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第20話 ギャルと春休み最後の夜(前編)

「それにしても、まじで春休み全部シフト入れたんだな」


今日もバイト終わりの休憩室にて中城先輩がタバコを吸いながら俺に話しかけてきた。


「そうですね。どうせ休み中もやる事とくに無かったですし、学校始まったらバイト入れる時間も減るので稼げる時に稼ぎました!」


得意気に語る俺を中城先輩は理解出来ないと言う顔で見てくる。別に良いじゃないか!

そう!俺は春休みの間、毎日バイトに勤しんだのである。皆勤賞だ!その日数は実に12連勤となった。そこらの企業戦士にも負けない働きぶりである。そして今日、目出度たく12連勤目が終了したのだ。同時に俺の春休みも今日で終わりをむかえるのである。

長い様で短かったなぁ、なんて感慨にふけっていると


「終わった感じ出してるけど、あんた今から大事な用事があるんでしょ?」


休憩室に入って来た尾上さんが話しかけてきた。そして俺を見るなりニヤニヤするのだ!


「ま、まぁ今からコインランドリーに行かないといけないですからね」

「コインランドリーにねぇ?」


くそっ!めっちゃニヤニヤしている!

そんなニヤニヤしなくても良いじゃないか!

尾上さんが言いたい事が何なのか分かったが、俺はしらを切る。


「はい。今からコインランドリーに行くんです!春休み最後に相応しいじゃないですか」


そんな俺の事などお見通しとばかりに、よりニヤニヤしながら言うのだ。


「まっ、そういう事にしといてあげる。早く行かないと遅れるわよ」


やっぱりこの人分かってるじゃないか!

分かっていてあんな物言いをするのだ!

弄ぶのは中城先輩だけにしてもらいたいのもである。

なのでそんな目で俺を見ないで下さい、中城先輩。本当に残念な人である。

そんな2人に見送られて俺は休憩室を出るのであった。


家に帰った俺は洗濯物の準備をして早々に家を出た。いつものコインランドリーへ向かう道を歩きながら、この春休みの事を思い返していた。本当に色々あった。始まりは洗濯機が壊れた事だった。それでコインランドリーに出会い、そしてギャルに出会った。

そこからは今までの高校生活で1番騒がしかったはずだ。でも楽しかった。とても楽しかったのである。その春休みが今日で終わってしまうのだ。何だか感情的になっている気がして思わず笑ってしまう。

気がつけばコインランドリーに到着していた。もう意識せずともここに来れるようになったのだ。コインランドリーは、もう立派な俺の日常になったのである。

そしていつも通りコインランドリーの中に入って、俺は固まってしまった。目の前の光景は完全に予想外であった。今日は、まったくいつも通りではなかったのである。


「おっ!来た来た!今日は私の方が早かったみたいだね」


コインランドリーにギャルがいたのである。

やってくれた!完全にしてやられた!

今日も俺の方が早いと思っていたのに!

いまだ入り口付近から動かない俺に向かって、


「おーい?だいじょぶ?」


なんて言いながらギャルは手を振っている。

それを見た俺はある思いつきをした。

せっかくの春休み最後の夜だしな。そう思い口を開いたのだ。


「ギャルがいる」


ギャルはキョトンとした顔をした後、ニヤッと笑って俺に返してくれる。


「第一声がそれ?」


どうやら俺の意図を汲んでくれたようだ。

2人して笑ってしまった。

こうして春休み最後の夜が始まったのである。


「今日も俺が先だと思ってました」

「ふふーん!今日は私が先に来たかったんだよね!少年をビックリさせたかったし」


得意気に胸をはるギャルを見ながら俺は洗濯物を洗濯・乾燥機に入れていく。


「じゃあ成功ですね。めっちゃビックリしましたもん」

「やったね!早く来た甲斐があった」


そう言ってギャルも洗濯物を入れ出したのだ。


「まだ始めてなかったんですか?」

「そっ!一緒に始めたかったんだよね。いつも待たせてるからさ」


ギャルが言う通り俺の方が先に始めているので、いつもギャルが終わるまで、こっそり待っていたのだがバレていたようだ。


「そんな気のしなくてもよかったのに。俺は好きで待ってたんですから」

「待たせるのってあんま好きじゃないんだよ。待つのは得意なんだけどねぇ」


そう言いながらギャルは意味ありげに俺を横目で見てくる。なんだろう何かすごい含みを感じるのは気のせいだろか。いや、気のせいだな!そうに違いない!俺はその視線から逃れる様に両替機に向かうのだった。


想定外の事もあったが、俺はようやくベンチに座ることができた。そしてギャルもいつも通り隣に座ってくる。最初はこの距離感にドギマギしていが、今ではすっかり当たり前になった。


「なんかこうやって座るのも当たり前になってきたね」

「俺もそう思ったところです」

「ふふっ一緒じゃん」


一緒か。その言葉に何だかむず痒くなってしまう。俺はその気持ちを悟られ無いようにしていたのだが


「少年嬉しそうじゃん?」


あっさり悟られてしまった。

ぐぬぬっ!なぜこうも見破られるのか。

俺ってそんなに分かりやすいのか?

するとギャルはケラケラ笑いながら


「また難し顔してる!私は嬉しいよ。少年も一緒なんだって思うと」


そうやって、なんてこと無く言うのである。

こうもあっさり言われてしまうと俺の負けである。少し素直になろうと思えてくる。


「俺も嬉しいですよ」


せめてもの抵抗としてソッポを向くのは許して欲しい。そんな俺を見てギャルはまた笑い声をあげるのだった。

でも不思議と悪い気はしない。


春休み最後の夜はまだまだ続くのだった。

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