第2話 ―選択肢がバカすぎて生きるのが辛え!―
俺の名前はカケル。
ついさっき、異世界でオーガに追いかけられてパンツ脱げて生き延びた男だ。
自慢じゃないが、俺のプライドはもうボロボロだ。
「はぁ…はぁ…やっと逃げ切った…」
森の奥、木の根元にへたり込む。
パンツは…まあ、なんとか履き直した。
でもさ、なんで俺がこんな目に!? 普通の高校生が異世界召喚されて、即パンツ芸とか、展開が雑すぎるだろ!
「とりあえず、この《デッド・オア・チョイス》ってスキル、なんとかならねえかな…」
あの光るパネル、めっちゃ便利そうに見えて、選択肢が全部バカバカしいんだよ。
死ぬか、ダサいか、恥ずかしいか、信用失うか。
いや、普通さ、もっとカッコいい選択肢とかないの? 「超必殺技でオーガを一撃!」とかさ!
――と、愚痴ってても腹は減る。
この森、なんかヤバそうな雰囲気しかないし、早く街か村でも見つけないとマジで死ぬ。
「よし、歩くか…」と立ち上がった瞬間――
ガサッ!
「うわっ! 何!?」
茂みからデカい影が飛び出してきた。
今度はオーガじゃない。…狼!? いや、狼っぽいけど、めっちゃデカい! 牙ギラギラ、目が赤く光ってる!
「マジかよ、ディ〇ニー映画に出てくるような可愛い動物じゃねえ! これ絶対ボス級の魔獣だろ!」
俺、ダッシュで逃げようとしたけど、足がガクガクで動かねえ。
魔獣が唸りながら近づいてくる。
「うわ、くそっ、詰んだ! また詰んだ!」
――その瞬間。
またしても世界がピタッと止まった。
鳥のさえずりも、風の音も、魔獣の唾液が地面に落ちる瞬間も、全部フリーズ。
そして、目の前にあの光るパネルが現れる。
⸻
《デッド・オア・チョイス》発動
現在の死亡確率:99%
以下の選択肢から行動を選んでください。
1. 死ぬ(潔く、かつ迅速)
2. 木の枝で魔獣をくすぐる(生存確率30%アップ、成功率低)
3. 地面に「ごめんなさい」と書いて土下座(生存確率50%アップ、尊厳マイナス)
4. 謎のダンスで魔獣を魅了(成功率不明、失敗時死亡確率アップ)
⸻
「いや、ふざけんなあああ!」
またこれかよ! なんで1番が毎回「死ぬ」なんだよ! 潔く死ねるか!
「2番、木の枝でくすぐるって…いや、俺、ただの棒切れ持ってるだけだし、くすぐってどうなるんだよ! 逆ギレされて終わりだろ!」
「3番、土下座!? いや、魔獣に土下座通じるのか!? てか尊厳マイナスって、俺のプライドもうマイナス域突入してるんだよ!」
「4番…謎のダンス!? 成功率不明ってなんだよ! 失敗したら死ぬ確率上がるって、リスク高すぎだろ!」
魔獣の牙が俺の目の前でキラリと光ってる(静止してるけど)。
考える時間ねえ! もうこうなったら…!
「くそくらえ! 3番! 土下座だ!」
ピッ。
――世界が動き出した。
次の瞬間、俺は地面に額を擦りつけてた。
指で地面に「ごめんなさい」って書いて、完璧な土下座ポーズ。
「すみませんでしたあああ! 見逃してくださいいいい!」
魔獣が一瞬、動きを止める。
「グルル…?」って感じで、なんか困惑してるっぽい。
え、マジで通じた!? 魔獣、ちょっと後ずさりしてる!
「よ、よし…! このままいけば…!」
――と思った瞬間、魔獣の後ろから別の魔獣が2匹、ガサガサっと出てきた。
「うそだろ!? 仲間呼びやがった!?」
土下座の効果、1匹には効いたけど、増えた分で死亡確率逆戻り!?
「いやいやいや、ちょっと待て! スキル! もう一回スキル発動しろ!」
だが、パネルは出てこない。
どうやら《デッド・オア・チョイス》は1回の危機に1回しか使えないらしい。
「マジかよ! 俺の土下座、無駄だったってこと!?」
魔獣たちが唸りながら近づいてくる。
俺、地面に這ったまま、絶望の叫びを上げる。
「誰かあああ! 助けてくれええ! こんな世界、嫌だあああ!」
――その時。
「うおっ! なんだこのバカでかい狼!?」
森の奥から、聞き覚えのある声。
見上げると、ボロボロの鎧を着た金髪の女騎士が、剣を構えて立ってる。
「カケル! 何やってんだ、お前! 土下座してんじゃねえよ、ダサすぎる!」
「う、うるせえ! テメェは誰だよ!?」
「ハッ! 助けてやるんだから感謝しろよ! 俺の名前はレナ、覚えておきな!」
彼女は剣を振り上げ、魔獣に突っ込んでいく。
だが、よく見るとその剣、めっちゃ錆びてる。
「お、お前それで戦えるのか!?」
「黙れ! 気合でなんとかなる!」
――果たして、俺はレナと一緒にこの危機を乗り越えられるのか?
そして、《デッド・オア・チョイス》の次なるバカバカしい選択肢とは!?