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第13話 ギャルと笑顔と限界突破

本をギャルに手渡した後、俺は顔を上げることがでずに俯いてしまった。


怖い。怖すぎる。

あの本がいま隣のギャルの手にあるのだ。

彼女はあれを見てどう思ったのだろうか。

どんな顔をしているのか?

どんな事を考えているのか?

さっきまでの楽しい時間が遠い過去のように感じる。


ギャルは俺から本を受け取ってからまだ一言も喋っていない。

その事実が余計に俺の不安を掻き立てる。

絶対に気持ち悪がっているに違いない。

そんな中、紙をめくる音が聞こえてきた。

俺は思わず肩を揺らしてしまった。

まるで死刑宣告を待つ囚人のようである。


「これ?」


ギャルの困惑した声が聞こえた。

あぁ中身を見られてしまったのだ。

もう言い逃れはできない。

俺はますます俯いてしまった。


「フフッ」


ギャルが笑った!

でもそれはとても嬉しそうで、負の感情など全く感じさせない笑い声だった。

俺は思っていた反応と違うことに戸惑いを隠せせず、思わず顔をあげギャルの方を見た。

ギャルと目が合ってしまった。

その瞬間ギャルの口から、俺が今もっとも

聞きたくなかった言葉が放たれた。


「ボッチ陰キャの俺が、お姉さんギャルを助けたらラブラブになった件〜今日もお姉さんギャルに甘やかされています〜」


ギャルはブックカバーを外して表紙があらわになった本を、自分の顔の横で俺に見せつけるように持ちながら、ドン引きするようなタイトルを声に出して読み上げたのだ。

ドン引きするほどのいい笑顔で。

その瞬間、俺は全く動けなくなってしまった。


動けなくなった俺をギャルはドン引きするほどのいい笑顔で見つめ続けている。

目をそらすことができなかった。

俺はその笑顔に釘付けになっていた。

そして俺はようやく思い出したのだ。

この笑顔をどこで見たのかを!


俺はこの笑顔をよく知っている。

新しいおもちゃを見つけた時のような無邪気でそれでいて悪魔のような笑顔である。

つい最近も見たばかりの笑顔なのだ。


そう!ギャルの笑顔は、あの清楚美人の皮を

被ったドSな尾上さんが、俺をイジっている時に見せる笑顔にそっくりだったのだ。

どうりで見たことがあるはずだ。

なぜ気づかなかったのだろうか。

同時にある事実を理解してしまった。

尾上さんと同じ笑顔ということは、ギャルも

また尾上さんと同じ一面があるということを。

だって俺の渡した本のタイトルを読み上げた時、ギャルはドン引きするぐらいのいい笑顔だったのだから。

あぁ。。。なんてことだ。

こんな事実、知りたくなかった。

ギャルもとんでもないドSだったのである!


俺はとんでもない人にとんでもないモノを渡してしまった事をようやく理解した。

これならまだ気持ち悪がられた方がよかった。

いまだ固まったまま動けない俺の事など

まったく気にしない様子でギャルはニヤニヤと悪魔のような笑みを浮かべながら


「そっかぁ!少年はこれを読んでたんだねぇ。

どうしてギャルの話なんか読んでたんだろうねぇ?」


そんな事を口にしながら、それはそれは嬉しそうに俺を見てくる。

めっちゃニヤニヤしている。さっきまでの目が笑っていない笑顔が嘘のようだ。


「もしかして少年は私に会ったからこの本を読んでいたのかなぁ?しかも私に会う直前まで読むほど好きなんだよねぇ」


俺は何も言えなかった


「少年はギャルのお姉さんに何をして欲しかったのかなぁ?この本を読みながら何を想像してたんだろうねぇ?お姉さんに教えてほしいなぁ」


もはやギャルの独壇場である


「なになに?『今日もお姉さんギャルに甘やかされています。』なるほど!少年もお姉さんに甘やかされたかったのかな?」


俺の心は限界をむかえた


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


俺は頭を抱えて大声をあげながらうずくまってしまった。

恥ずかしい!まじで恥ずかし過ぎる!

ギャルにギャルモノの本を読んでいた事を

知られてしまったのだ。

しかもタイトルまで読み上げられた。

表紙を俺に見せつけながら。

ドン引きするタイトルを読み上げられたのだ!

穴があったら入りたい!!

