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第20話 ギャルと自覚は突然に

「やっぱペンギン可愛かった!」

「まかさ通路を歩いてるとは思わなかったよ」

「あの行進めっちゃ可愛すぎ!ヨチヨチ歩くところとかほんとムリ!」


あれからある程度、館内を見て回った俺たちは併設されているカフェで昼休憩をとることにしたのだが、直前にペンギンの行進を見たことで杏奈のテンションが上がって、席についてからも興奮気味にペンギンの魅力を俺に語ってくれている。


「ペンギン好きなんだな」

「めっちゃ好き!歩いてるとこも浮かんでるのもどっちも可愛いすぎ!」


どうやら杏奈はペンギンが好きなようだ。ちょっと前に何が好きなのか分からない何て悩んだ事もあったが、こうやって好きな物を知る事ができてちょっと嬉しくなる。こうやって1個ずつ杏奈の事を知れていけるといいなぁなんて考えていると、杏奈が質問してきた。


「大輝は何がよかった?」

「水族館が初めてだから割と何を見ても楽しめたんだよなぁ」

「それは嬉しいけど、何が1番よかった?」


1番良かったやつねぇ?俺はさっきまで見て回った展示内容を思い出しながら考えてみる。


「どれも良かったけど、クラゲのやつが好きだったかな」

「あのちょっと光ってたやつ?」

「そうそれ!なんかめっちゃ綺麗だったしね」

「確かにあれ綺麗だったよね!」

「そうそう!何か見入っちゃったんだよな」


クラゲの水槽は他の場所より少し暗くなっていて光っている感じと漂うクラゲが合わさって何だが幻想的で綺麗だったのだ。あとでもう一回見に行っても良いくらいだと思う。


「じゃあ、あとでもう一回見に行こっか」


俺が考えてた事と同じ事を杏奈に言われて思わず目を見開いてしまう。まさか声に出してたのかな?杏奈はそんな俺を見ながらクスクス笑っている。


「何かもう一回行きたそうな顔してたからさ」

「そんな顔に出てたか?」


俺は頬を触りながら杏奈に聞き返した。俺ってばそんな表情に出る方じゃないと思うんだけどなぁ。


「出てたよ。割と大輝は顔に出やすいので気をつけるように!私、大輝のことめっちゃ見てるから!」


杏奈はそう言って楽しそうに笑いながら俺の頬をつついてくる。俺は何だか気恥ずかしくなってしまいそっぽを向いて


「気をつけます」


何て言いいなが手元にあったジュースをすするのであった。それにしてもまじかぁ!そんな顔に出るならほんと気を付けないとな。そうで無くても杏奈には考えている事を良く言い当てられるんだから。そんな俺を見て満足したのか杏奈は


「さっ!休憩もしたし次見に行こっか!」


そう言って席から立ち上がったので俺もそれに続いて立ち上がりトレーを返却しに行く。杏奈はそんな俺の後をヒョコヒョコ付いてきて、俺がゴミ捨てやらトレーの片付けが終わったのを見計らって


「じゃあ引き続きエスコートをお願いします」


そう言って手を差し出してきた。また手を繋いだ方が良いのか迷っていたのに先手を打たれてしまったようだ。こういう所は杏奈の方が1枚も2枚も上手である。


「それではエスコートさせて頂きます」


俺がそう言って大げさに頭を下げたあとに手を握ると杏奈は満足げに頷きながら


「くるしゅうない」


何て言うのである。そのやり取りが何だか可笑しくて俺たちは顔を見合せて思わず笑ってしまう。こうして俺達は水族館巡りを再開させるのだった。


めっちゃデカい水槽の中を泳いでいる魚を見て刺身が食べたくなったと言ったら杏奈に呆れられたり、ペンギンの水槽の前で杏奈がキャーキャー言いながらめっちゃはしゃいだりと2人で水族館を楽しんでいると少し人気のない所に白い塊みたいものが置いてあるのを見つけた。


「あれ何だろうね?」

「わからん」

「ちょっと近くに行ってみようよ」


杏奈は俺の手を引いてその白い物体に近づいていくとどうやら何かの台座のようだ。その後ろには『私たち北極に行って来ました』なんて言う看板が立てかけてあった。しかもハートの装飾付きである。何だこれ?なんて思っていると


「良かったらお写真どうですか?」


そう言ってスタッフの人がニコニコしながら声をかけてきた。どうやら白い物体と立看板は写真撮影用の背景で観光地なんかで見るやつなのだが、いかんせん手作り感満載で控えめに言ってショボすぎる。よく見るとスタッフ人は首から立派なカメラを下げていて、


「お値段800円でお写真撮りますよ」


何て営業スマイルを浮かべている。これで金取るのかよ!撮影した後にその場でプリントしてくれるみたいだが、お値段800円とこれまた絶妙な値段設定である。さすがにこれは無いな何て思っていたのだが


「ちょっと撮ってみたいな」


何て杏奈が言い出したのだ。まじかよ!こんなショボいのでいいの?しかし杏奈の言葉を聞いたスタッフは杏奈に狙いを定めたのだ。


「今ならカップル割で500円です!お似合いのお二人の記念に如何ですか?」

「撮りまーす!」


スタッフの営業トークに杏奈が速攻で食い付いてしまったのだ!


