第11話 ギャルと匂いは誰のもの
いつもより少し遅い時間になってしまったので
俺は帰宅後、手早くコインランドリーに行く準備を終わらせる。
何だか手慣れてきたと自分でも思う。
コインランドリーに行くのも4回目なのだ。
今日で春休み初日からちょうど1週間だ。
そう週4で通っているのである。
まさかこんなにコインランドリーの虜になるとは思ってもなかった。
コインランドリー恐るべし。
あっと言う間に準備も整ったので家をでる。
通い慣れた道を進みながら、いつもより足取りが軽いのを感じる。
今日はバイトでとんでもない目にあったので、疲れているかと思ったがそうでもないらしい。
コインランドリーに向かう高揚感が疲労を感じさせないのだろうか?
そんな事を考えていると目的地についた。
いつもより早い到着である。
思っていたよりも、早い足取りでここまで来たみたいだ。
そんなに待ち遠しかったのかと思わず苦笑いしてしまった。
俺は立派なコインランドリー中毒のようだ。
店内に入ると変わらず、利用客はいなかった。
いつもはそれだけでテンションも上がるが、
今日はそこまで上がらない。
ここに慣れてきた事の証明だろう。
そう思いながらいつも使っている機械の前に
向かう。
持ってきた洗濯物を入れてからドアを閉め
両替機の前に行き財布を取り出す。
財布には今日も1000円札が6枚入っていた。
あれから1000円札を切らしたことはない。
やっぱり立派なコインランドリー中毒だ。
無事に両替が終わり、100円玉を投入して、
洗濯・乾燥機が動き出した事を確認してから
いつもの場所に腰を下ろした。
ここで俺は違和感を感じた。
何だかいつもより店内の温度が低い気がするのだ。
運転中の乾燥機が少ないからだろうか?
いつも何台動いているかなんて覚えていないので確認のしようがない。
俺は首をひねって考えたが、答えなど出るはずもないので、気の所為だと思う事にした。
まぁそんな日もあるだろう。
俺はいつも通りカバンから読みかけの本を
取り出し読みはじめたのだった。
読み始めたのだが違和感がすごい。
何だろう?全然集中できない。
いつもならすぐに本に没頭するのに、
今日は文章が全く頭に入ってこないのだ。
こんな事は初めてである。
うーん?思ってたより疲れがあるのかな?
今日は色々あったからなぁ。
まじでとんでもない目にあったしな。
そう考えると納得できる。
しかし、せっかく快適空間にいるのにもったいなく感じてしまう。
というか今日はそこまで快適空間に感じない。
やっぱり精神的疲労がすごかったのだろうか。
バイト中に起こった、尾上さんの理由なきイジり事件を思い出しゲンナリした。
いや理由はあるようだった。
中城先輩もなんか納得してたし。
理由が分からなかったのは俺だけだ。
まじで謎である。
そんな事を考えているせいか、本をまったく読み進めることができない。
時計を見ると入店してからまだ10分しか経っていなかった。
まじか?思っていたよりも時間が過ぎるのが
遅くて驚いた。
こんなに長く感じたのは初めてだ。
何だか今日のコインランドリーは居心地が
あまりよくない。
落ち着かなくてソワソワしてしまう。
やっぱり疲れているのだ!そんな事を考えてると聞き慣れた声が耳に届いた。
「おっ!いるじゃん!おまたせー!」
声がした方を見ると、ギャルが満面の笑みで手を振りながら店内に入ってくる。
俺もそれに片手を上げて応える。
「いやー!今日は少年より早いと思ったんだけどなぁ」
そんな事を言いながらドアを開けて洗濯物を
放り込んでいく。
「今日も俺の方が先でしたね」
「悔しいっ!次は私が少年を出迎えたい!」
そんな事を言いながらギャルは洗濯物を入れ終わったのか、ドアを閉めていた。
それを見て俺は
「今日は両替大丈夫ですか?」
そんな事を聞いていた。
ギャルはこっちを向いて笑いながら。
