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no.8 砂塵の咆哮

2030年3月21日、インド・ラージャスターン州


午後4時。砂漠の地平線を埋め尽くす巨大バッタの群れが、

跳躍しながら進んでいた。体長1メートルのバッタが、

数万匹を超える規模で移動し、砂塵を巻き上げている。その音は、

まるで雷鳴のように大地を震わせていた。IDCAのヘリ部隊が上空に到着し、

宮本沙織と佐藤悠斗が窓からその光景を見下ろした。

「前回より数が増えてる…」

沙織の声に緊張が滲む。悠斗は改良されたスレイヤーMk-IIを手に、気合を入れた。

「博士、今度は負けないよ。新型の出力なら、群れごと止められる!」


ヘリから降り立ったIDCAチームは、迅速に陣を構えた。ジェシカ・ハーパーと

李偉が信号解析用の機材を設置し、ハンス・シュミットが

スレイヤーの最終調整を行う。沙織が全員に指示を出した。

「目標はリーダー個体の信号を遮断すること。スレイヤーで群れを混乱させ、

その隙に信号源を特定するよ。準備はいい?」

チームが一斉に頷き、作戦が開始された。


---


同日午後4時30分、戦闘開始

スレイヤーMk-IIが起動し、音波と電磁パルスがバッタの群れに広がった。

前回とは比べ物にならない強力な出力が、群れの動きを一瞬で止めた。

跳躍していたバッタが次々と地面に落ち、触角を震わせて混乱している。

「効いてるわ! リーダー個体を探して!」

ジェシカが叫び、解析機材のモニターに目を凝らした。波形が乱れながらも、

群れの奥から強力な信号が検出される。

「そこだ! 北東方向、距離200メートル!」

沙織がヘリに指示を出し、スレイヤーを搭載したドローンを

リーダー個体に向かわせた。砂塵の中、体長3メートルの巨大バッタが姿を現す。

翅の模様が前回より鮮明になり、触角が異常な速さで振動していた。


ドローンが接近し、スレイヤーの電磁パルスを直撃させた。

リーダー個体が一瞬動きを止め、群れ全体がさらに混乱に陥る。

悠斗が拳を握り、叫んだ。

「今だ! 仕留めろ!」

自衛隊員が対戦車砲を構え、リーダー個体に照準を合わせた。砲弾が発射され、

バッタの甲殻に直撃。爆音と共に、リーダー個体が砂塵に倒れた。

群れの動きが完全に止まり、勝利が目前に迫ったかに見えた。


---


同日午後4時45分、反撃

だが、その瞬間、地響きが響き渡った。倒れたリーダー個体の下から、

砂が噴き上がり、新たな影が現れた。体長5メートルを超える、

もう一匹のリーダー個体だ。翅が金属のように輝き、

触角から発する信号が空気を切り裂く。

「何!? 2匹目がいたのか!?」

悠斗が驚愕する中、新たなリーダー個体が跳躍し、ヘリに迫った。

鋭い脚が機体を掠め、金属が軋む音が響く。ヘリが急旋回し、

スレイヤーMk-IIが再起動したが、出力が限界に達し、装置が過熱を始めた。

「博士、ダメだ! これ以上は…!」

悠斗の叫びに、沙織が冷静に指示を出した。

「ジェシカ、信号を記録して! 撤退するよ!」

ジェシカが解析データを確保し、チームは急いでヘリに乗り込んだ。

新リーダー個体が咆哮を上げ、群れが再び動き出す中、

ヘリは砂塵の中を飛び去った。


---


同日夜、相模原研究施設

施設に戻ったチームは、疲労困憊しながらもデータを分析し始めた。

沙織とジェシカがモニターを見つめると、

新リーダー個体の信号波形が映し出されていた。

「前より強力で複雑だわ…微生物がさらに進化してる」

ジェシカの言葉に、沙織が呟く。

「2匹目の出現…群れが複数のリーダーで統率されてる可能性があるよ。

これじゃ、スレイヤーだけじゃ対応しきれない」

作業場では、悠斗とハンスがスレイヤーの残骸を前に頭を抱えていた。

「博士、次はどうする? このままじゃ…」

悠斗の問いに、沙織は静かに答えた。

「信号源を突き止めるしかないよ。

微生物の進化が止まらないなら、その根源を叩くんだ」


---


エピローグ

夜更け、沙織は研究室の窓辺で信号データを眺めていた。

そこへエリック・ラーソンが近づき、重い声で言った。

「宮本博士、インド政府から新たな報告です。バッタの群れが国境を越え、

パキスタンに向かっている。次の戦いは、さらに厳しくなります」

沙織は振り返り、決意のこもった目で答えた。

「分かったよ。準備する」

窓の外では、遠くの砂漠から届くような低い振動音が響いていた。


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