「ほら!行こうよ!」


杏奈はそう言って俺の手をを引いて撮影スペースに上がって行く。すでに俺に拒否権などなかったのだが杏奈がめっちゃ嬉しそうにしているので、まぁいいかと思い写真を撮ってもらうことにした。撮影が終わると直ぐにプリントしてくれて専用の台紙みたいなのに写真をを入れて俺たちに渡してくてた。


「大輝と一緒の写真欲しかったんだよね」


何て言いながら受け取った写真をまるで宝物の様に大事に胸に抱いていた。それを見ていると

途中で「もっとカップルぽく」何て言われて杏奈に腕を組まれたりして恥ずかしい思いをしたのなんてどうでもよく思えてきた。


「写真これからも一緒に色々撮ろうか」

「撮る!めっちゃ撮る!」


俺が思わず口にした言葉に杏奈は直ぐに反応して本当に嬉しそうにしている。俺と一緒に写真を撮るくらいでこんなにも嬉しそうにしてくれるのなら沢山撮ろうなんて思えてくる。


その後も水族館をたっぷり楽しんだ俺達はそれぞれお土産を買った後に電車に乗って地元の駅に帰ってきていた。今は杏奈を家まで送っている最中というわけだ。


「今日はほんとに楽しかったね!」


杏奈はご機嫌の様で繋いでいる手をブンブン振っている。今日はずっと手を繋いでいたなぁなんて思いながら嬉しそうな杏奈を見ていると、

今日は水族館に来て良かったと心から思えて俺はいつもより素直になっていた。


「ほんと楽しかったよ。また来たいよな」

「ほんとに?絶対また一緒に来ようね!」


そんな俺の言葉に杏奈は喜んでいるのだ。ほんとまた一緒に来れたらいいなと思う。そうこうしているうちに杏奈の家の前に着いたので、俺はお土産の入っている袋の中から紙袋を取り出して杏奈の方に差し出した。これがそのための一歩になれば良いななんて思いながら。


「何?どうしたの?」


突然差し出された紙袋に杏奈は戸惑っていた。

まぁそりゃそうだ。自分の事ばかりを考え過ぎていたようだ。


「今日はさ杏奈へのお礼って約束だったろ?

だからこれもそのお礼の1つってことで」

「いいの?」


杏奈は差し出した紙袋を受け取ったあと、おずおずとした様子で聞いてくる。


「開けていい?」

「いいよ」


俺の返事を聞いた杏奈は紙袋を留めているテープを丁寧に剥がして中身を取り出す。


「これって」


杏奈は目を見開いて固まってしまった。嫌がられている訳ではないがほんの少し不安がよぎってしまう。それを振り払う様に少し早口になりながら俺は説明をする。


「ペンギン好きだって言ってたから今日の記念にと思って」


俺はお土産屋で小さなペンギンのぬいぐるみを買っていたのだ。キーホルダータイプのそれはペンギンが両手でハートを持っている。

正直、俺が渡すには可愛すぎる気もしたのだが何故だがこれを杏奈にプレゼントしたくなったのだから仕方ない。俺の言葉を聞いた杏奈は大事そうにペンギンを両手で包んで


「嬉しい!絶対に大事にするから!」


そう言って今まで見たことのないような笑顔になっていた。それを見た俺は安心した。どうやらちゃんと喜んで貰えたようだ。


「喜んで貰えて良かったよ。今日は本当にありがとう。また一緒にどっか行こうな」

「うん!!約束だからね!」

「あぁ約束だ」


こうしてまた一緒に遊びに行く約束をして俺と杏奈のデートは無事に終わったのである。杏奈の家からの帰り道に俺は1人で歩きながら大きなため息をついてしまった。今日1日杏奈とデートをした事で気付いてしまった事がある。

正直今さらな気もするが仕方ないじゃないか。

そりゃあ尾上さんにも中城先輩にも鈍いだ何だ言われるわけである。


そうどうやら俺は杏奈の事が異性として好きなのだとようやく気付いたのだった。

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