「今日は大丈夫!ちゃんと1000円あるから!」
そう得意げに言うのである。
「よかったです。もし必要ならいつでも両替しますからね?」
「さすが少年!頼りになるなぁ。
そん時はお願いするねっ!」
「遠慮なく言ってください」
何だろう?さっきまでと全然違う。
この空間がいつの間にか心地よくなっていた。
心なしか店内の温度も上がった気がする。
ソワソワしていたのが嘘のようだった。
ようやく、いつものコインランドリーに来たような気がする。
洗濯が始まったのを確認したギャルは俺の右隣に腰を下ろしてきた。
俺は手に持っていた本を左側に置いていたカバンの上に移してギャルの方を向いた。
ギャルは手で顔をパタパタ仰いでいる。
「いやぁ洗濯物が意外と多くてさ。
思ったりより運ぶの大変だったわ」
「洗濯物って意外と重いですからね」
「そう!まじビックリしたよね」
「俺も最初来た時そうでした」
「だよね!めっちゃわかる!」
初遭遇の時のような緊張感はもうない。
とても自然に会話出来ている。
ギャルも笑顔で楽しそうだ。
俺の顔も自然とほころんでしまう。
悪くないなぁなんて考えていると、
ギャルが無言になっている事に気付いた。
「どうしました?」
ギャルは無言のまま、眉間にシワを寄せて難しい顔をしている。
暫く考え込んだあと俺に近づいて鼻をスンスンさせだした。
「な、なんです?」
謎の行動に俺は戸惑いを隠せない。
そんな事おかまいなしにギャルは鼻をスンスンさせ続ける。
「なんか、いつもと違う匂いがするんだけど」
突然ギャルはそんな事を言い出して、また鼻をスンスンさせている。
このスンスンは匂いを嗅いでいたのだ!
「バイト終わりなので、汗臭かったですか?」
俺は慌てて自分の匂いを嗅いで確かめた。
「汗臭くはない!何か他の女の匂いがする!」
他の女の匂いだと?
すると確かになんかいい匂いがした。
明らかに俺の匂いとはちがう。
でもほのかに香るってぐらいの匂いなのに!
よく分かったなこのギャルは。
センサーでもついてるんだろうか?
思わず感心してしまった。
「やっぱ他の女の匂いがする!」
ギャルはスンスンさせなが今度は言い切った。
俺は困惑していた。
「心当たりがまったくないんですが?」
「ほんとに?めっちゃ匂うんですけど」
ええ?めっちゃ匂うんだ。
やっぱセンサーついてるだろ!!
ギャルすごすぎない!
それにしても女の匂いか。
女ねぇ。匂い。匂い。女のいい匂い。。。
あっ!!!
「心当たりあるみたいじゃん!」
ギャルは見逃さなかったようだ。
目を細めながら俺を見てくる。
その目、めっちゃ怖いんですけど!
あれだ!これは絶対あれだ!あのせいだ!
「他の女に会ってたんだ」
ギャルはさらに目を細めている。
もっと怖くなったんですけど!!
「違います!多分匂いはバイトの先輩です!
今日一緒だったので。それで匂いがついたんだと思います」
ギャルが怖すぎて、俺は慌てて弁明をした。
そう!この匂いは、あの人のせいなのだ!
尾上さんの執拗な辱めの代償に違いない!
絶対にそうだ!それ以外考えられない!
「へぇ〜。匂いが付くくらい一緒にいたんだ」
えぇぇ?さらに怖くなったんですけど!!
俺の弁明は逆効果だったようだ。
「違います!そんなんじゃないです!
何か距離感が近いっていうか、無遠慮っていうか、デリカシーがないっていうか。。。
それに他にも男の先輩も一緒でした!」
執拗な辱めの事など恥ずかし過ぎて言える訳がない!言えるはずがないのだ!
だから俺は言い訳にもならない、言い訳を
必死にギャルに伝えていた。
何で俺がこんな目に。。。
尾上さんのせいである。
あの人その場にいなくても俺をイジってくる
じゃないか。。。
まじでかんべんしてください。
初投稿になります。
完結目指して頑張ります。
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