第19話 俺の想いは伝わらない
「お前にしてはやるじゃん」
ギャルを送って行った翌日、バイト終わりの休憩室で中城先輩はタバコを吸いながら謎の上から目線でそんな事を言う。
「まぁ勇気を出してよかったですよ。中城先輩のアドバイスのおかげです。ありがとうございました」
上から目線にはイラッとしたが、中城先輩のお陰であるのは間違いないので、俺はお礼を言うのを忘れない。感謝を忘れるのは良くないと身を持って教えられたからな!
「別にお前の為じゃないけどな」
中城先輩は煙を吐き出しながらソッポを向いた。相変わらず褒められる事に慣れていない。
男のツンデレなど見たくないので、いい加減慣れて欲しいものである。
「んで、どうだったの?」
今度は尾上さんが聞いてくる。
相変わらず中城先輩の隣には座らずに立ってタバコを吸っている。
「ギャルを送って行ったあとですか?」
「それ以外に何があるのよ」
どうやらその後が気になるようだ。
俺は1番衝撃を受けた事を伝える事にした。
「ギャルの家、めっちゃすごかったです!」
「はい?」
「だから凄かったんですよ!」
「どゆこと?」
尾上さんがめっちゃ困惑している。
どうやら言葉が足りなかったようだ。
「なんかお金持ちが住んでそうなマンションに住んでました!オートロックで綺麗で高そうでなんかすごかったです!」
興奮して説明する俺を尾上さんは残念な子を見る目で見てくる。何故か分からんが、最近よくその目で見られる。まことに遺憾である。
「ギャル送って行った感想が、マンションがすごかったとか。期待した私がバカだったわ」
ほんとにすごかったんだけどなぁ。
すごさが上手く伝わらなかったようである。
俺の語彙力が問題なのだろうか?
「てか住んでるマンションまで行ったの?」
俺が首をひねっていると尾上さんがまたタバコに火をつけながら聞いてくる。
「はい。てかマンションまで行かないと送れないじゃないですか?」
何言ってんだこの人は?当たり前じゃないか。
逆に俺が残念な子を見る目で見てやろうか?
てかこの人タバコ吸いすぎじゃない。
「まじかぁ。。。そのギャルそこまでか。
まぁ送っていくの許してる時点でなぁ」
尾上さんは何やら1人で納得してしまった。
何がそこまでなのだろうか?
ますます意味が分からなくなってくる。
「やっぱこいつ何も分かってねぇな」
「私もここまでとは思わなかったわ」
2人して呆れた顔で俺を見てくる。
え?尾上さんはともかく中城先輩ですら分かってるの?なんかそれはそれで不安になってくるのだが。
あと中城先輩に言われると何かムカつく。
「まっそのうち嫌でも分かるでしょ」
尾上さんは答えを教えてくれる気はないようだ。出来れば早いうちに分かりたいんですけど!まぁ分からんことを考えても仕方がない。
そのうち分かるならまぁいいか。
「こいつ考えるのやめたぞ」
中城先輩は俺が思考放棄したことを瞬時に見抜いてきた。やめてそうやって見透かすの!
「んで今日も行くのか?コインランドリー?」
「いや、今日は行かないです。でも明日は行く予定です」
答えた通り俺は今日は行かないつもりだ。
俺の予定を聞いてきた中城先輩は鼻で笑いながら
「ちょっと前まで無理矢理にでも毎日行こうとしてたのにな」
なんて少し小馬鹿にいた感じで言ってくる。
いや、今でも毎日行きたいのは変わってないですけど!コインランドリー中毒を舐めないでもらいたい!
「ギャルと約束でもしたんでしょ?」
俺は思わず黙ってしまった。なぜならまったくその通りだからだ。
そう昨日の別れ際にギャルと約束したのである。しかも『明後日は必ず来て』と念を押されたのだ。だから俺は今日はコインランドリーに行かずに明日行くことにしたのだが、なぜ分かった!
ニヤニヤしながら俺を見てくる尾上さんが、ちょっと怖くなってくる。この人エスパーか何かなのだろうか。
それにしてもギャルと次に会う日を約束したの初めてだったな。前の時は確認だけで約束って感じでもなかったし。
しかも今回は『必ず来て』と念押しだもんな。
何かあるのかなぁ?まっ考えても分からんか!そうやって俺は久しぶりにバイト終わりのダラダラした時間をすごすのだった。




