第6話 清楚美人とストーカー
クラスメイトによるストーキングが発覚するという衝撃的な出来事があった翌日の昼休み、俺は杏奈といつもの空き教室に向かっていた。
杏奈の手元をチラッと見ると、いつもより少し大きい手提げ袋を持っている。それを見て俺は思わずテンションが上がってしまう。
「そんなに気になりますか?」
その言葉に俺は動揺してしまう。
え?何でバレてるんだ!さり気なく見たはずなのに!
「ふふっ。それだけ見られていれば嫌でも気付きますよ。心配しなくてもちゃんと大輝くんの分もありますから」
まったくさり気なくなどなかったらしい。
どうやら俺は自分で思っていたよりもチラ見していたようだ。俺は恥ずかしくなり頭をかきながら
「いや、誰かに弁当作ってもらうのとか久しぶりだったから」
なんてチラ見していた言い訳をする。
一人暮らしなので料理くらいはするが、弁当を作ってもらうなんて本当に久しぶりなのだ。
それが女子の手作りともなればチラ見する事くらい許して欲しいものである。
「それは誰に作ってもらったんですか?」
いつもより数段トーンが低い声が聞こえたので
何事かと杏奈を見て俺は固まってしまった。
目を見開き瞬きもせずに焦点が合っているのか合っていないのかわからない顔で俺を見ているのだ。目のハイライトが完全に消えている。
怖い怖い怖い!え?なんでそんななるの?
てか今までで、1番怖いんですけど!
「誰ですか?もしかして例の先輩ですか?」
恐怖で動けない俺をものすごい圧で問い詰めてくる。口の中が乾いてやばい。
これ間違えたら死ぬやつだ。
「は、母です。中学の時に、え、遠足のお弁当を、作ってもらったんです」
俺は震える声で何とか答えた。彼女はじっと俺の目を見てくる。目を逸らすな!絶対にだ!
逸したらやられる!沈黙が痛い。痛すぎる!
「私、早とちりしたみたいですね。ごめんなさい」
杏奈は声色も雰囲気も戻って、頭をさげたあといつもの様に微笑んでいた。それを見て俺は息を吐き出した。助かった。俺は生き残る事が出来たんだ。
まじで危なかった!いまだにスイッチが入るタイミングが分からない!毎回急すぎる。
そんな安堵する俺に彼女は近づいてきて
「でも大輝くんも勘違いさせるような事をしてはいけませんよ」
俺の口に人指を当てて首をかしげながら言ってきた。俺は無言で頷く事しか出来なかった。
だってその微笑みがめっちゃ怖かったから。
めっちゃ怖かったのだ。何か仲良くなればなるほど怖くなる気がするんだが。
ちょいちょい見せる尾上さんへ向ける敵対心もだんだん強くなってる気がする。
今は違う意味で絶対に合わせてはいけない2人である!
そんな命の危機を乗り越えてようやく俺は手作り弁当を食べることが出来たのだ。
「めっちゃ美味しかった!」
「それはよかったです。お茶どうぞ」
食べ終わった俺にお茶を差し出してくれる。
俺はそれを受け取りならが
「本当に美味しかった。ありがとう」
改めてお礼を伝えてからお茶をすする。
「大輝くんに喜んで貰えて私も嬉しいです。
あれだけ美味しそうに食べていただければ、
作ってきたかいがありました」
杏奈はそう言って微笑んでいる。
本当に美味しかったのだ。美味しすぎてあっという間に食べてしまった。それにしても料理も出来るとかやっぱすごいよな。
仲良くなっと思うけど、まだまだ知らない事も多いんだよな。俺はお茶をすすりながら、片付けをする彼女を見ながめていた。
『バァーーーンッ!!!』
急に大きな音と共に教室のドアが開け放たれたのだ。突然の出来事に俺は持っていたお茶をこぼしそうになった。これ受け取った直後だった制服びしょびしょになってたな、何て思いながら開け放たれたドアの方を見る。
そこには1人の女生徒が立っていた。
彼女は教室に入ってきてツカツカと俺達に近づいてくる。そして俺達の前まで来て立ち止まると左手を腰に当てて右手でこちらを指さして
「さぁ!吐いて貰おうか!いったい2人で何をしていたのかを!」
不敵な笑みを浮かべながら大声でそんな事を言い出したのだ。
それに反応したのは杏奈だった。スッと立ち上がって彼女の前に出る。
「昨日も大輝くんを付け回してストーカーまがいの事をするなんてどういうつもりですか?」
「す、ストーカー?」
杏奈の言葉に彼女から不敵な笑みが消えて困惑が生まれていた。杏奈はそんな事などお構いななしに続ける。
「説明してくれますよね?久慈川絵里さん」
杏奈は小首をかしげて微笑みながら彼女に告げるのだった。




