第12話 清楚美人とギャルと遊園地②
久慈川がベタベタなナンパに合うハプニングはあったものの、戻ってきた杏奈と合流して無事にお昼ご飯を食べる事ができた。しばらくの間はアトラクションからの解放である。
「ひどくない!友達じゃないとか!」
「確かにそれは良くないですね」
「だよね!ほんと信じらんない!」
「まぁでも大輝くんですから」
俺は無言でメロンソーダをすすっている。
目の前で繰り広げられる俺への不満を聞きながらである。アトラクションからは解放されたが俺への不満からは解放されなかった。結局不機嫌なままの昼食は回避出来なかったのだ。
久慈川がナンパされた件を杏奈に報告し始めたまではよかったのだが、俺が友達に難色を示したのを話し出した辺りで怒りが再燃したようでこの有様である。話を聞いている杏奈も苦笑いになるほどで、俺は火に油を注がないように黙って受け入れる事を選んだのだ。
「怒ってたら何かトイレ行きたくなってきた!ちょっと行ってくる!」
どんな因果関係だよ!絶対関係ないじゃん!
席を立ってトイレに行こうとする久慈川に俺は声をかける。
「もうナンパされるなよ」
「うっさい!されないわよ!」
最後に俺は油を注いでしまったようだ。
心配しただけなのにな。悲しいもんだ。
俺がまたメロンソーダをすすっていると杏奈が話しかけてきた。
「それにしてもやっぱり大輝くんですね」
「何がだよ?」
やっぱり大輝くんってなに?
俺は俺でしか無いのだが?
「絵里を助けた事もそうですが、それ以外にも色々ですよ」
「色々ってなに?気になるんだが?」
「ふふっ今は秘密です」
そう言って人指を自分の唇に当てて微笑む杏奈に思わず見惚れてしまった。それを誤魔化すように中身の無くなったメロンソーダをすすってしまうのだ。
「まぁでも久慈川に何にも無くてよかったよ」
「そうですね。友人として改めてお礼を言わせてもらいますね。ありがとございます」
「杏奈にお礼を言われるのも変な感じだな」
「そうかもしれませんね」
2人で顔を見合わせて思わず笑ってしまう。
「何かめっちゃ楽しそうじゃん」
トイレから帰ってきた久慈川がニヤニヤしながら立っていた。
「今度はナンパされなかったみたいだな」
「うるさいな」
久慈川はソッポを向いてしまった。
なんだまだ不機嫌なのか?まぁそのうち機嫌も直るだろう。直るよな?
そんな感じ昼休憩を終えた俺達はまた揉めていた。お決まりの何に乗るかである。
「昼食べたあとにジェットコースターとかばかじゃないのか」
「腹ごなしにのるんじゃん!てかコーヒーカップよりましじゃん!」
「コーヒーカップでゆっくりするんだよ!」
「絶対気持ち悪くなるやつじゃん!」
「ジェットコースターもだろ!」
「私はお化け屋敷に行きたいです」
「どんだけお化け屋敷好きなんだよ!」
こんな感じでまた分かれたのである。
てか杏奈はなんでそんなお化け屋敷をおすの?
ホラー好きなの?
そんな感じでギャーギャー騒ぎながら俺たちが向かったのはお化け屋敷である。
あのあとまた杏奈と久慈川で密談が始まって、
その流れに俺はまたジェットコースターになる事を恐れていたのだが戻ってきたら久慈川が、
「お化け屋敷に行こう!」
そう言ったのである。なに?今度は久慈川が弱み握られてんの?杏奈は満面の笑みになってるしさ!まぁジェットコースターじゃないならいいかと思ったが、結局俺の主張は退けられているのである。あの密談まじでなんなの!
