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第17話 尾上さんと検索履歴

俺はスマホを見ながら思わずため息をついてしまう。

画面には俺が検索した単語の意味が映し出されている。当たり前だが何度か検索してみたがどれも似たようなモノしか出てこない。


『デートとは親しい男女が日時を決めて会うこと。またはその約束』


やっぱりどう考えても杏奈と約束したのはデートである。というか本人がデートだと言っているのだからそれ以外に何があると言うのだ。

まじかぁついに俺もデートをしてしまうのか。杏奈とは夏休みに入って直ぐに2人で水族館に行くことが決まったのだが、改めてデートと言われると何故か変に意識してしまう。自慢ではないがこれまで1度も女子と2人で遊びに行った事などない。あれから俺はデートと言う単語だけではなくそれに関連するワードを検索しまくっているのだ。いま俺の検索履歴を見られたら軽く死ねる。


「何?あんたデートすんの?」


俺は後を振り向いて固まってしまった。そこには尾上さんがニヤニヤしながら俺のスマホを覗き込んでいた。絶対に見られてはいけない人に見られてしまった。


「勝手に見ないで下さいよ!プライバシーの侵害ですよ!」

「何言ってんのよ!休憩室しでそんなの調べてるあんたが悪いんでしょ」


くそ!完全に油断していた。確かに尾上さんの言う通りである。こんなところでデートなんて検索している俺が悪かったのだ。


「んでデートするの?」

「そうです」


俺は尾上さんの圧に負けてあっさりと白状してしまった。俺の返答を聞いた尾上さんは新しいおもちゃを見つけたかのように嬉しそうだ。久々に悪魔の笑顔を見た気がする。


「あんたがデートする様になるなんてねぇ」

「いいじゃないですか!俺だってデートくらいしますよ」

「初めてのクセに何偉そうにしてんのよ」


俺は何も言い返せずに黙ってしまった。だってその通りなんだもの。そんな俺を見て尾上さんは心底楽しそうにしている。


「それでどこ行くの?」


誰と行くか聞いてこないあたり絶対に分かってるんだろうな。変に隠しても良いことがないと判断した俺は素直に答える。


「水族館に行く予定です」

「初デートにしては悪くないんじゃない」

「まぁ定番ですよね」

「どうせあんたが決めたんじゃないでしょ?」


俺はまた黙ってしまった。もちろん水族館に行きたい言ったのは杏奈の方なのだ。俺が提案したわけではない。くそ!何でそこまで分かるんだよ!


「杏奈、水族館好きだもんねぇ」

「そうなんですか?」

「何?あんた知らなかったの?」

「いま初めて知りました」

「まじかぁ」


そう言って尾上さんは残念な子を見る目で俺を見てくる。その目ほんとやめて下さい!それにしても杏奈は水族館が好きだったのか。よく考えれば俺って杏奈のことそんなに知らないのかもしれないな。好きな物や嫌いな物、そういや誕生日も知らないんじゃないか?結構一緒にいて色々と分かってたつもりだったのにな。俺はちょっと落ち込んでしまった。


「ほんと何やってんのよ。もうちょいあの子の事をちゃんと見てあげなさい」


尾上さんはそう言って俺の頭を乱暴に撫でてくる。俺は思わず尾上さんの方を見ると苦笑いしながらも優しい目で俺を見ていた。


「何か知った気になってた自分がほんと恥ずかしいです」

「それが分かれば大丈夫よ!まぁ仕方ない部分はあるけど」

「仕方ない部分?」

「それは今は気にしなくていいわよ。取り敢えず初デート上手くいくようにしなさい」


尾上さんに気にしなくていいと言われたので取り敢えず今はデートの事に集中する事にした。


「何か色々調べたんですけど何が正解か分からなくなるんですよねぇ」

「そんなの当たり前でしょ!あんたがデートする相手は誰なのよ?」

「杏奈ですね」

「ならネットの誰か分からない人の事なんかよりあの子がどうやったら喜んで貰えるか考えなさいよ」


まさに目から鱗が落ちるとはこの事である。尾上さんの言葉にはすごい説得力があった。確かにその通りだよな。他人の意見ばっかり気にしても仕方がない。まずは杏奈に楽しんで貰うことを考えないといけないのだ。


「デートって言葉を気持ち悪いくらい意識してるみたいだけど、いつものコインランドリーもデートみたいなもんでしょ」

「え?あれもデートになるんですか?」

「あんなの周りから見たら立派なデートよ」


目から鱗が再びである。まじか!俺には日常過ぎてあれかデートだなんて思っても見なかったことだ。じゃあ場所がコインランドリーから水族館になっただけじゃん!そう思うとちょっと気が楽になってきたぞ!


「あんま肩ひじ張らずにあんたも楽しんで来たら良いのよ」

「そうですね。俺、ちょっと考えすぎてたみたいです!」

「まぁでもそれで気を抜くんじゃないわよ。

杏奈は初デートのつもりなんだからね」

「は、はい!」


尾上さんは釘を刺すことも忘れなかった。ほんと危なかった!コインランドリーの延長じゃんなんて軽く考えていたが、結局は初デートには変わりなないのだ。尾上さんはため息を付きながら


「仕方ないから色々教えてあげる。このままじゃあの子がちょっと可哀想だし」


そう言ってデートについて色々と教えてくれたので、俺はいつもより真剣にその話を聞くのだった。

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