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ブートブーリン・ブーゲンブルー

カレンダーをめくると 〜ブートブーリン・ブーゲンブルー〜

作者: 一飼 安美

「今年、何年?」


 二千……と答えかけた同級生に、違うよ、レーワ!と聞き直した。変わったのなんて割と最近なのに数えてるわけじゃないからわからなくなった。今年が何年かくらい、わかるに決まってるじゃん!って思ってたのに、わからなくなるなんて私はどうかしている。大人はそれが普通みたいだけど、中学生にはよくわかんない話。ごちゃ混ぜになってどっちがどっちか忘れてしまった。カレンダーを見ると、令和六年。来年の今頃は、高校生になっている。私たちはもっと大人になって、もっとわからなくなるんだろう。気が重くなって、その日は帰ることにした。


 学校から帰る間、私と同級生は町の電飾を眺めていた。季節だからって歌が聞こえてくる。暗い夜道は、ぴかぴかの……。同級生は、かわいそう、って言っていた。何が?楽しそうじゃない。でも、言われてみたら言い返せなかった。


「嫌だって言ってるのに」


 お鼻が変だ、真っ赤っか!……私なら、泣いちゃうと思う。大人は誰も、おかしいって思わないのかなあ……。同級生は、何か考えているようで、小さな声で……ブートブーリン……そう言いかけてやめてしまった。小学校の頃、クラスで流行ったおまじない。奇妙なことや不思議なことに出会ったら、この呪文を言うといい。同級生は、今でもたまに言うらしいけど、言わなかった。私はちょっとだけ気になって、ちょっとだけ気を使って、聞いてみた。あなたならどう言う?お鼻が真っ赤なその子に。同級生は、うーんと唸って、ほんの少し考えて、でもすぐにやめて、ニコッと笑った。


「私は好きだけどなあ」


 変じゃないと思う。変だ変だなんて、そんなの変だよ。……同級生の変な理屈は、変すぎて全然わからない。でも同級生は、なんだか元気が出たみたい。ありがとう、また明日。そう言って別れて手を振るときに、その子の口が動いたのがわかった。ブートブーリン・ブーゲンブルー。

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