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第10話 清楚美人は阻止したい

「ねぇ?サイドテールってなに?」


追い返す訳にもいかず結局、俺達3人は空き教室で一緒にお昼を食べる事になったのだ。

俺は杏奈の手作り弁当に舌鼓を打っていた。


「ねぇってば!」


いやぁこの玉子焼きめっちゃ美味いな!

そぼろご飯との相性も抜群だ!

ほうれん草のおひたしもいいな。

そうやって手作り弁当を堪能していると久慈川が急に立ち上がって俺の肩を掴んできた。


「ねぇなんで無視するの?」

「別に無視なんかしてないよ」

「ずっと話しかけてんのにしゃべってくんないじゃん!」

「お前がサイドテール、サイドテールうるさいからだろ」

「やっぱ無視してたんじゃん!」


うっかり本音が出てしまったら、久慈川が俺を睨んでくる。だってサイドテールしか言わないんだもん。そんな俺達を見かねた杏奈が仲裁に入ってくれた。


「大輝くん、あんまり絵里に意地悪したら駄目ですよ!あと絵里は大輝くんに近づき過ぎだと思います」


そう言って俺から久慈川を引き剥がす。

なんか久慈川への注意がおかしい気もするが、確かにやり過ぎたのは事実である。なんか妹を相手にしている気になってしまうんだよな。


「ごめんな。ちょっとやりすぎた」


俺は素直に謝った。悪いと思ったら謝る事は大切なのだ。俺は身を持って知っている。


「謝ってくれるんなら許す!」


謎の上から目線にイラッとしそうになる。

いかんいかん!また杏奈に注意されてしまう。

取り敢えずお弁当食べて落ち着こう。


「んでなんでサイドテール?」


まだ引っ張るのかよ!見ろよ!さすがに杏奈も苦笑いじゃねぇか!

俺はため息をついて説明をしてやる。


「サイドテールは髪型だ」

「「はっ?」」


あっ、ハモった。

久慈川だけでなく杏奈まで疑問の声を出した。

てか杏奈!ちょい素が出でるぞ!


「大輝くん?流石に意味が分からないです。

少し、いいえ、だいぶ説明を省きすぎでは?」

「それ!意味わかんないんだけど!」


2人して俺が悪いみたいに言うのやめて。

わかってるから。俺が説明下手くそなのは分かってるからさ。俺は気を取り直して説明する。


「髪型、サイドテールでしょ?それで心の中ではサイドテール久慈川って呼んでたからさ。

なんかつい言っちゃったんだよね」


よし!今度はちゃんと説明出来た。なかなか良かったんじゃないか。金髪ギャル久慈川の時もあったけどややこしくなるから言わなかった自分を褒めたい!2人も分かってくれただろうと思い目をやると久慈川が俯いてプルプルしている。杏奈は残念な子を見る目で俺を見ている。

いまので分からなかったのか?


「可愛くない」

「はい?」

「可愛くなーーーい!」


久慈川は大声で叫び出した。


「なに?サイドテール久慈川って!全然かわいくないんですけど!そんな売れない芸人みたいな名前で呼ぶのやめて!心の中だけにしといてよ!てか心の中で呼ぶのもやめて!」


まさにお手本のような不満爆発だった。それは思わず感心してしまうほどの爆発っぷりだ。

いやぁ見事なもんだと思っていると


「大輝くん流石にそれは絵里が可哀想ですよ」


杏奈にやんわり注意されてしまった。


「あんなー!」


久慈川は杏奈の名前を叫びながら抱き着く。

杏奈はそんな久慈川の頭を撫でながら


「大輝くんはもう少し女心を学んだ方が良いと思います。いえ必ず学んで下さい」


真剣な顔で俺に言ってきた。女心とか学べる気がしなかったが俺は頷いていた。頷くしかなかった。それくらい迫力があったのだ。

頭を撫でられて落ち着いたらしい久慈川は杏奈に抱き着いたまま俺を睨みつけ要求してきた。


「ぜっったい!サイドテールって呼ばないで」

「分かったよ。ちゃんと久慈川って呼ぶから」


俺はあっさりその要求を受け入れた。俺は別にサイドテールと呼びたいわけではないのだ。

この手のタイプはここで反発しても面倒な事にしかならない。これにて一件落着だと思ったのだが、久慈川は抱き着くのをやめて何やら考え込んでいる。俺は嫌な予感しかしなかった。


「久慈川も可愛くない」

「はい?」

「なんか久慈川も可愛くないよね」


ほんと何言い出してんの?見てみろ!杏奈も困惑してるじゃねぇか!そんな俺たちを置いてけぼりにして久慈川は続ける。


「可愛くないから名前で呼んで!」

「久慈川って呼んでるだろ?」

「違う!名前だよ名前!絵里って呼んでよ」


はい来ました。嫌な予感バッチリ当たったよ。

名前呼び要求して来ちゃったよ。これだから

ノリと勢いで生きてる奴は困るんだよ。

俺は面倒な事にならない様に、久慈川の要求に対して


「いやです!ごめんなさい」


きっぱりと拒否して頭を下げた。

そんな面倒な事にしかならい様な呼びたくもない名前を呼ぶなど絶対いやだ。


「なんでよ!呼んでよ!」

「いやだよ!呼ばない!」

「杏奈の名前は呼んでんじゃん!」

「杏奈はいいんだよ」

「何それ!ひいきじゃん!」


久慈川は俺の拒否を拒否してきた。杏奈を引き合いに出してまで。贔屓ってなんだよ。別に贔屓などしているつもりはない。それでも納得しない久慈川は駄々をこね続けている。

そう言えば杏奈がしゃべってないな?そう思って杏奈を見るとニヤけた顔で口をもにょもにょしている。どういう顔なのそれ?


