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『ゆき』の日ポケット
「寒いね」
彼女がつぶやく。白い息がふわりと冬の空に溶けていく。
僕は黙って彼女の手を自分のポケットに誘い入れた。指先に触れた雪の冷たさが、彼女の手に残る。
「これで少しはあたたかい?」
と尋ねると、彼女は小さく頷き、目を伏せて答える。
「まだ寒い…」
彼女の言葉を聞いた瞬間、ポケットの中で指先に触れた雪がゆっくりと溶けていく。冷たい雪が溶けるように、僕たちの距離も少しずつ近づいているように感じた。
彼女の頬が薄紅に染まるのを見て、僕の胸にも暖かな灯がともる。僕の心臓が早鐘のように鳴り始め、手のひらの温もりが伝わってくる。
彼女の手をさらにしっかりと握りしめた。
「僕も、やっぱりまだ寒い」
彼女の視線が一瞬だけ僕に向けられ、その瞳にはかすかな涙の輝きがあった。彼女は再び目を伏せ、微かに微笑みながら言った。
「寒いね」