第4話 コインランドリーにギャルがいた
バイトから帰宅した俺は今日持って行く予定のシーツ等を準備していく。
そして今日は先に風呂に入らない。
コインランドリーでふかふかになった布団を汗で汚さないためだ。
俺は少し賢くなったのだ。
自分でもどうかしていると思うが、それくらいコインランドリーにはまってしまったのだ。
コインランドリーのためにあれこれ考えるのが楽しくて仕方ない。
真剣にコインランドリーに向き合うのだ!
頭がおかしいと思われても問題ない!
やっぱり俺は賢くないかもしれない。
そうして準備を整えた俺は家を出て、コインランドリーに向けて出発したのだった。
昨日と同じ道を歩いてコインランドリーへ向かう。路地に入っていく時には、やはり高揚感が湧き上がる。
まるで秘密基地にでも向かう気分だ。
そして家を出て10分ほどで目的地に到着したのだ。
昨日と変わらない佇まいでコインランドリーは姿をあらわした。
夜の中で、ここだけ灯りがある様な感覚になる。レトロでノスタルジックな気がする。
やはりこの感じとても好みである。
中に入ると今日も利用客は居なかったが、乾燥機が動いていて、ゴウンゴウンという乾燥機の音だけが響いている。
今日も一人なのだと思うと自然と顔がほころんでしまう。
少し暖かく、乾燥していい匂いのする空間が今日も変わらず俺を迎え入れてくれた。
空いていたので昨日と同じ洗濯・乾燥機に持ってきたシーツ等を入れドアを閉めて両替機に向かう。
財布には1000円札が6枚あった。
そのうちの1枚を両替機にいれて100円玉に替える。これで準備完了だ。
100円玉を8枚投入すると機械が動き出す。
そして俺はベンチに座り昨日読みかけになっていた小説を取り出して読み始めたのだ。
日常から非日常へ。たった一人での楽しい時間の始まりである。
この時はそう思っていた。
この空間はとても集中できる。
だから小説に夢中になっていた俺は気づかなかったのだ。
さらに昨日、誰も入って来なかったため今日もそうだろうという思い込みもあったのだろう。
だから誰かが入店して来た事などまったく気付かなかったのだ。
「ねぇ!」
また、ここで誰かに声をかけられるなど考えもしなかったのも理由の一つだった。
小説に集中していた俺は何か声が聞こえる気がしたが構わず読み続けた。
「ねぇってば!!」
誰かが喋っている。
少し集中が途切れてしまった。
だが自分には関係ないことだ。
他の利用客が来たのだろうか?
もしかしたら電話か何かだろうか?
そう思いまた小説に集中しようとしたそのとき。
「ちょっと!聞いてる?」
そう言われたと同時に肩に何かが触れるのを感じて、驚き反射的に顔を上げたのだ。
「やっとこっち見てくれた」
一人の女性が、こちらをのぞき込んでいた。
俺は突然の出来事に驚いて固まってしまった。
俺にしてみれば急に人が現れたのだ。
しかも至近距離に知らない女性がいるのだ。
固まったままの俺は、瞬きもせずに目の前に
現れた女性を凝視してしまった。
俺の思考は完全に停止していた。
そんな俺をみて女性は困惑した表情になり。
「おーいっ?大丈夫?」
と俺の顔の前で手を振りながら声を掛けてきた。
状況が飲み込めずに固まっていたが、
心配する様な表情を見て、目の前の女性は、
俺に話しかけているのだとようやく理解することができた。
そして止まっていた思考が動き出した俺は、
絞り出すように一言つぶやいた。
「ギャルがいる」
残念ながら俺の思考は全く動き出しておらず状況も理解できていなかったのだ。
自分でも何を言っているのか分からなかった。
それを聞いたギャルはポカンとしていたが、
やがて笑顔になり爆笑し始めた。
その間も俺は動けないでいた。
ひとしきり笑ったギャルは目に溜まった涙を指でぬぐいながら
「第一声がそれ?」
と言ってまた笑顔になった。
俺はその笑顔に見惚れてしまい、思考は停止したままとなっていた。
初投稿になります。
完結目指して頑張ります。
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