第7話 清楚美人と新たなギャル
「だ〜か〜ら〜!私、黒澤くんのストーカーなんてしてないってば!」
「では何故、大輝くんを付け回していたのですか?」
「それは誤解なんだって!」
必死に俺へのストーカー疑惑を否定しているのは久慈川絵里。
金髪サイドテールが特徴のギャルである。
そう!クラス替え初日に杏奈に抱き着いていたギャルなのだ。
杏奈と彼女は1年の時に同じクラスになったことで仲良くなり、一緒にいることが多かったらしい。
金髪は染めているのではなく地毛だいとう。
母親がイギリス人でハーフなんだとさ。
因みに日本育ちなので英語は話せないとのことである。その容姿と人懐っこい性格から男女問わず人気があり、1年の時もよく告白されていたそうだ。
なぜ俺が彼女の事をこんなに知っているかと言うと杏奈から聞いたからだ。昨日クラスメイトからストーキングされている話をしたところ、彼女も久慈川絵里からの視線に気付いていたらしく、杏奈はなぜか俺に疑惑の目を向けてきたのだ。名前すら知らない事を必死に伝えたところ何とかお許しを得て、その時に彼女の事を教えてもらったというわけである。
「絵里なら放っておいても、そのうち自分から声をかけてくると思いますよ」
そう言われた俺は気にしない事にしたのだ。
そしたらこれである。まさかあんな突撃をしてくるとはさすがに思わなかった。
黒髪清楚美人が金髪ギャルを問い詰めている様は何だか面白いが話はまったく進まないので、俺も会話に参加することにした。
「久慈川さんは何で俺をストーキングしてたの?」
「ストーキング言うな!してないから!」
「では何をしていたんですか?」
「杏奈が最近なんか変だったからさ」
「私がですか?」
トーンダウンした久慈川さんは理由を教えてくれた。どうやら原因は杏奈だったようだ。
様子のおかしい友達を心配しただけだった。
なんだ友達思いの子じゃないか。
「そう!そしたらなんか黒澤くんと急に接近して、名前も呼びあってたからさ!これはなんかあるな!って、あとをつけてたんだよね」
今度はハイテンションで話だした。
心配してなかったわ。めっちゃくちゃノリノリでストーキングしてんじゃんこの子。
しかも原因俺だったわ。
呆気にとられる俺達など気にもせずに、彼女は続ける。
「そんであとつけたら2人でこんな人けのない教室に入って行くしさ。しかも2日連続でだよ!そんなの突撃するしかないっしょ!」
彼女はドヤ顔である。初めて話したがなんかこの子の事分かった気がする。これはあれだノリで生きてるってやつだ多分。しかも無駄に行動力があるタイプだ。俺は知っているんだ。この子はやっかいな子に違いない。
「それで2人で何してたん?」
「お昼を一緒に食べていただけですよ」
杏奈が答えてくれた。俺はこのテンションについて行ける気がせず、そっと会話からフェードアウトする事を決めた。
「こんなところで?」
「大輝くんは騒がしいところがあまり好きではないんですよ」
まぁその通りなんだけど、まるで俺がここを指定したかの様に言うのやめて。杏奈じゃんここを指定したの。
「ふ〜ん」
久慈川さんは納得してないようで、俺をジロジロ見てくる。なに?なんでそんな見てくるの?
やめて欲しいんだけど。
「杏奈が男と2人きりになるなんて珍しいよね?てか1年の時そんな事したことないし」
そう言いながら俺を見るのをやめない。
えぇ?だったら何?俺が一緒にいるのはご不満ですか?
「絵里は何が言いたいんですか?」
杏奈はそんな彼女に微笑みながら言うが目の奥は笑っていない。怖いんですけど!
なに?君ら友達なんじゃないの?なにバチバチやり合ってんの!
「べっつにぃ!ただ男のくせにコソコソしてんなぁって思って」
俺だったわ。バチバチしてんのは俺に対してだったわ!なるほど俺が連れ込んでると思われているようだ。でも何が言いたいのか分かった。
何を言うべきなのかも決まったのだ。
それにしてもこのタイプは分かりすくて助かるなんて思いながら、俺は再び会話に参加する。
「別にやましい事は何にもないぞ。元々は俺がここで食べてたんだ。杏奈の言う通り騒がしいのが好きじゃないからな」
俺の言葉に久慈川さんの表情が変わる。
「俺は別に誰に何を言われようが、どう思われようが気にしないが、面倒くさいのは嫌いだ。それにご飯はゆっくり食べたい。だからここで食べてるだけで、杏奈はそれに付き合ってくれてるだけだよ。そもそも何か言われるのが嫌なら教室で名前なんて呼ばないだろ」
彼女は目を見開いたあと
「いや〜思ったより良い男じゃん!
ごめんねぇ悪く言って!杏奈もごめんね!」
そう言いながら人懐っこい笑顔で笑っていた。
どうやら一安心かな。単純に友達の事を心配していただけなのだ。だからあとをつけたのだ。
「それにしても久慈川さんは友達想いだな」
久慈川さんがポカンとした顔になる。
「だってストーキングするくらい杏奈のこと好きなんだろ?」
俺は目を閉じて腕を組んでウンウンと頷く。
「杏奈のことが心配で2日も俺をストーキングして、教室でも睨みをきかして。今日だって
俺が何かしないようにわざと大声で突入して来るくらいだもんな」
久慈川さんは俯いて顔を真っ赤にしてプルプルしている。俺は構わず続ける。
「まてよ?もしかして杏奈と一緒にお昼食べれないのが寂しかったんじゃないか?だから俺に突っかかったんだな。俺に取られると思ったんだ。なるほどな!」
俺が大げさに説明口調でそう言うと、俯いていた久慈川さんは勢いよく顔をあげて
「なんで言うかなあ!!やめてよ!恥ずい!
何で全部言うの!ほんとなんなの!」
顔を真っ赤にして恥ずかしさのあまり大声で叫びながら俺の肩を掴んで揺すってくる。
揺すられながらも俺は悪い顔をしている。
だってこいつのせいで俺は恥ずかしい事を言ったのだ。言わされたのだ。だからそれを誤魔化す為に俺は彼女が恥ずかしがる事を分かって全部声に出したのだ。そう道連れにしたのだ。
色々と暴露されて恥ずかしさからギャイギャイと騒がしかったのから一転して今、空き教室は静かになっている。その理由は単純だ。
大声を出した事と恥ずかしさとで疲れ切った
久慈川さんが机に突っ伏しているからだ。
それを見た俺はざまぁみろと思って悪い顔をしている。さらにそれを見た杏奈は呆れた顔をしている。
「大輝くん悪い顔をしていますよ」
「俺は悪くないぞ」
「まったく仕方ないんですから」
そう言いながら呆れた様に笑うのを見て俺は安心した。さっきまでのバチバチした雰囲気が無くなっていたからだ。杏奈は久慈川さんに近づいて話しかける。
「大丈夫ですか?」
「だじょばない」
「ふふっ」
「わらわれた」
「すみません。嬉しかったので」
久慈川さんが顔をあげる。
それを見て杏奈はとても優しい顔をしている。
「心配してくれて、ありがとございます。
明日は一緒にお昼食べましょうね」
「あんな〜!!」
久慈川さんは杏奈に抱き着いていた。
どうやらこちらも大丈夫なようだ。
ようやく俺は肩の力を抜く事ができた。




