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第17話 俺とコインランドリー

あの日、報告会の後もさんざんだった。

尾上さんと中城さんがラーメンを食べに連れて行ってくれたのだが、2人してアルコールを摂取してしまったのだ。そこから地獄のダル絡みが開始されてしまった。ただでさえヤバい2人がアルコールという武器を手にしたのだ。

もうヤバさが限界突破した。イジりダメ出し何でもござれである。しかもアルコールのせいで手加減がないのだ。手加減がなさ過ぎて何度泣きそうになったことか。そのウザさに何回も途中で帰ろうかと思ったが、中城先輩が奢ってくれるというので俺は甘んじてそのダル絡みを受け入れた。受け入れる代わりにせめてもの抵抗とばかりに追加で、ごま団子とコーラを頼んでやった。因みに尾上さんの分も中城先輩が払っていた。とういうか払わされていた。

にも関わらずちょっと嬉しそうな中城先輩を見て、ああはなりたく無いなと思ってしまった。


そんな調子だったので俺は翌日もイジられる事を覚悟していたが、2人とも全くイジってこず拍子抜けした。少し反省してくれたのかと思ったが、単純に二日酔いだったようだ。2人して休憩室でグロッキーになっていたので心の中でザマァ見ろと思ったのは内緒だ。

てかラーメン屋で二日酔いするくらい飲むとかやっぱりヤバい人達である。


そして今日、俺は変わらず朝からバイトに勤しんでいた。あの2人は揃って休みなのでとても静かで、最近は当たり前の様に毎日騒がしかったからか少し落ち着かない。そんな感じでどこかソワソワしながらバイトを終えた俺は、コインランドリーへ向かっているのだ。春休みが始まってすぐに出会ったコインランドリー。俺の春休みはコインランドリーと共にあったと言っても過言ではない!すぐさまお気に入りの空間となったコインランドリー。毎回ワクワクしながら向かったコインランドリー。

しかし、今日はいつもの様なワクワクはない。

そう緊張しているのだ。初めてコインランドリーに行った時よりもはるかに緊張している。

しかも理由はコインランドリーに行くからではない。ギャルに会うからだ。俺はコインランドリーのためではなく、ギャルに会うためにコインランドリーに向かっている。

立派なコインランドリー中毒となった俺がコインランドリー以外に気を取られているなど、まさに異常事態なのである。そんな事を考えていると、いつの間にかコインランドリーの前に到着していた。

いつもなら外観を堪能してからウキウキで店内に入るののだが今日は入れないでいた。

外観を堪能しているのではない!単純に入る事が出来ないのだ。こんな事初めてである。

俺は店の入り口を前に動けないでいたのだ。

入るのが怖い。このまま店内に入らずに帰ってしまおうか?などと考えていた時、俺はふとある言葉を思い出した。

『今さら何ビビってんだか』

確かに俺は今ビビっている!ビビりまくっている。反論の余地もない。

『あんた難しく考えすぎてんのよ』

確かにあれこれ考えていた。大して賢くない頭で考えすぎていた。どうやら俺はコインランドリーに囚われすぎていたようだ。


「素直になれか」


俺はそう呟いて店内に入る。不思議とすっと入る事ができた。俺は1つ壁を越えたのだ!

そこからはいつも通り、洗濯物を乾燥機に入れて両替を行う。財布にはいつも通り1000円札が6枚入っていた。ここまで用意しているくせに何をビビっていたのか。俺の緊張はもうなくなっていた。暖かく少し乾燥した空気が心地よい。ようやくいつも通りのコインランドリーが帰ってきた気がした。


しばらく持って来た本を読んでいると声が聞こえてきた。俺がある意味待ち望んだ声である。


「あれ?もういるじゃん!今日こそ私の方が先だと思ったのになぁ」


顔を上げると待ち人がそこにいた。

ギャルがコインランドリーにやって来たのだ。

ギャルが少し悔しそうにしながら店内に入ってきて洗濯物を放り込む姿に俺は思わず笑みをこぼす。


「今日も俺の方が早かったですね」

「何かいつもより余裕な感じがするんだけど!」


ギャルはやや挑発的にそんな事を言いながら俺の隣に腰を下ろすのだ。


「先に来て待ってたから余裕あるんじゃないですかね?」

「ふーん」


ギャルは伺うように上目遣いで俺をみてくる。

俺は嘘は言っていない。先に来たから余裕が持てているのだ。しかしギャルに至近距離で見つめられるとそれはそれで別の緊張が生まれるのだ。だってこのギャル可愛いしいい匂いがするんだもん!

俺は耐えきれずソッポを向いてしまった。


「照れた!」


そんな俺を見てギャルは嬉しそうに笑う。


「いやぁ少年に余裕見せられると何か負けた気になるんだよねぇ」


ギャルはニヤニヤしなが俺を見てくる。

ぐぬぬっ!いきなりギャルに翻弄されてしまった。せっかく余裕を見せることができたのに!しかし俺は、こんなやりとりも悪くないと思ってしまうのだ。



俺とギャルの夜はまだ始まったばかりなのである。

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