第8話 清楚美人とご褒美の約束
「じゃあ結果は来週には出るから。今日はこれで終わりだが寄り道せずに帰れよ」
担任がそう言って教室を出た瞬間クラスはざわつき出した。今日でようやく期末テストが終了したのである。俺も解放感から思わず身体を伸ばしてしまう。今回は期間中いつもよりびっちりと勉強したのでかなり手応がある。
「お疲れ様でしたね」
隣の席から杏奈が声をかけてきたので、俺は杏奈の方に身体を向けて姿勢を正す。
「杏奈もお疲れ様。それと勉強付き合ってくれたお陰でいつもより手応えあったよ。本当にありがとうな」
そう言って俺は頭を下げた。今回びっちり勉強出来たのも手応えがあるのも杏奈のお陰なのである。感謝の気持ちを素直に伝える事は大切な事だと身に沁みている俺はきちんと杏奈に感謝を伝えたのだ。
「私も大輝くんのお陰で勉強が捗りましたのでお互い様ですよ。こちらこそありがとうございました」
そう言って頭を下げるのだった。お互いに頭を上げたところで目が合い思わず笑ってしまう。
教室で何をやっているんだと少し恥ずかしくなった俺はそれを誤魔化すように話しを続ける。
「まぁでもこんなに勉強したんだから杏奈の功績の方がでかいよ。何かお礼をしないとな」
「そこまでの事はしていないですよ」
「そこまでの事をしてもらったんだよなぁ」
実際、杏奈のお陰で苦手な数学もバッチリだったのだお礼くらい何てことない。そう思っていると杏奈は少し考えこんでから
「そうですね。ではテストの結果が前回よりもよければ何かお礼をして頂くというのはどうでしょうか?」
小首をかしげながら可愛らしく提案してきた。
お礼をしようと思っていた俺から反論など出るはずもなく
「じゃあそうしようか。お礼は何がいいか考えといてくれ」
2つ返事で了承するのだった。俺からの了承を貰った杏奈は
「わかりました。楽しみにしていますね」
そう言って嬉しそうにするのだった。そんなやり取りをしていると突然デカい声が俺達の間に割り込んできた。
「私へのお礼はないのかな?」
声の主は久慈川である。相変わらず声のデカいやつだ。どうやら俺達の会話を聞いていたようで自分にもお礼はないのかと強要してくる。
「俺はお前に勉強教えて貰ってないからな」
「え〜!一緒に勉強したじゃん!」
俺の返答に久慈川は唇を突き出して不満顔である。そんな顔したって無駄だからな!確かに一緒に勉強はしたが久慈川から特に何かを教えて貰っていないのにお礼などする筋合いなどないのだ。
「杏奈ばっかりずるい!私にもなんかご褒美ちょうだいよ!」
こいつ、ご褒美って言っちゃったよ!お礼ですら無くなったじゃねぇか。久慈川はなおもブーブー言っている。そんな久慈川を見かねた杏奈が苦笑いしながら提案する。
「では絵里が前回よりも成績が上がっていた時にはケーキをご馳走しますよ」
その言葉を聞いた久慈川は目を輝かせながら杏奈に抱き着くのだった。ほんと現金な奴め。
ちょっと呆れた俺に対して
「杏奈はこう言ってくれてるけど。優しい杏奈はケーキをご馳走してくれるって!」
久慈川は杏奈に抱き着いたまま何故か俺を責めだしたのだ。こいつまじかよ!俺は思わず舌打ちしそうになったが、ぐっと堪えた。ここで何か言えば倍以上になって返ってくるに決まっているからだ。そんな俺の方を杏奈が苦笑いしながら頷くのを見て俺はため息をつく。
「分かったよ。そん時は俺も杏奈と一緒に奢ってやるよ!」
「やったー!ご褒美くれるなら最初からそう言えば良いに!大輝は素直じゃないなぁ」
俺の渋々ながらの提案に対してこの言い様である。こいつまじでこんな所まで俺の妹にそっくりじゃないか。まぁ了承したのだから仕方がないか。ケーキではしゃぐ久慈川を見て俺と杏奈は今日何回目かわからない苦笑いをした。
「さて私へのご褒美も決まった事だし、テスト終わりの打ち上げにどっか行かない?」
さっきまでケーキではしゃいでいた久慈川がそんな事を言い出した。今日は午前中で授業が終わったのでバイトまで時間があるから俺は問題ないけど、そう思い杏奈をチラッと見ると彼女も俺がどうするか気なったようでこちらを見ていた。お互いに目で行く事を確認する。
「別に構わないけど、どこに行くんだよ?」
「うーん?どこがいいかな?」
こいつ自分で提案しておいて何処に行くのか決めてなかったのかよ!ほんと自由だな。
「カラオケとかどう?」
「カラオケは嫌だ」
「何でよ!」
「私もカラオケはちょっと」
「杏奈も!なら別のとこかぁ」
久慈川の提案に対して俺も杏奈も反対してしまった。さっきは行き先も決めてないとか文句言ってごめんよ。俺は心の中で久慈川に謝る。
まぁ俺も案の一つくらい出すかと何て考えていると俺達の会話に入ってくる人物がいた。
「あの!よかったら私も行っていいかな?」
突然の事に俺達3人は一斉にその人物の方を見るとそこには1人の女生徒が立っていた。一斉に見られた事で彼女は恥ずかしそうにしている。そんな彼女に対して久慈川が話しかける。
「麻由子も一緒に来たいの?」
「うん。3人に話を聞いて欲しい事があって」
そう言ってもじもじしているのは前に俺に話しかけてきた姫川麻由子だった。
「どうかな?」
小動物の様に上目遣いで見てくる姫川麻由子に対して俺達3人は疑問を浮かべらながらも頷くのであった。




