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第15話 頑張ったご褒美は誰のもの?

「ねぇねぇどうだった?」

「私はいつも通りでしたね」

「私は意外と良かったかな」

「それじゃあさ、順番に見せようよ」


昼休みのいつもの校舎の端っこにある空き教室で女性陣がキャッキャッしているのを見ながら俺は弁当を食べている。尾上さんに対して貸しを作ってしまうというとんでもないく恐ろしい事はあったものの、あれから特にこれと言った問題もなく数日が過ぎていた。いや、1つだけ変化があった。姫川が俺達と一緒に昼休みを過ごす様になったのである。つい3ヶ月前までは杏奈と2人で食べていたのに気がつけば久慈川が加わって今では姫川もいるのだ。女子3人と昼休みを過ごす様になると1年前の俺に言っても信じないだろうな。ほんと随分と騒がしくなったものである。


「ちょっと大輝聞いてるの?」


俺がここ数ヶ月の変化を振り返っていると騒がしくなった原因その1の久慈川が話しかけてきた。


「すまん、聞いてなかった」

「もう!ちゃんと聞いててよ!順番に成績表を見せようって話してたの」


どうやら今日返却された成績表を皆で見せ合おうということらしい。まぁ別に隠す様な事でもないので見せ合うのは問題ない。俺がポケットから成績表を取り出したのを見て久慈川は満足そうにしながら


「じゃあ最初は大輝からね!」


そう言って俺の成績表を奪いとって机の真ん中に置くのだった。そんな事しなくても見せるのにほんと落ち着きのない奴である。


「そんな面白くないね」

「面白い成績表ってどんなんだよ」


こいつは人の成績表を見ておいてほんとに何言ってんだよ。思わずジト目で見てしまう。


「それにしても黒澤くんて意外と勉強出来るんだね!」

「大輝くんは、こう見えて真面目なんですよ。テスト期間中もしっかりと勉強してましたし、その成果がきちんと出てみたいですね」


意外そうにしている姫川に対して何故か杏奈が得意気に答えているがどっちも微妙に失礼な気がしないでもない。俺ってそんなに頭悪そうに見えるのかな?


「じゃあ次は杏奈ね!」


そんな俺の事など気にせずに久慈川は杏奈を指名している。こうして久慈川主導の元に成績表の見せ合いが始まったのだ。順位だけで言うと

杏奈が学年3位、俺が18位、姫川が42位という結果であった。杏奈は中間テストから順位を2つ上げたようだ。俺も10位ほど上がっている。


「姫川は中間と比べてどうだったんだ?」

「上がったよー!前は50位あたりだったから」

「へぇやるじゃん」


どうやら全員中間テストよりも成績は上がっているようだ。それにしても俺からしてみれば、姫川の成績の方が意外だった。正直もうちょい下の方だと思っていたのだ。


「フッフッフッ!じゃあ、そろそろ私の成績を見てもらおうか!」


俺が姫川に感心していると久慈川が腰に手を当てて急に立ち上がった。もうこの時点で成績が上がったのが分かってしまい俺はちょっとゲンナリしてしまう。だから見せ合いなんて提案したんだろうな。ほんとに分かりやすく奴だ。


「さぁ遠慮なく見てちょうだい!」


そう言って久慈川は自分の成績表を机の真ん中に置いた。あんまり見たく無かったのだがここで見ないと絶対にへそを曲げるので仕方なく覗きこむことにした。姫川は楽しそうにしているが、杏奈もだいたい察したのか俺を見て苦笑いしている。3人で久慈川の成績表を覗き込む。


「お前これ?」


俺は思わず顔を上げて久慈川の方を見るとドヤ顔でこっちを見ていた。成績が上がっているとは思ったがここまでとは思っていなかった。


「ふふん!どう?すごいでしょ!」

「いやウザいくらいテンション高いから成績は上がってたんだとは思ってたけどさ」

「ウザいはひどくない!」


ドヤ顔だった久慈川は唇を尖らせてブーブー文句を言っているが、そこまで不満気ではない。それくらい嬉しかったんだろうな。


「絵里すごいじゃん!4位だよ!4位!」

「本当にすごいですよ!頑張ってましたもんね!」


杏奈と姫川は素直に久慈川を褒めている。それに気をよくしたのか久慈川は分かりやすく調子に乗っている。乗っかりまくっている。


「でしょー!今回は結構がんばったからさ!」

「すごいよ!めちゃすごい!」

「でしょでしょ!もっと褒めてくれてもいいんだよ〜!」

「ふふっ。確かにこれはもっと褒めないといかないですね」

「さっすが杏奈!分かってる〜!」


ますます調子に乗ってるがそれも仕方ないか。4位だもんな。前に杏奈から10位台って聞いてたからそっから一桁まで持っていくのはかなり頑張ったんだろうな。まぁたまには俺も褒めてやるかな。


