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第23話 ギャルとコインランドリーで仲良くなったら

あの後すぐに担任が教室に入ってきて、そのまま始業式のために体育館に向かったのだ。

そのため聞きたい事も聞けずに俺は悶々としている。

現在は休み時間。しかしギャルもとい清楚美人は友人と何やら話をしていて俺は話しかける事が出来ず、本を読むふりをしているのである。


「杏奈とまた一緒のクラスでよかった!」

「私も同じクラスになれて嬉しいですよ」

「絶対私の方が嬉しいし!」


テンションの高い金髪サイドテールのギャルが

黒髪清楚美人に話しかけている。その異色な組み合わせは周りから注目を集めていた。

しかし、俺は違う意味で目が離せなかった。

清楚美人が丁寧な言葉遣いで、ギャルと戯れているがその清楚美人はギャルなのだ。

ギャルが清楚美人で清楚美人はギャル。

ギャルな清楚美人はギャルと友人でギャルと戯れているが実は清楚美人でギャルである。

だめだ!脳がバグってくる。落ち着け!


深呼吸をした俺はチラッと横目で隣を見る。

清楚美人が微笑みなが何やら話をしている。

その微笑みは俺が知っている顔ではなかった。やっぱり勘違いだったのだ!あのギャルが清楚美人な訳がない。なんなら年上のはずだから同じクラスにいるはずがない!俺は無理矢理ではあるが自分を納得させて本に視線を戻した。

するとポケットの中でスマホが震えた。

何だろう?俺のスマホは普段あまりバイブ機能が使用される事はないのだ。友達少ないからね!俺はスマホを取り出して確認した。

そして勢いよく机に頭を打ちつけたのだ!


「な、なに?めっちゃでかい音したんだけど!」


金髪サイドテールのギャルがその音に驚いて、何事かとキョロキョロ周りを見渡している。

俺は顔を上げる事が出来ない。


「黒澤くん大丈夫ですか?」


心配そうに俺を呼ぶ声に思わずビクッと体を震わせてしまう。


「なに?なんかあったの?」


サイドテールギャルも俺に注目してしまった。

これでは無視を決め込むこともできない。

俺は恐る恐る顔を上げると、何が起こったのか分からず不安そうなギャルと心配そうな清楚美人がこっちを見ていた。

俺は色々と言いたい事を飲み込んで冷静に対応する。


「ちょっと驚いただけだから」

「そ、そう?でも、すごい音したけど」

「驚かせてごめん。でも大丈夫なんで」

「黒澤くん、おでこ赤くなっていますよ?

本当に大丈夫ですか?」

「ほんと大丈夫なんで。」


ギャルは少し引きながらも心配してくれているが清楚美人は心配しているようで絶対心配していない!俺にはわかる!あのすました顔の奥で絶対にニヤニヤしているのだ!

しかし今ここで彼女に反応するのは悪手だ!

下手に言葉を交わすわけにはいかない!そんな俺は大丈夫マシーンと化してしまったのだ。

これ以上関わってくれるな!そんな願いが通じたのかチャイムがなり


「早く席につけよ〜」


などと言いながら担任が教室に入ってきた。

サイドテールギャルは俺を気にしつつも自分の席に戻って行く。清楚美人も前を向く。

助かった。あれ以上会話したら絶対ボロがでていたはずだ。

俺は大きく息を吐き、握りしめていたスマホの画面をもう一度みた。そこには先ほど届いたメッセージが表示されている。


『またギャルの本を読んでるの?』


読むわけないだろ!あの本はアレ以来俺の部屋で眠っているのだ!学校になど持ってくるわけがない!心の中で憤慨しているともう一通メッセージが届いた。


『あとでちょっと話しよっか』


送り主はどちらも同じ人物である。

俺は思わず送り主の方を見る。

彼女はニヤニヤしながらこちらを見ていた。

先ほどまでの微笑みが嘘のように。

そう他の誰でもない隣の席にいる白瀬杏奈こそがメッセージの送り主なのだ。

諦めよう。もう俺は受け入れるしかなかった。

隣の清楚美人がコインランドリーで出会った

ギャルと同一人物であるという事実を。


受け入れてしまうと色々な事が腑に落ちる。

ギャルが俺の春休み最後の日を知っていたり、連勤の日数を正確に言い当てたり。

そりゃそうだ。ギャルも同じ学校に通っているのだから春休みの始まりも終わりも知っているはずだよな。そういや昨日の別れ際に俺の事をフルネームを呼んでたわ!苗字なんて教えてないのに!なんで気付かなかったのだろうか。

自分の察しの悪さに落ち込んでしまう。


そんな残念な俺は1人で校内を歩いていた。

ギャルもとい白瀬杏奈から呼び出しをくらったからである。指定された場所は校舎の端っこにある使われていない空き教室である。

俺は指定された空き教室についたので意を決して扉を開けて中に入った。


「おっ!きたきた!早かったね」


すでに彼女は教室に来て待っていたようで、机の上に座って足をプラプラさせながら笑顔で手を降ってくる。その姿は先ほどまでの、清楚さなどかけらもなかった。俺はため息をつきながら彼女に近づき話しかける。


「来ないと何されるか分からないですからね」

「ひどくない!何にもしないよ!」


白瀬杏奈は頬を膨らませて怒っている。

そのあざとさを見ながら、やっぱあのギャルなんだなぁと再認識する。


「いやぁそれにしても想像以上に驚いてくれて大満足だよ!」

「やっぱりあのギャルなんですね」

「そうだよ!いつ気づくかなぁって思ってたんだけど、全然気づかないからさ」

「気づくわけないじゃないですか」

「だよね!私の事、年上だって思ってたみたいだし」


彼女は座っていた机から飛び降り、下から俺を覗き込みながらニヤニヤしていた。

俺はここで最も重要な事にようやく気付いた。

そうだ目の前にいる人物はあのコインランドリーで出会ったギャルなのだ。という事は俺の恥ずかしいアレコレを知っているのだ。全て知っているのである。なんてこった!

