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第16話 清楚美人と浮気男再び

「それで大輝くん、どう言う事か説明してくれますよね?」


いつもの空き教室で俺は杏奈に問い詰められていた。可愛らしく小首をかしげる杏奈の目は全く笑っていない。


「何であんな事になってんのか俺の方が聞きたいよ!」

「大輝くんが何かしたんじゃないですか?」


杏奈はジト目で俺を見てくる。何もしてないんですけど!だからその目で見ないで下さい!

あの後、クラスメイトに久慈川と付き合っているかと聞かれた俺はそれを否定したが彼女達は


「またまたぁ!隠さなくていいのに!」


などと言って俺の言葉を聞き入れてくれなかった。そして何時から付き合っているのか?どっちから告白したのか?などありもしない事実を嬉々として聞いてくるのだ。俺は話を聞き入れてもらえずに、どうしたもんかと困っていると


「お話中すみません。次の授業の事で先生に呼ばれていますので大輝くんをお借りしても宜しいですか?」


杏奈がそう言って助け舟を出してくれたのである。もちろん先生に呼ばれているなど全くのデマカセなのだが、優等生である杏奈が言う事なので彼女達はあっさり信じて俺は解放されたのだ。そして何故か助けてくれたはずの杏奈に、空き教室で問い詰められているのである。


「いつから付き合っていたのですか?」

「だから付き合ってないって!」

「だから最近コインランドリーでも会ってくれなかったんだ!」

「お互い忙しかったからだろ?」

「私にはバイトって嘘ついて、絵里と2人で会ってたんでしょ!」

「そんな事してねぇよ!」


さっきの女子生徒よろしく杏奈は俺の言葉など聞いていない。しかもまるで浮気男を問い詰めているかのようで、いつかのコインランドリーでの事が思い出される。杏奈にしてもいない浮気を問い詰められるのはこれで2度目である。なんか言葉も崩れてるし冷静ではないようだ。

どうすんだよこれ?困り果てている俺の事など気にする事なく、杏奈は浮気男もとい俺を問い詰め続けている。このままでは埒が明かない!

俺はこの場を何とかする為に杏奈の頭に手を置いて撫でた。とたんに杏奈は大人しくなった。よかった取り敢えず止まってくれた。

学校で女子の頭を撫でるなど恥ずかしくて仕方ないがこの場を何とかする為なら仕方ない。

恥ずかしさを押し殺して杏奈の頭を撫でたかいがあったようだ。


「やっと落ち着いたみたいだな」

「む〜!何か誤魔化されてる気がするんですけど!」


杏奈は膨れっ面で俺を見てきた。それを見て俺は思わず笑ってしまった。


「何で笑うの!」

「言葉遣い乱れてるぞ」


俺がそう言うと杏奈は恥ずかしかったのかソッポを向いた。もう大丈夫そうだな。そう思って手を頭から離そうとすると


「もうちょっと」


ソッポを向いたまま杏奈が言うのだ。俺は今度はバレない様に笑いながら、また頭を撫でるのだった。



「疲れたぁ〜!」


杏奈もすっかり落ち着いた頃に久慈川が言葉通り疲れ果てた顔をして空き教室にやってきた。

俺達の近くの席に座ると


「めっちゃ質問されたし!もうムリ!!」


そう言って机に突っ伏してしまった。俺は杏奈のおかげで脱出できたが久慈川は友達に捕まって質問攻めにされたようだ。そんな疲れ切った久慈川にお茶を出しながら杏奈が声をかける。


「それで、何でこんな事になっているんですか?」


なんか微妙に圧を感じるなぁ。

久慈川は疲れているからか、その圧には気づかずに質問に答える。


「なんか見られてたみたいなんだよねぇ」

「見られてた?」


杏奈が俺の方を見てくる。

ハイライトの消えた目で見つめてくる!


「そっ!私がナンパされてるとこを見られてたっぽいんだよね」

「ナンパですか?」


まるでお前は久慈川をナンパしたのか?とでも言いたげな目で杏奈は俺を見てくる。

いやいや!俺じゃないから!久慈川をナンパした事などない!俺はブンブンと勢いよく首を左右に振って必死に誤解をとく。


「あの日たまたまクラスの友達も来てたらしくてさ。んで大輝がナンパ男から助けてくれたのを見て勘違いしたみたい」


ようやく原因にたどりついた。遊園地でナンパされていた時の話のようだ。俺も大概だが久慈川も説明下手くそじゃないか?ちゃんとどこでナンパされたのか言えよ!おかげでまた冷や汗かいたじゃないか!しかしある疑問が生まれたので俺は久慈川に聞いてみた。


「でもあの日は杏奈もいただろ?なんでそんな勘違いが生まれるんだよ?」

「ナンパされた時は杏奈いなかったでしょ。

だから2人で来てるって思ったみたい」


そう言われればそうだった。

なるほど何とも単純だった。男子と女子が2人で遊園地に遊びに来ているのを目撃して、しかもその男子がナンパされる女子を助ける場面も見てしまったら付き合ってると勘違いしても仕方ないのか。


「2人じゃなくて杏奈と3人で遊んでたって言ったけどよかったよね?」

「構いませんよ。絵里はさすがですね」


杏奈は先ほどまでとは違ってご機嫌で久慈川の頭を撫でていた。相変わらずスイッチの切り替えがすげぇな。てかどこに機嫌の良くなる要素があったのか俺にはわからん。


「まぁでもどこまで信じたのかは分かんないけとねぇ」


久慈川はそう言いながら俺達を見てくる。


「なんだよ?仲良くなったから3人で遊びに行ったっじゃダメなのか?」


正確には無理やり連れていかれたのだが。

俺の答えに久慈川はあからさまにため息をついて呆れた顔をする。


「女子がそんなんで納得するわけないでしょ!都合の良い解釈してあれこれ妄想するんだからね!」

「なるほどね!久慈川も妄想でこじらせて、

俺をストーキングしたもんな」

「ストーキング言うな!」


まぁ少し茶化してしまったが、久慈川の言いたい事は何となくわかる。

それでも俺は変わらんけどな。そう思っていると杏奈が話だした。


「まぁ誰かに見られて困るような事はしていませんし。私達が仲が良いのも事実ですからね。大輝くんと絵里が()()()()()()()()のも事実なんですから、何か言われても堂々していれば良いと思いますよ。これまでどおり気にせずに学校生活を送ればいいんです」


そう言って俺の方を見ながら微笑む。確かにそれには俺も同意するが、それはそれとして何だか圧があるように感じるのは気のせいではないはずだ。


「まぁそれには俺も同意だな。気にするだけ無駄だろう?別に仲いいのは事実だしな」

「まぁ2人がそれでいいなら、私もそうする!しばらくしたら興味もなくなるだろうしさ」


という事で周りから何か言われても気にしないし、仲が良いのも隠さない方向で行くことが決まったのだ。


俺と久慈川が付き合っているのは事実ではないし、そもそも誤解から始まったのだ。久慈川もきちんと説明してくれた様だし、今後はとくに面倒なことにならずに収束するだろうと俺は楽観的になっていた。

本当の波乱はこの後やってきたのだ。


昼休みのあとは誰からも特に何も言わないまま過ぎて行った。たまに久慈川が友人にからかわれていたようだったが。しかし新たな波乱は突然、放課後になってやって来たのだ。

1人の男子生徒が俺の前に来るなり


「お前!久慈川さんと白瀬さんを二股してるんだってな!」


俺に敵意剥き出しで吐き捨てる様に言うのだ。

それを聞いた俺はまたもや唖然とするしか出来なかったのである。

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