「杏奈?大丈夫か?」


俺は杏奈の顔の前で手を振りながら声をかける。


「ひゃっひゃい!」


急な声掛けにビックリしたのか声がうわずっている。それに俺もビックリした。

俺と目があった杏奈は慌てて咳払いをして取り繕おうとするが口元はニヤけている。ほんとどうした?

いつものすまし顔になった杏奈は久慈川に向かって話し出した。


「大輝くんを困らせてはいけませんよ。嫌がっているのに強要するのはいけません」


俺は耳を疑った。杏奈も強要したじゃん!名前呼びを強要したじゃん!なんなら拒否権なかったじゃん!別にいいんだけどさ。名前を呼ぶことに対して何ら不満はない。了承したのも俺なのだ。でも強要はしたよね?唖然とする俺を置いてけぼりにして2人の会話は続いている。


「別に強要なんかしてないじゃん」

「名字呼びでもいいじゃないですか」

「可愛くないじゃん!名前がいいの」

「無理を言っては駄目ですよ」

「無理じゃないし」

「大樹くんが呼びたくないと言っています」

「そんな事ない!」


ほんとに置いてけぼりである。俺のことなど

そっちのけでヒートアップしちゃってるもん。

言い合いを始めた2人はついに睨み合ってしまった。昨日仲直りしたのに何でこうなるかな。

俺はため息をつきながら、まずは久慈川に話しかけた。


「これ以上わがまま言うならサイドテールって呼び続けるぞ」

「サイドテールは絶対いや!」


すごい勢いで俺の方を見て言い切った。そんなに嫌なのかよ。思わず苦笑いしてしまう。

次に杏奈に話しかけた。


「杏奈も俺の為なのはありがたいけど、少し熱くなり過ぎてるぞ」

「大樹くんの為だけではないと言いますか」


俺から目を逸らして他にも何かゴニョゴニョ言っている。対照的な反応だな。まぁ少し落ち着いてくれたみたいで良かった。まだ不満はあるみたいだが。だって久慈川は唇突き出してるし杏奈は俺を恨めしそうに見てくるし。

何でこんな事になったんだと、ため息をつきそうになったがよく考えれば原因俺だったわ。

俺がサイドテール呼びしたのが原因だわ。

完全に自業自得である。仕方がない。


「久慈川、俺達は昨日初めて話しただろ?」

「だから?」

「そんな奴を俺は名前呼びしないんだよ」

「でも杏奈の事は急に呼び出したじゃん」

「杏奈とはクラスが一緒になる前から仲良かったんだよ」

「そうなの?」

「そうだよ。だから名前で呼んでる」

「なら私とも仲良くなったら名前で呼んでくれるんだよね?」

「仲良くなったらな。その時は名前でも何でも好きに呼んでやるよ」

「絶対だからね!約束したからね!どうしよう何て呼んで貰おうかな?」


そう言って1人ではしゃぎ始めた。どうやら機嫌が直ったようだ。ほんと単純で助かる。

一仕事終えた感を出していると杏奈がスッと横に寄ってきて


「本当に名前で呼ぶんですか?」


恨めしそうに俺を見ながら小声で話しかけてきた。まだ何か不満があるみたいだ。


「仲良くなったらな。でも仲良くするとは言ってない」

「そういうことではないのですが」

「落としどころとしては妥当だろ?」


俺がそう言うと杏奈は少し驚いた顔をした後、

少し息を吐いて


「ありがとうございます」


そう言っていつもの顔に戻っていた。雰囲気もさっきまでと全然違う。それを見て俺は安心した。俺のせいで杏奈が友達と拗れるのは避けられたようだ。


「だからどっちがいい?」


突然話しかけられて俺も杏奈もビックリして声のする方を見た。久慈川が頬を膨らませてこっちを見ている。


「ちょっと聞いてる?やっぱ私は遊園地の方がいいと思うんだよね!」


俺はまったくついていけてない。チラッと横を見るとどうやら杏奈も同じくついていけてないようだ。仲間がいてよかった。


「すまんついていけないんだが?」

「しっかりしてよ!ずっと話してたじゃん」


どうやら久慈川は1人ではしゃいでた訳ではなくいつの間にか俺達に話しかけていたようだ。


「それで何だって?」

「やっぱ遊園地でしょ!」

「「遊園地?」」


俺と杏奈は揃って首をかしげた。

駄目だまったく話についていけない。


「そっ!やっぱ仲良くなるには一緒に遊ぶのが1番じゃん!」


久慈川は得意気に胸をはって言い切った。

こいつまじか?俺の仲良くなったら発言を聞いてここまで自分の中で話を進めてるとか。

俺は久慈川の事を見誤っていたようだ。全然わかってなかったのだ。こいつのノリと勢いの凄さを。久慈川は唖然とする俺達を気にもせず。


「だから今度の連休は3人で遊園地ね!」


そう言ってウキウキで遊園地でやりたい事を話し始める。もはや行くのが決定事項のように。

横で杏奈が「どうすんのよ?」みたいな顔で見てくるが俺も言いたいよ、これどうすんだよ?

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