俺は思わず頭を抱えてしまった。


「アハハハハッ!また頭抱えてるじゃん!」

「ようやく色んな事に気づいたんですよ」

「恥ずかし事、たくさん知られちゃったもんね」


俺は爆笑する白瀬杏奈を睨みつけた。

そんな事など気にせず彼女は続ける。


「まっ安心してよ誰にも言わないからさ」


そう言ってウィンクするのであった!

俺は叫ばずにはいられなかった。


「あざとい!!」

「でしょ!今のはかなり意識したからね」


そう言って笑う彼女に俺は聞きたかった事を聞いてみた。


「そういえば白瀬さんは」

「杏奈!」


俺は無視して話しかける。


「しら」

「杏奈!」


今度は食い気味に被せられた。そして無言で俺を見つめてくるのだ。やめてその目で俺を見ないで。俺は無言の圧力にあっさり負けた。


「杏奈さんは」

「さんはいらないから」


俺のささやかな抵抗もあっさり退けられた。

目が笑っていない笑顔で俺を見つめてくる。

今度こそ完全敗北である。


「杏奈はいつ俺だって気付いたんだ?」


俺は敬語もやめた。だって絶対このあと指摘されるに決まっているから。あの目で見られるのめっちゃ怖いんだもの。

そんな俺の言葉を聞いた杏奈はとても良い笑顔だった。これくらいで笑顔になってくれるならまぁ良いかと思えてくるのである。


「最初から気付いてたよ」

「まじか!」

「まじ!すぐ気づいたよ。コインランドリーに入ったら大輝がいるって。だから話しかけたんじゃん」


最初から俺だと認識して話かけていたのか。

どおりでグイグイ来るはずだ。


「まっ大輝は私のこと全然分かってなかったみたいだけどね」

「だってギャルの知り合いなんていないし」

「学校じゃギャルじゃないけどね」

「清楚美人の知り合いもいないんだよな」


バイト先には1人いるが高校生じゃないしな。

てか杏奈はなんで俺の事を知ってたんだろう?

1つ疑問が解消したら新たな問題が誕生してしまった。俺が首をひねって考えていると


「大輝は私のこと美人だって思ってたんだ」


杏奈は嬉しそうにそんな事を言い出した。

はい?何でそんな事を言い出した?

訳がわからず困惑してしいたが、あっ!!

俺は自分の発言を思い出してしまった。

2度目のうっかりが発動してしまったのだ。


「いやぁ嬉しいな!大輝に美人だと思ってもらえて」


ギャルは上機嫌である。事実なだけに余計に

否定し辛い。くそ!何でこんな事に。

だが色々知られているのだ。こんな事くらい

今さらじゃないかとも思える。


「美人だと思ってるよ。今の清楚なのもギャルの時も思ってたしね」


俺は開き直る事にしたのだ。そんな俺の発言に杏奈は


「い、いや、そうやってハッキリ言われると何か恥ずいね」


そう言って真っ赤になった顔を手でパタパタしているのである。恥ずかしがっているのだ。

おぉ!狼狽えている所を初めて見たぞ!

めっちゃ新鮮だ!開き直って見るもんだな!

なんて思っていると


「ま、まぁそれは置いといて」


もうちょいイジりたかったがやり過ぎると反撃されそうなので大人しく会話の続きを待った。


「私としてはせっかく仲良くなれたから、学校でも仲良くしたいと思っているんだよ」

「別にいいけど急にグイグイ来るのははやめてね。まだ清楚美人の方に慣れてないからさ」

「また、美人って言った」


どうやら杏奈は褒められ慣れていない様だ。

良いことを知ったぞ!何かの時に使おう!

そう決意していると杏奈が誤魔化すように咳払いをした。


「もしかしたら嫌がられるかもと思ったんだけど、あっさり受け入れるじゃん」

「そもそもコインランドリーであんだけ話してたんだし今さらでしょ。逆に杏奈は俺と仲良くして大丈夫なの?」

「それこそ今さらじゃん!」


どうやら俺の心配など杞憂だったようだ。

確かにお互い今さらではあるな。


「まぁ教室で話しかけるのは様子見しながらかなぁ」

「その辺は任せるよ。たぶん俺からは話しかけないと思うし」

「なんで?話しかけてよ」

「そもそもそこまで社交的じゃないしね」

「そんな事ないと思うんだけど」


杏奈は納得がいかないようである。

俺が社交的ではないのは事実ではあるが、

もちろん理由は別にある。

だが気を使わせるのもなんなので敢えて言うことはしない。そんな大した事でもないしね。


「まっそのうち教室でも自然と話せるようにするから安心して!」

「なんか安心出来ないんだよなぁ」

「ひどくない?」


杏奈は頬を膨らませてプンプンしている。

その顔を見ながら今さらながら不安になってきた。簡単に了承するんじゃなかったかも。


「これでも学校では優等生で通っているんですよ」


そう言って微笑みながら首をかしげる。

杏奈は急に清楚美人モードになった。


「おぉ!違和感がすごい!やっぱ教室で話しかけないで。頭が混乱しそうだから」

「そんな悲しい事を言わないで下さい。大輝くんには、こちらにも早く慣れてもらわないといけませんね」


どうやら決定事項は覆らないらしい。

まぁいいか。これはこれで楽しめそうだ。


こうして春休みにギャルとコインランドリーで仲良くなったら隣の席の清楚美人とも仲良くする事になったのである。

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