第13話 清楚美人と気づきたく無かった事実
「ごめんね。また取り乱しちゃった」
あれから杏奈と久慈川に慰められた姫川は何とか落ち着いたようである。落ち着いているというよりもむしろシュンとしている方が正しいかもしれないしない。あんな姿を見せればそりゃそうもなるだろうな。普段の可愛らしい雰囲気など全く無くなって、早口で話す所なんてちょっと怖かったもん。しかし謝られたのであれば謝罪は受け取るべきである。
「別に大丈夫だよ。気にしてないし」
「ありがと。智くんの事になるとたまに自分を抑えられなくなる時があるんだよね」
姫川は自重気味に言うのだが、分かってるなら抑えた方がいいんじゃないか?そう思ったのだが、こういう事を言うとまたデリカシーがないだの言われてしまうので俺は全てを飲み込むことにした。
「めっちゃ好きなら仕方ないんじゃない?」
「私もそう思いますよ。それだけ相手の事を想っているということですから」
しかし女性陣は違ったようで姫川を擁護しながら慰めている。なるほどこういう事が出来なかいから女心が分かっていないと言われてしまうんだな。なんだか妙に納得してしまった。
「それにしても幼稚園の時からなんだよね?」
「うん。気が付いた時には好きになってた」
「どんな出会いだったんですか?」
「初めて会ったのは……」
俺のことなど気にすることなく女性陣による、恋バナが始まったので俺は静かに弁当を食べてやり過ごすことにした。女性がキャッキャッしている所に混ざりにくかったのもあるが何よりその意中の相手は中城先輩なのである!色んな意味で混ざり辛くなってもしかたないと思う。
俺が弁当を食べながら彼女達のやり取りをボーっと眺めていると
「てか大輝はその智くんさんと仲いいの?」
久慈川が急に話をふってきた。混ざりたくなかったのにほんと何で話をふってくるかな。まぁ聞かれたのなから仕方がない。
「まぁ仲は良いと思うよ。たまにご飯に連れて行ってくれたりするし」
「へぇ!いい人じゃん!」
ご飯に連れて行ってくれるだけで良い人にはならんだろう。久慈川よその考え方はあまりよろしくないんじゃないのか?
「智くんは優しいからね!」
姫川は満面の笑みでそう言うが、なんだかボッチの俺を中城先輩が構っているみたいに聞こえるのは気のせいだと思いたい。あれ?俺は気になった事を姫川に聞いてみることにした。
「てか中城先輩て友達少ないの?」
姫川は好きな人の事を『友達が少なくて鈍感』だと言っていたのだ。鈍感なのは分かる。だって現在進行系で実感しているからだ。しかし友達が少ないのは意外なんだよな。残念な人ではあるが、なんだかんだ面倒見はいいのだ。
「うん!少ないよ。ああ見えて誰とでも仲良くするタイプじゃないんだよね」
「まじで友達少ないんだな。最初から結構絡んで来てくれてたから割と友達は沢山いるんだと思っていた」
「全然だよ智くん友達の話とかもほとんどしないんだよ」
思わず中城先輩の意外な面を知ってしまった。
どっちかと言うと陽キャの部類だと思っていたんだけどな。
「だからビックリしたんだよね。そんな智くんが黒澤くんの話を楽しそうにするからさ」
そう言いながら姫川からまたちょっと暗黒面が出てきている。やめて!それほんと怖いから!
「そんな特別仲が良いってわけじゃないから」
「そんな特別仲が良くないのにあんなに楽しそうに話するんだ」
「あれだろ!顔合わせたからどんなやつか話しただけだって」
「じゃあこれからは智くんに会う度に私は黒澤くんの話を聞かされるんだ」
俺の言い訳はまたもや逆効果だったようで、姫川はまたもや沈んでしまった。せっかく落ち着いたのに逆戻りじゃないか!困った俺は助けを求めて杏奈を見るが何やら考え込んでしまって俺の視線に気付いていない。俺はどうしていいか分からなくなっていると
「でもラッキーじゃない?」
久慈川が突然そんな事を言い出した。どこがラッキーなんなだよ!この状況を見てみろよ!
俺は意味が分からず久慈川の方を見る。
「どこがラッキーなのよ!」
姫川も同じ事を思ったようで久慈川に疑問の声を上げた。しかしそんな事などお構いなしに
「だって大輝と仲が良いなら、麻由子とその先輩が仲良くなるの手伝ってもらえるじゃん」
久慈川はドヤ顔でそんな事を言い出したのだ。
は?何いってんの!俺が何を手伝うって?
「確かに!」
「でしょ!仲が良いからこそ聞ける事とかあると思うんだよね!」
困惑する俺を置いてけぼりにして久慈川と姫川は盛り上がっている。まずいこのままじゃ面倒くさい事に巻き込まれてしまう!俺は助けを求めてもう一度、杏奈を見るがやはり考え込んだままでこっちの会話に気付いていない。
「ね!杏奈もそう思うよね?」
そんな杏奈に久慈川が声をかける。突然の事に杏奈は驚きながら
「え?は、はいそうですね」
何の事か分からないのに肯定をしてしまった。
杏奈からも賛同を得たと勘違いした久慈川と姫川は満面の笑みである。
「黒澤くん協力してくれるよね?」
満面の笑みなのにめっちゃ圧のある姫川に迫られて俺は頷くしか出来なかったのである。
この状況で嫌だと言えるほどの度胸を俺は持ち合わせていなかった。こうして俺は姫川の協力者になってしまったのだ。
昼休みも終わりに近づいたので俺達は空き教室を後にして教室に戻っている。前を歩く久慈川と姫川は俺という協力者を得たことでご機嫌で色々と話している。後ろからそれを見ながら俺は思わずため息をついてしまう。俺の横を見ると杏奈はいまだに何かを考えている。
「どうした?何かあったのか?」
俺の声かけに杏奈はこちらを見ずに答える。
「考えていたんです。なぜ中城さんが大輝くんと仲良くしようと思ったのか」
確かにそれは俺も不思議に思った。でも今の状況で考え込むほどの事なのか?
「それで理由は分かったのか?」
「分かったのですが、正直これを今の状況で大輝くんに伝えて良いのか迷います」
そんな話せない様なことなの?不思議そうにする俺を杏奈は伺うように見てくる。その心配する表情を見て俺も気付いてしまった。
「杏奈、多分それは今は言わない方が良いと思うんだよ」
そう言って俺はチラッと姫川を見た。それを見た杏奈も理解したようで無言で頷いてくれた。
それを見て俺は心の中で頭を抱えてしまった。
まじかぁ!でも考えればそうなるよなぁ!
「私は大樹くんの味方ですからね」
杏奈の言葉が心に染み渡る。これ以上、面倒くさい事にならなければ良いのにと俺は心から思うのであった。