そんな感じでお化け屋敷に着いて俺は困惑していた。
「迷宮の館?」
「なんかお化け屋敷と迷路が合体してるみたいだよ」
お化け屋敷と言えば和風な感じや墓場を想像していた俺の前には遺跡の入口みたいな建造物が鎮座しているのである。えぇ思ってたのと違うんですけど。
「迷宮の奥に眠る財宝を君は見つける事が出来るのか?だってさ」
久慈川が看板を読み上げる。もうそれ迷宮じゃん!お化け屋敷要素どこ行ったよ!これにはホラー好きの杏奈もさぞガッカリしているんじゃないかと思い隣をみると、杏奈は満面の笑みになっていた。もうニッコニコである。まじで?
お前これでいいのかよ?すでに俺の思考が迷路に迷い込んでいた。
中に入って俺はより困惑していた。入り組んでいてまじで迷路になっていた事でも、しょぼい謎解き要素があった事でも、驚かしてきたのがミイラだった事にでもない。お化け屋敷に入ってからずっと俺の腕にしがみついて離れない存在に困惑していたのだ。そう杏奈が俺にしがみついているのである。さっきまでのニコニコしてた顔は恐怖に怯えた顔になってプルプル震えながらしがみついているのだ。
「うぅぅぅ」
呻きながら俺にずっとしがみついてくる。
そしてさらに困惑を深めるのはしがみついて
くることで色々当たっているのである。
そう当たっているのだ。柔らかい!めっちゃ柔らかいんですけど!なにこれ?なんなの?
いい匂いもするんですけど!俺はもうお化け屋敷どころでは無くなっていた。久慈川はそんな俺達に気づくこと無く
「なにこれー!」
と言ってハイテンションで1人で先に行ってしまった。俺達は置き去りにされたのだ。
「杏奈?大丈夫か?」
俺は腕に当たる柔らかいものや匂いを気にしないようにして何とか声をかけた。
「だめ。怖い」
おぉ。ほんとに駄目っぽいな。あまりにも怖がる杏奈を見ていると少し落ち着いてきた。
ホラー好きじゃなかったのか?あんなに行きたがったてたのに。何て考えていると角からミイラ男が出てきた。
「キャーーーーーッ!」
杏奈は大声をあげて俺にしがみついてきた。
「んーーーーーーっ!」
俺も声にならない声をあげた。ミイラ男に驚いたからではない。しがみつて来たことでより当たったからだ。柔らかい柔らかい柔らかい!
めっちゃ当たってるんですけど!当たってるんですけど!俺の腕挟まれてるんですけど!
何とかしなければ!俺は怯える杏奈を何とか落ち着かせようと考えるが、頭は柔らかいもので埋め尽くされて上手く考えられない。
上手く考えられない俺は怯える杏奈を見て、自然と頭を撫でていた。
一瞬驚きで杏奈の肩が揺れたが、俺に頭を撫でられているのが分かったのか抵抗する事はなかった。俺は杏奈が落ち着くまでその場で頭を撫で続けた。ミイラ男は空気を読んで奥に消えてくれた。
「ありがと。ちょっと落ち着いた」
落ち着いた杏奈はようやく話せるようになったようだ。相変わらずしがみつているが今は当たっていない。俺もようやく落ち着けた。
「お化け屋敷行きたがってたからホラー大丈夫なのかと思ったよ」
「じ、じつは怖いの駄目なの」
杏奈はおずおずと上目遣いでそんな事を言い出した。ちょっと震えながらなので小動物みたいだな。それを見てだいぶ落ち着けたぞ。
「それなら何であんなに行きたがったの?」
「大輝と」
「俺と?」
「大輝と一緒なら大丈夫かなって」
俺の事をチラッと見ながらそんな事を言うのだ。俺はまた声を上げそうになった。
まじで今そんな事いうのやめてよ!
何とかこらえた自分を褒めたい。
「このままくっついててもいい?」
「大丈夫になるんなら良いんじゃないかな?」
「何で疑問系なの?」
杏奈はそう言って笑いながら少し力を込める。
俺は恥ずかしさでソッポを向いてしまう。
「安心出来るなら好きにしなよ」
「ありがと」
杏奈は俺のぶっきらぼうな答えにも嬉しいそうにしてまたしがみつく力を強めるのだった。
俺は叫び出したいのを我慢してまたお化け屋敷を進みだしたのである。




