第7話 ギャルと久しぶりの限界突破
「それにしても姫川さんが大輝の事を知りたがってる理由って何なんだろうね?」
いつものコインランドリーでいつも通り一緒に洗濯・乾燥が終わるのを待っていると杏奈が思い出した様に聞いてきた。
「さぁさっぱり分からん。何せ名前も知らないくらいだからね」
俺がそう言うと杏奈は残念な子を見る目で見てくる。学校でも散々この目で見られたので何だか居心地が悪くて俺は目を逸らしてしまった。
あの後、俺は姫川さんの名前を知らなかった件で2人にめっちゃお小言を言われたのだ。
久慈川に至っては「まじでありえない」とまじで怒ってくるし、俺が「人の名前を覚える苦手なんだ」と言い訳には杏奈が「大輝くんはそういう所がありますよね」とめっちゃジト目で睨んでくるしで大変だったのだ。俺は少しでも名前を知らない件から話題を変えようと杏奈に話しかける。
「杏奈は姫川さんと久慈川ほど仲良くないんだよな?」
「まだ友達の友達ってくらいかな。絵里と仲が良いからそれで話してるって感じ」
「なら久慈川の時みたいに心配してるって訳じゃなさそうだな」
あれから3人で色々考えたが結局これと言った答えはでなかったのだ。俺の中で1番有力だった「杏奈激怒事件で急に目立ったから単に気になっただけ」説も杏奈と久慈川の2人からそれは違うっぽいと言われてしまったし。
「まぁ気にしても仕方がないか。そのうちわかるだろうしね」
分からないものは分からないのであんまり気にし過ぎても仕方がない。それに今のところ困る様うな事にはなってないしな。
「ほんとそういうトコ大輝らしいよね」
1人で納得していた俺に杏奈が呆れたように言ってくる。よせやい!照れるだろ!
「まぁ私としては大輝が姫川さんの事に気を取られないのは良いことなんだけどさ」
杏奈は壁に背を預けチラッと俺の方を見ながらそんな事を言うのだ。
「何がだよ?」
その視線に俺は思わず反応してしまったが、そんな俺に対して杏奈は大きなため息をついてジト目で俺を見てくる。
「大輝には他に気にして欲しい事がめっちゃあるって言ってんの!」
ちょっと強めの口調でそう言われた俺は
「善処します」
そう答えるしか出来なかったのだ。これでも俺なりに色々考えてはいるだが如何せんそこは俺なのだ。どうしたって残念な考えになってしまうのは許して欲しい。そんな風に心の中で言い訳をしていると
「まぁ待つのは得意って言ったちゃったしね!もうしばらく待つとしますか!」
杏奈はそう言いながら勢いよくベンチから立ち上がると俺の方を振り返って
「だから気がついた時はちゃんと教えてね」
そう言いながら微笑んでいる杏奈に俺は見惚れてしまい無言で頷くことしか出来なかった。
頷いた俺をみた杏奈は満足したのか俺の頭を撫でてきた。突然の行動に困惑していると
「学校以外だといいんだよねぇ?」
杏奈はニヤニヤしながら今日の放課後の事を持ち出してきた。確かに言ったけどさ!だからとその日のうちにするのは違うと思うんだよな!もはや何を言っていいか分からない俺に対して
「学校以外では頭を撫でて欲しいなんて、大輝はやっぱり好きなんだね頭を撫でられるの」
杏奈はご機嫌でとんでもない事を言い出した。
そこまでは言っていない!さすがの俺もこれには黙っていられなかった。
「そこまでは言ってない!学校で撫でるなって言っただけだろ!」
「え〜!好きって言ってたじゃん!」
俺の反論に対して杏奈も反論してきた。それもぐうの音もでなくなるやつをお出ししてきた。
確かに俺はここで、このコインランドリーで頭を撫でられるのが好きだと杏奈に白状させれているのだ。すっかり忘れていたギャルモノ事件の事を思い出して俺は黙ってしまった。
「思い出したようだねぇ」
杏奈は嬉しそうに俺の頭を撫で続けている。
そうめっちゃ良い笑顔なのだ。その良い笑顔を見ていると、ここであった事を色々と思い出してしまい恥ずかしくなってしまった。
「こんな大輝、久しぶりに見るね」
その言葉に思わずビクッとなってしまう。最近ではあまり無かったので油断ししていたが出会った頃は杏奈に辱めを受けていたのだ。何をされるか分かったもんじゃない!
「色々と思い出させてあげる」
杏奈は顔を寄せてくると怯える俺の耳元でそう囁くのだった。もはや俺に為す術などなかったのである。
「アハハハハッ!ごめんて!」
ベンチの上で膝を抱えて蹲っている俺に杏奈は笑いながら謝ってくる。しばらく好き放題された俺は羞恥の限界を超えてしまったのだ。
「ちょっとやり過ぎちゃったかな」
そう言いながら頭を撫でてくる杏奈を俺は半目で睨んでしまう。ちょっとじゃねぇよ!明らかにやり過ぎじゃないか!しかし羞恥の限界を超えた俺は声を出すことが出来ない。
「ここまでやるつもりは無かったんどけどさ。恥ずかしがる大輝を見たらついついね」
ついついでここまでやらないで欲しいんだが!
言葉に出来ない俺は視線でうったえる。
それを見た杏奈は落ち着いた声色で
「そういう所は変わらないなぁ」
そう言って撫でていた手を頭から離すと立ち上がり歩き出した。突然の出来事にポカンとしていると
「ほら大輝が恥ずかしかってる間に終わっちゃったよ」
杏奈はそう言って乾燥機のドアを開け洗濯物を取り出し始めた。それを見て俺もようやく膝を抱えるのをやめて杏奈の方に近づいていく。
「たのむから加減をしてくれ」
「それは加減すれば良いってことだよね?」
「そういう意味じゃない!」
まだ少しへそを曲げたままの俺は杏奈に不満をぶつけだのだが、ご機嫌な彼女は都合の良い解釈をしてくる。こんなの頻繁にされてしまうと
まじで精神がもたいのでやめてもらいたい!
そんな俺を見て杏奈はケラケラ笑っている。
「多分だけど俺が杏奈に勝てる日は一生来ないんだろうな」
さんざん俺を辱めて楽しそうにしている杏奈を見ていると俺はそう思ってしまった。
それを聞いた杏奈は
「じゃあ、私が大輝のこと一生からかってあげないとね!」
そう言ってさらにご機嫌になるのだった。
嬉しそうに洗濯物を畳む杏奈を見ながら、まぁ
それも悪くないと思ってしまったのは内緒である。