そんな大声をあげて恥ずかしがる俺を見て

ギャルはケラケラと楽しそうに笑っていた。


決してギャルに出会ったからこの本を読んでいたわけではない。本当にたまたまなのだ。

というか自分で買ってすらいないのだ。

知り合いに押し付けられた本なのだ。

それをたまたま読んでいただけなのだ。

ギャルに出会ったから読んでいるのではない。

選んだのはギャルに出会う前なのだから。

だから俺は決してこの本を読みながら、

登場人物に自分を重ねていたのではない。

ギャルに何かを求めていた訳でもない。


俺は多くの言い訳を心の中で重ねていた。

しかし、そのどれも口から出ることはなかった。

人は羞恥の限界をむかえると話せなくなる。

そんな事を初めて知った。この身を持って。

そんな事知りたくなかった。

俺はどうする事も出来ずただ頭を抱えて蹲ることしか出来なくなっていた。

ただただ恥ずかしさに打ち震えていると、

不意に頭部に何かが触れるのを感じた。

突然の感触に俺はパニックになった。

何が起こったのかまったく理解できなかった。


「ごめんねぇ。恥ずかしかったよねぇ。

でも大丈夫だよ。お姉さんちゃんと分かってるから」


ギャルが優しく子供に言い聞かせるように話しかけてきた。

そこでようやく俺は頭をなでられている事に気づいたのである。

ギャルは子供をあやすような、優しい手つきで俺の頭をなで続けている。

やばい!何か泣きそうになってきた!

だめだ!いま泣いてはいけない!

俺は涙をぐっと堪えて気を強く持とうとした。

そのおかげか俺は少しだけ冷静さを取り戻すことが出来ていた。


情けない話だがギャルに頭をなでられたことで冷静になることができた。

そしてようやく顔をあげる事ができたのだ。

恐る恐るギャルの顔を見ると、さっきまでとは違ってとても優し顔をしていた。

俺は安心すると、ギャルに話しかけた。


「急に取り乱してしまい、すみませんでした。

おかげで少し落ち着きました」

「気にしないでいいよ〜。ほんと大丈夫だから」


あぁなんて優しいギャルなんだろう。


「ありがとうございます。さっきの本なんですけど、たまたまな読んでただけなんです。

だから本当に他意とかはないんです。」


俺はようやく思っていた事を伝える事ができた。若干言い訳じみていたが誤解されたままにしたくなかったのだ。


「大丈夫。ちゃんと分かっているからさ!」


ギャルはそう言ってまた俺の頭をなでてきた。

よかった。何とか誤解は解けたようだ。

それにしても、ギャルになでられるのは本当に落ち着く。思わず目を閉じて堪能してしまう。

手から何かでてんのかなぁ?

とかくだらない事を考えていると


「少年はほんとに甘えるが好きだねぇ」


ギャルがそんな事を言い出したのだ。

俺はまた固まってしまった。

何を言っているんだ?誤解は解けたのでは?

困惑する俺など気にせずギャルは続ける


「ほんとはこの本みたいな事したかったんだよねぇ?でも急過ぎて恥ずかしくなったんでしょ?大丈夫!お姉さんちゃんと分かってるから」


俺は何を言われているのか理解できなかった。

え?分かってるって言ったよな?

なのに何でそんな事を言うんだ?


「だからさ!お姉さんに教えてよ。

この本の中にあるどのシチュエーションに

少年が1番グッときたのか。」


俺はギャルの方を見た。

そして理解してしまった。

ギャルはまだ俺を辱めるつもりなのだ。

さっきの優しさは罠だったのだ。

最初から安心させて気を抜いたところを責めるつもりだったのだ。

その為の優しさだったのだ。

なんでそう思ったのか。理由は簡単だ。

だってギャルがいい笑顔なんだもの。

ドン引きするくらいのいい笑顔なんだもの。

流石の俺もドン引きしてしまった。

するとギャルは急に顔を寄せてきた。

急接近したギャルの顔にドギマギして、

さらに甘い匂いにクラクラしてしまう。

そんな事などお構いなしに、ギャルは俺の耳元でささやくのだった。


「今度はどんなに恥ずかしがってもやめてあげないから」


俺は思わず体を仰け反らした!

そこにはいい笑顔のギャルがいる。

だが俺には笑顔のギャルが悪魔に見えた。


「覚悟してね!少年」


俺の羞恥心はまたもや限界をむかえるのだった。

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