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第13話 清楚美人とギャルと遊園地③

「なんでそんな疲れてんの?」


お化け屋敷から出てきた俺達を見て久慈川は聞いてきた。


「色々あったんだよ」

「何?そんな怖かった?意外とビビりだねぇ」

「別にビビったわけじゃないよ」


そう俺は別にビビったわけでも怖かったわけでもないのだ。これだけ疲れているのは他の理由があるからだ。杏奈が落ち着いたことで俺は油断したのだ。そしてここがお化け屋敷だということを忘れていた。お化け屋敷とは人を驚かす場所である。という事は杏奈が驚くのだ。驚くということは俺にしがみつくのだ。しがみつくということは柔らかいものが当たるのだ。そう当たるのだ。それはもうすごく当たるのだ。再び恐怖に怯えた杏奈はそれまでとは比にならないくらい当ててくるのだ。当てまくって挟まれてその度に俺は声にならない叫びを上げ続けて結果疲れ果ててしまったというわけだ。

そんな俺達を久慈川は指差しながら


「てか腕組んでるねぇ」


何て言いながらニヤニヤしてきた。

そこでようやくまだ杏奈が俺の腕にしがみついていることに気付いた。杏奈は慌てて手を離したが久慈川のニヤニヤはとまらない。


「ずいぶん楽しんだようだねぇ」

「こ、これは不可抗力です」

「不可抗力ねぇ?」

「もう知りません!」


そう言って杏奈はソッポを向いてしまう。

それをみた久慈川は


「も〜杏奈は可愛いなぁ!」


なんて言いながら抱き着いていた。


「からかわないで下さい」

「ごめんって」


何を見せられてるんだろうな。女子2人がイチャつくのを見ながら俺はそう思った。

しばらくイチャついていた2人だったが久慈川が杏奈に何やら耳打ちすると


「すみません。私は少しお手洗いに行ってきますね」


そう言ってトイレに行ってしまった。

また謎の密談か?なんて思っていると


「杏奈ちょっと化粧崩れてたからさ」


そう言って俺にウィンクしてきた。

どうやら今回は謎ではなかったらしい。


「黒澤くん絶対気付いてなかったと思うけど、杏奈が戻ってきても指摘したら絶対にダメだからね!」

「指摘しないよ!俺をなんだと思ってんの?」

「デリカシー皆無の男!」


俺は黙ってしまった。さすがの俺でもその位はわかる。デリカシーないもんな俺って。

でも皆無ってほどではないと思いたい。


「ありがとね」


デリカシーの無さに落ち込んでいると久慈川が急にお礼を言ってきた。


「何のお礼だよ?」

「色々に決まってんじゃん」

「色々?」

「そっ!今日助けてくれたのとか、前に杏奈と喧嘩になりそうなの止めてくれたりとか」

「別に大したことしてないぞ」

「それでも私は言いたかったの!」

「律儀なやつだな」

「素直じゃないなぁ」


そう言うと久慈川は楽しそうに笑い出した。

まったく何がそんなに楽しいんだか。


しばらくして杏奈が戻ってきたのだが、杏奈は俺達をみて困惑していた。なぜなら俺と久慈川が言い合いをしていたからだ。


「なんで?別にいいじゃん!」

「よくねぇよ!嫌に決まってるだろ」

「そんなんだからデリカシーないのよ!」

「関係ないだろ!サイドテールのクセに!」

「サイドテール言うな!2度と言うな!」


杏奈は俺達に近づいくと


「2人とも何やってるんですか!少し落ち着いて下さい」


そう言って久慈川を俺から引き離した。

引き離された久慈川は唇を突き出して不満顔である。それ久慈川のクセなんだな。


「それで何があったんですか?」


杏奈が俺に聞いてきた。俺は黙っていたが

杏奈が真っ直ぐ俺を見てくる。俺はその目が怖かったのであっさり吐いた。


「久慈川がジェットコースターに乗ろうとするんだよ」


杏奈が絶句している。めっちゃ真顔である。

それを見て俺も久慈川も冷静になった。


「2人が言い合いをしていたので心配したのですが、まさかそんな子供みたいな理由とは」


俺は思わず目を逸らしてしまった。

分かっている。正直くだらない理由だと。だがそれでも俺は乗りたく無かったのだ。

杏奈は大きなため息をついて久慈川を見る。


「絵里、ジェットコースターはダメですよ」

「わかった」


久慈川は渋々だが受け入れた。

杏奈は俺の方を見て言う。


「大輝くん、ジェットコースターに乗らない代わりに絵里が乗りたいものに付き合うのでいいですか?私も一緒に乗りますから」

「わかったよ」


俺も渋々受け入れた。正直、久慈川が乗りたいものとか嫌な気しかしなかったがそれより杏奈の方が怖かったからだ。


「久慈川、すまんな」


ちょっと大人気なかったなと思って俺は久慈川に謝った。


「私もごめんね」


久慈川も素直に謝った。それを見た杏奈は


「では仲良く遊びましょうか」


杏奈がそう言って俺達の手を握る。

