは俺の様子を思い出して楽しそうにキャッキャッしている。2人は水着を試着する度に俺に見せつけては感想を求めてきたのだが水着を褒めるのって服を褒めるのより難易度が数倍高い事を俺は初めて知ったのだ。


「あんたも私たちの水着姿を見れて良かったでしょ?」


尾上さんはニヤニヤしながらそんな事を聞いてくるが健全の男子が水着を見れたらそれは嬉しいだろうさ!しかも2人ともスタイルもよければとんでもなく可愛いのだ。海とかプールで見かけたらそりゃ俺もテンションは上がっていただろうよ。でもここは水着売り場なのだ。テンションが上がるよりも恥ずかしさの方が勝つに決まってる。


「嬉しいよりも恥ずかしさで疲れましたよ」

「私の水着嬉しくなかった?」


俺の返答に対して何故か杏奈がちょっと不満気に聞いてくる。そんな俺達を見ながら尾上さんはよりニヤニヤしてくる。


「別なんだよ」

「べつ?」

「水着を見れたのは嬉しかったけど、それとこれは別なんだよ!恥ずかしいものは恥ずかしいんだよ!」


俺はヤケクソになりながら答えた。そんな俺の返答を聞いて杏奈は満足そうにしているし尾上さんは声が出ないくらい爆笑している。ほんとこれのどこがご褒美なんだよ!より疲れてしまったのだった。


「まぁ大輝をからかうのもこの辺にしてご飯でも食べに行こうか」

「結構時間たってるもんね」

「確かに何処かで休憩したいですね」


試着も含めてたっぷり2時間もここで費やしているのだ。さすがの俺も何処かで休憩したい。

こうして俺達は水着売り場を離れて昼食を取るためにフードコートに移動することにした。

因みに俺は杏奈がどの水着を買ったのか教えて貰えなかった。当日のお楽しみだと言われてしまったのだった。これで俺が選んだ水着でなかったら軽く死ねるな。


「思ったより空いてたな」

「んね!人も少ないからゆっくり出来そう」


尾上さんがうどんが食べたいと言い出したので席取りをお願いして俺と杏奈は昼食を注文するために列に並んでいた。


「大輝は何にするの?」

「ぶっかけうどんに天ぷらでも付けようかな」

「天ぷら良いよね!」

「サツマイモとちくわで迷ってるんだよな」


俺は天ぷらの中でも特にサツマイモとちくわが好きなのだが今日は2つはちょっと多い気がするんだよなぁ。どっちにするか迷っていると


「じゃあさ私がサツマイモ頼むから大輝はちくわにしなよ!それで半分こしない?」


杏奈が俺の顔を覗き込みながらそんな提案をして来た。


「いいね!じゃあ半分こしようか」

「やった!」


提案を受け入れて貰えた杏奈は嬉しそうにしているのを見ると、俺まで嬉しくなってしまう。自分の気持ちを自覚したとたんにこんな些細な事でも嬉しくなるとかほんと単純過ぎて笑えてしまう。


無事に昼食を食べ終えた俺達はフードコートでまったりとしながら次に行く所を話していたのだが、2人が服を見たいと言い出したのであっさり決まってしまった。特に行きたい所もなかったし水着売り場よりは遥かにましだろうと思い俺もそれを了承した。まぁ今日の俺は荷物持ちとして呼ばれているのでその役目を全うするだけなのだ。


「ちょっとトイレ行ってくるね」


杏奈がそう言って席を立つと尾上さんがニヤニヤしながら話しかけてきた。


「天ぷら半分こするとか仲良くやってんじゃないの」

「まぁその位は普通ですよ」


そうやって改めて他の人に言われると照れてしまうので俺は何でもない風を装って答えてから水を飲んで気分を落ち着かせる。


「普通ねぇ。それでいつ告白すんの?」

「コバァッ!ゲホッゲホッ!」


俺は盛大に咽てしまった。


「きったいなわね」


尾上さんはそう言いながらも鞄からハンカチを取り出すと俺に差し出してくれる。それを受け取りながら俺は尾上さんの顔をまじまじと見てしまう。


「そのくらい分かるわよ。ようやく自分の気持ちを自覚したんでしょ」


尾上さんは呆れた様に言うのだがとても優しい

目をしていた。そんな目をされると誤魔化したり出来なくなるのでやめて貰いたい。


「自分で気付けたんならいいんじゃない」

「そうなんですかね?」

「まぁ遅すぎるとは思うけどね。それで告白するの?しないの?」

「告白はするつもりですけど…」

「どうせ気になる事でもあるんでしょ?」

「ですね。取り敢えずそれをハッキリさせてからだと思ってます」

「まぁヘタれてる訳じゃないから良しとしてやりますか」


尾上さんはそう言うと俺の頭をガシガシと少し乱暴に撫でてくる。


「まっ困ったらいつでも相談してきなさい」

「ありがとうございます」

「振られたら盛大に弄ってあげるから安心しなさいよ!」


そんな縁起でもないこも言うのやめて欲しいんですけど!!ちょっとウルッときた俺の感情を返してくれませんかね!そんな抗議する俺の視線を受けながらも尾上さんは楽しそう笑っているのだ。ほんとこういう所がこの人らしいな何て思っていると杏奈が戻ってきた。


「お待たせ!トイレ思ったより混んでてさ」

「いや全然大丈夫だよ。それじゃそろそろ行こうか」


杏奈が帰って来たので俺たちは服を見に行くことにした。通路を歩きながら杏奈はご機嫌である。


「また大輝に選んで貰おうかな」

「別にいいけど、俺のセンスにはあんまり期待しないでくれよ」

「その時はちゃんとセンス悪いって言うから」

「お手柔らかに頼みます」

「仲が宜しいことで」


そんな俺達のやり取りを見て尾上さんは何やら含みのある言い方をする。俺の気持ちを知られてしまったので何かやり難い。


「別にいいじゃ…」


尾上さんに反論しようとした杏奈が固まってしまった。何やら通路の反対側を見つめている。


「急にどうしたのよ?」


尾上さんが不思議そうな顔をしながら杏奈と同じ方を見た瞬間ビックリするぐらい低い声が聞俺の耳に届いた。


「はっ?」


え?何が起こってんの?杏奈は固まっているし尾上さんは見るからに機嫌が悪くなっている。俺は2人が見ている方を見たのだがそうした事を後悔してしまった。俺達の視線の先には姫川と中城先輩がいたのである。見たからには無視する事も出来なくなってしまったのだった。

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