「ほらほら〜!大輝も私を褒めなさいって!」


そう思った途端にこれである。くっそウザい顔をしてこっちを見てくる久慈川のせいで褒める気も無くしてしまった。そんな俺の事などお構い無しに褒めろ光線を出してくる久慈川に思わず舌打ちをしそうになってしまう。本当なら褒めるべき場面なんだろうけど、どうしても褒めたくない。俺の葛藤を見抜いたのか杏奈が目線で「褒めてあげなさいよ」と言ってくるので観念して俺は口を開いた。


「ほんと良くやったと思うぞ」

「でっしょー!頑張ったんだもん!ほらほら!もっと褒めなさいよ!」


やっぱり褒めるんじゃなかった。渋々ながらの俺の褒め言葉にさえ、これだけ調子に乗れるのはもはや才能なのでは?まぁ頑張ったのは事実なんだし褒める位してやるよ。


「すごいすごい!ほんとすごいよ!」

「何かテキトーになってない?」

「なってないよ。ほんとにすごいと思ってる」

「なら良いや!」


テキトーなのは見抜かれたけどそれでも機嫌を良くした久慈川は純粋に褒めてくれる姫川の所寄って行った。俺はそれを見ながら大きな息を吐いてしまう。なんか褒めただけなのにドッと疲れたんだが。そんな俺の横に杏奈がきて苦笑いしながら


「よく出来ました」


小声で褒めてくる。その言い方がなんだか小さい子供に言うみたいで俺は恥ずかしくなってそっぽを向いてしまう。


「まぁさすがにあれは褒めてやらないと」

「ふふっ。そうですね」


キャッキャッしている久慈川と姫川を見ながら思わず2人して笑ってしまう。3ヶ月前からはホントに信じられん光景だなと思うがこれはこれで悪くないな何て思ってしまう。


「それで大輝!ご褒美はいつにする?」

「はい?」


俺は思わず声を出していた。ご褒美ってなんだよご褒美って!いつにするも何もそんなもん知らないんだが?首をかしげる俺に久慈川は呆れた顔をしている。


「前に約束したじゃん!成績上がったらケーキ奢ってくれるって!」

「確かに言ったな。言ってたわ」

「おっ!思い出したみたいだねぇ!何奢ってもらおうかなぁ?」


そういやそんな約束してたわ。色々あり過ぎてすっかり忘れてしまってた。まぁ言ったもんは仕方ないケーキの1つや2つ位奢ってやるか。


「え〜!絵里そんな約束してたの!いいな!」

「麻由子も成績上がってたんだし奢ってもらいなよ!」

「え〜!いいの!」

「大丈夫!大丈夫!」

「やった〜!」


なんだが俺の知らないところで姫川にも奢る事になっているんだが?全然大丈夫じゃないんだけど?何で勝手に決めてんだよ!


「ほらほら!杏奈も奢って貰おうよ!」


そう言ってまた奢る相手を増やしている。もはや奢られるのが確定しているかの様に盛り上がっている2人を見てこれは断る方が面倒くさい事になると直感した。俺は大きなため息をついて


「3人とも頑張ったから奢ってやるけどあんま高いのにするなよ」


そう言うしかなかった。そんな俺に杏奈は少し呆れながら声をかけてくる。


「良いんですか?そんな事を言って」

「いいよ。なんか断る方が面倒くさい事になりそうだしな」

「なんか絵里に甘くありませんか?」

「甘くないよ。前に妹に似てるって言ったろ。あのまま断ったら絶対要求が釣り上がる」

「そう言う事にしておいてあげます」


ちょっと不満そうにしながらも納得してくれたのか杏奈は手招きする久慈川の方に寄って行った。そんな杏奈の後ろ姿を見ながら俺はもう一つの約束も守らないとな。何にすれば喜んで貰えるんだろうかと考えるのだった。

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