何だか気恥ずかしかったけどこんなのも悪くないなと思ってしまった。こうして俺達は午後も遊園地を楽しんだのだ。

その後はとくに揉める事もなく遊園地を堪能していたのだがいい時間になってきた。


「次で最後にしよっか!」

「そうしましょうか。そろそろ暗くなってきましたし」

「何に乗ろっかなぁ」


杏奈と久慈川が最後にのるアトラクションを考えている。俺はそれをボーっとながめていた。

さすがに1日遊び回ったので疲れてたのだ。

これだけ遊び回ったのは何時以来だろうな。

そういや幼稚園の頃に来た時は最後に何乗ったっけ?そんな事を考えていると


「じゃあ、あれにしようよ!」


そう言って久慈川が指さしたのは観覧車だった。まじかぁ観覧車かぁ。出来れば乗りたくないな。


「大輝くんは大丈夫ですか?」


杏奈が心配そうに聞いてくる。


「正直乗りたくないが約束したからな」

「約束」

「杏奈と約束しただろ?今日は久慈川の乗りたいやつに一緒に乗るって」

「そっちですか」

「どっちだよ?」

「いえ、ではいきましょうか」

「いや、その前にトイレだけ行かせて」


ジェットコースターよりましだとは思うが万が一もあるからな。高い所に行く乗り物に乗る前はトイレに行っておかねば!俺は2人から離れてトイレに向かったのだ。



「すごくない!学校見えるじゃん」

「本当ですね。かなり距離があるはずですが、ちゃんと見えますね」


向かいに座っている杏奈と久慈川が景色を見てはしゃいでいる。


「ほら大輝くんも見てみませんか?」

「そうそう!せっかく乗ったのにもったいないじゃん!」

「いや俺は足元見るのに忙しいから」


そう足元を見ているから景色なんて見れない。

わぁ足元綺麗だなぁ!ずっと見てられる。


「大輝くん!現実逃避してもダメですよ」


杏奈にあっさりと見破られた。

いいじゃん現実逃避くらいさせてくれよ。


「いくら逃げても現実は追ってくるんだよ!」


久慈川のクセに哲学的に言うなよ!ちょっとカッコいいじゃないか!


「そこまで揺れるものでもないですし、大丈夫ですよ」

「揺れる揺れないの問題じゃない!高いか高くないかが問題なんだよ!」

「まったく困った人ですね」


ゴネる俺を呆れた顔で見た杏奈が立ち上がったかと思うと俺の横に座った。杏奈が横に来たとたん甘い匂いがする。とたんに別の緊張が高まった。


「ほら私がそばにいるから怖くないですよ」

「い、いやちょっと近くないか?」

「そんな事ないですよ。元々広い席ではないですし」


いやいやいやいや!明らかに俺の方に寄ってきてんじゃん!この席3人掛けだよね!俺が杏奈と逆側にズレようとした時、


「杏奈ばっかりずるい〜!」


そう言って久慈川が俺がズレようとした側に座って来たのだ!


「はっ?お、お前なにやってんの!」

「杏奈が近くにいて怖くなくなるんなら、私も近くにいけばもっと怖くなくなるじゃん!」


どんな理論だよ!てか近いよ!近すぎるよ!

杏奈とは違う柑橘系の匂いがする。

俺は杏奈と久慈川に挟まれてしまったのだ。

もはや高いところがどうとか言ってる場合ではなくなってしまった。


「ちょと絵里!何しているんですか!」

「え〜さっき遠慮しないって言ったじゃん!」

「だからって急すぎます」

「いいじゃん!杏奈もやってんだしさぁ」


俺を挟んで言い合いしているから両サイドからグイグイと押される。柔らかいし、あったかいし、いい匂いがするしで俺の思考はショート寸前である。


「お、お前らもう勘弁してくれ」

「お断りします」

「私も〜!」


こうして観覧車が一周するまで俺は挟まれ続けたのである。もはや高いところに怯える俺はいなかった。代わりに恥ずかしさで俺は借りてきた猫の様に大人しくなってしまったのだ。そんな俺を見逃す杏奈と久慈川ではなかった。終始ニヤニヤした2人にされるがままとなっていたのである。観覧車から降りた時には精神的にグロッキーだった。


「少しやり過ぎてしまいましたね」

「いやぁやっちゃったね」


そんな俺を見て反省を口にするが2人とも絶対に反省してなどいない!だってめっちゃ満足そうな顔してんだもん!やりきった感ダダ漏れしてるぞ!何なんだよほんとに!


「楽しかったよね」


不意に久慈川が今までにないくらい落ち着いた声色で話出した。俺も杏奈も久慈川をじっと見てしまう。


「また来ようね!3人でさ」


そう言って俺達を見る久慈川は何だか少し大人に見えた。


「そうですね。また3人で来ましょう」


杏奈がそう言うと久慈川は杏奈に抱き着く。

さっきまでの顔は見間違いだったのかと思うくらい無邪気な笑顔で抱き着いていた。


2人を見ながらまぁそれも悪くないかなと思うのだった。

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