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第1話 清楚美人は宣言する

春休みにコインランドリーでギャルと仲良くなってから1ヶ月が経過した。その間、特に大きな出来事などなく平穏な学校生活を送れている。それまでに色々あり過ぎたから今くらいが丁度いいな、何て思いながら俺は朝の教室で本を読んでいた。すると1人の女生徒が俺に近づいてきた。


「黒澤くん、おはようございます」


そう言って丁寧にお辞儀をするのは同じクラスで隣の席の白瀬杏奈しらせあんなである。

綺麗な黒髪はツヤツヤのストレートで、綺麗すぎて黒色というより紫色に近い。整った目鼻立ちをしていて、切れ長で大きな目は少しタレ気味でまつ毛も長い。肌も透き通るような白さで、その容姿はまさに清楚美人といった感じだ。しかしこの清楚美人は仮の姿なのである。彼女の本当の姿はギャルなのだ!

そう!俺が春休みにコインランドリーで出会ったギャルは目の前にいる清楚美人、白瀬杏奈なのである。その事実が分かった最初こそ混乱してしまったが、今ではすっかり慣れたものである。いや、今でもたまに混乱するのは内緒だ。


「おはようさん」


俺はやや素っ気なく挨拶を返すが、別に嫌っているわけではない。お互いに学校では積極的に関わっていないだけだ。彼女もそれを分かっているから俺の愛想が悪い挨拶にも微笑んでくれるのだ。

学校では関わっていないが、春休みが終わってからも通っているコインランドリーではがっつり関わっている。というか一緒に洗濯する仲なのである。そう同じマシーンに洗濯物を入れて一緒に洗濯をしているのだ。

これに関してはいまだに俺は納得していないが、杏奈から言い出した事なので俺は受け入れるしかなかった。

まぁそんな感じでコインランドリーでは仲良くしている。相変わらず学校で話せる友人は少ないが楽しく過ごせているので問題ないな。

そんな事を考えているとスマホが振動した。

恐らくメッセージが届いたのだろう。送り主も想像がつく。俺はスマホを取り出しメッセージを確認する。送り主は想像通り杏奈であった。


『放課後に少しお話したい事があります』


珍しく丁寧な言葉遣いだ。いつもはもっと砕けているのに。不思議に思い俺は隣を見る。

すると杏奈と目が合い、彼女はニコリと微笑んで前を向いた。

何かいつもと違うなぁと思いながらも、まぁ放課後になれば分かるか!とそれ以上深く考える事をやめてしまった。


放課後、俺は杏奈に会うために校舎の端っこにある空き教室に向かっていた。

ここに来るのも新学期初日に杏奈に呼び出されて以来である。あれからまだ1週間くらいしか経っていながすでに懐かしく感じる。

指定された空き教室に着いたので扉を開けて教室の中に入ると杏奈がすでに待っていた。


「すまん。待たせたな」

「いいえ。こちらこそ急にお呼びたてして、申しわけありませんでした」


いつもなら砕けた話し方になるのに今日は丁寧なままである。違和感がすごいんだが。


「どうした?何かあった?」


俺は素直に疑問をぶつけてみた。

すると彼女は微笑みながら


「そうですね。何かあったわけではないですが、思う所はありますね。大輝くんに対して」

「思うところ?」


俺は訳がわからず首をかしげてしまった。

そんな俺を見て杏奈は呆れた顔をする。


「最初に言いましたが、私は学校でも大樹くんと仲良くしたいと思っています。ただあまりグイグイ来られるのは困ると言われたので、しばらくは様子見をしておりました」


確かにそんな事を言った。最初に呼び出された時に、ここで俺は彼女に伝えたのだ。

仲良くするのは構わないが、急にグイグイ来られるのは困ると。


「ですが大樹くんはいつまで経っても仲良くするそぶりも見せず、()()()の私に慣れる様子もないじゃないですか」


だんだんと語気が強くなっており、目も何だか怖い。俺の顔は若干引きっている。


「それに挨拶をしてもいつも素っ気なく、私は名前を呼んでいるのに大樹くんは名前を呼んでくれすらしないのです。このままではまったく、これっぽちも進展しないと思ったのです」


俺の挨拶が素っ気ないの気にしてるじゃん!

めっちゃ気にしてるじゃん!

名前呼ばなかったのも怒ってんじゃん!

あの微笑みの意味は思ってたのと全然違った。

何が分かってくれてるだ!分かってないのは俺の方じゃないか。そんな俺を見て彼女はため息をつく。


「やっぱり分かってなかったみたいですね。

お伝えして良かったです。このままでは勘違いさせたまま無意味に時間だけが過ぎるところでした」


それを聞いて俺の顔はますます引きつるのだ。何てことだ!俺はとんだ勘違い野郎だった。

まじで最悪である。

てか思うところしかないじゃん!

不満たまりまくってんじゃん!

そんな俺を無視して彼女は続ける。


「ですから前にお伝えした通り、次の段階に進めさせてもらいますね」


彼女は目が笑っていない笑顔で俺を見ながらそう宣言をしたのである。もはや俺に拒否権などなかった。


こうして俺は杏奈と学校でも仲良くするためにがっつり関わる事を受け入れたのである。

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